三谷宏治の学びの源泉

[第111回]赤ちゃんの識別能力~電車の中で百面相

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 #電車の中の6ヶ月児はキョロキョロしている

 週末の朝、電車に乗りました。春休み中なせいか結構混んでいて、赤ちゃん連れのお母さんや家族も。隣に立ったお母さんも、赤ちゃんをだっこバンドで前に抱えていました。「誰も席を譲らないとは!」と憤慨しましたが、座っているのが子ども連れや年配者ばかりで、まあそこはヨシとしました。
 私はお母さんの斜め後ろに立っていて、ちょうど赤ちゃんの顔が見える位置です。混んでいるので本も読めず、仕方ないのでスマートフォンでもいじろうかと思いましたが、キョロキョロしていた赤ちゃんと、ふと目が合いました。なんとも、まん丸な顔で、唇はちっちゃく富士山型で、かわいいことかわいいこと。
 じ~っと見つめられたので、思わずそこから遊んでしまいました。

 赤ん坊の集中が継続する時間は極めて短く、ほんの数秒変化がないと、飽きて次に向かいます。だから、子どもはテレビやビデオが大好きです。どんどん画面が変わって、刺激が続くので。
 でも電車の中には「変化」がありません。だから赤ちゃんは必死で顔を巡らせて、キョロキョロしているのです。
 私は、この赤ちゃんの気を惹き続けるために、数秒ごとに「変化」をつけるべく、頑張りました。
 ・目を開けたり閉めたり
 ・笑ったり困ったり
 ・ほっぺたを膨らましたり口を尖らせたり
 要は百面相です。都会の電車内でやるには多少危険な行為ですが、赤ちゃんの気を惹くためです。多少のリスクはとりましょう。

 #赤ちゃんはお母さんの顔が好き

 でも、そんな努力も、お母さんの前には無力でした。スマートフォンをいじっていたお母さんが、手を止めて赤ちゃんの方を向いたとたん、赤ちゃんはビシッとそっちに向き直ったのです。

 そうでした、赤ちゃんはお母さんの顔(ただし、自分を見つめている場合)が大好きだったのでした。
 生まれたての乳児の視力は0.01程度しかありません。でもそれは、目という器官の問題ではなく、脳内の識別機能の問題なのです。目は十分に成熟していても、その情報を処理する機能が未発達なので「見えない」のです。
 ところが生後5~6ヶ月になると、お母さんの顔を、もの凄く正確に区別できるようになります。お母さんの顔写真を、結構似た感じの女性の顔写真と混ぜて見せても、お母さんの写真のときだけ、特別に反応したりします。
 お母さんの顔の下半分だけを他の女性の顔に変化させた合成写真でも、だませません。ちゃんと、部分とともに全体を把握して識別しているのです。
 でも、その識別能力はお母さん向けだけで、他人の写真を2つ見比べさせても、反応の差はありません。多分、どうでもいいのでしょう。

 #赤ちゃんが「いないいないばー」を楽しめるようになるのは生後5ヶ月を過ぎたくらいから

 さてまた車内のお話です。
 お母さんの関心がスマートフォンに戻ったので、また私は赤ちゃんと遊び始めました。今度は「いないいないばー」です。
 さすがに周りの目もあるので、お母さんの肩の後ろに自分の顔を隠して、そこからまた現れる、というのをやりました。でも、あんまり受けませんでした。

 そうそう、この頃の赤ちゃん(5~6ヶ月児)は、記憶力がまだ十分には発達していないので、できごとや対象を憶えることが苦手です。そして、未来を予測することもしません。
 だから、「いないいないばー」を本当に楽しめるようになってくるのは生後8~9ヶ月目以降です。「あの知っている顔」が「もうすぐ現れる!」と思い、それが当たることで喜ぶ(外れるとビックリする)のです。
 5~6ヶ月児はようやくそれができはじめる頃。だから、私(よく知らないヒト)が、その顔をお母さんの陰に隠した瞬間、どこかにそっぽを向いてしまったりするのです。

 #赤ちゃんは男性より女性の顔が好き

 それでも私は必死に、百面相やいないいないばーで赤ちゃんの気を惹いていましたが、私の隣の若い女性がやはりスマートフォンから目を離して、ふと赤ちゃんの方を向いたとき、また、負けました。赤ちゃんはそちらの方を即座に向き、しかもなにやらニコッとしたりするではありませんか。

 そうでした。赤ちゃんは女性の顔が好きなのです。男性の顔よりも。
 赤ちゃんは、第一養育者の性を好む傾向にあります。そしてそれは日本の場合、お母さん(もしくは祖母や保母さん)なので、女性を識別する能力を発達させるわけです。
 男性(お父さんを含む)は、養育者じゃないのでどうでもいいのでしょう。
 赤ちゃんが好む顔はつまり、
 (1)お母さん
 (2)一般の女性
 (3)一般の男性やお父さん
 の順番となるのです。これは分が悪い。

 こうなるともう、私の戦う武器は「飽きさせない」しかありません。片目だけつむってみたり、眉を動かしてみたり、目をぐるぐる回してみたり。
 でもね、やっぱり赤ちゃんは、自分を見つめるお母さんの顔が一番好きなのです。

 お母さん! スマートフォンばかり見ていないで、赤ちゃんを、もっと見つめて上げてくださいな。
 そして周りのみなさん! もっと赤ちゃんと遊んであげてください。赤ちゃんは、自分を見つめる顔が好きなのです。みんなで子育て、頑張りましょう~。

 参考資料
 ・「赤ちゃんはお母さんの顔を見分けている ‐神経行動学的研究」東京大学 赤ちゃんラボ
 ・「10 記憶の発達」JOMF
 ・「Vol.089山口真美(やまぐち・まさみ)@中央大学」NetScience Interview Mail

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プロフィール

三谷 宏治 氏

KIT(金沢工業大学)虎ノ門大学院 教授
http://www.mitani3.com

1964年生まれ、三女の父。 87年、東京大学理学部物理学科卒、92年、INSEAD MBA修了。87年から96年までBCG、96年から06年までアクセンチュア戦略グループ。03年から06年は同 統括エグゼクティブ・パートナー を務める。 06年8月からは教育(特に子ども・親・教員向け)に注力し全国で講演・研修・授業を行う。 著書多数。『経営戦略全史』『ビジネスモデル全史』『一瞬で大切なものを決める技術』はビジネス書賞を獲得。近著に『戦略子育て』『新しい経営学』『戦略読書〔増補版〕』など。早稲田大学ビジネススクールおよび女子栄養大学 客員教授。永平寺ふるさと大使。

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