三谷宏治の学びの源泉

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[第116回]巨人たちの架空対談「ジョヴァンニとドーシー」~『ビジネスモデル全史』より

 #なぜ『経営戦略全史』『ビジネスモデル全史』には架空対談が入っているのか?

 2013年4月刊行の『経営戦略全史』と、この9月18日刊行の『ビジネスモデル全史』は、基本、事実に基づいたノンフィクション(歴史書・経営学書)です。ですがその各章の頭には、必ず「巨人たちの午後」という名のフィクションがついています。
 たとえばそれは、江戸時代に革新的な呉服屋「越後屋」を創造した三井高利(たかとし、1622~1694)と、シリコンバレーの中核となったスタンフォード大学リサーチパークを戦後つくったフレッド・ターマン(1900~1982)の対談。時空を超えた巨人たちの楽しい会話が、長崎訓子さんのイラストとともに楽しめます。

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 でもなんで、(一応)バリバリのビジネス書である、『経営戦略全史』『ビジネスモデル全史』に、こんなオモシロ架空対談が、いっぱい載っているのでしょう。もちろん私が書いたからなのですが......。

 もともとはただの気分転換でした。『経営戦略全史』をもくもくと書いていた(といっても2ヶ月半で全部書き上げたが)2012年の末、本文を書くのに飽きたとき、そんな対談を書き始めました。書き始めたら楽しくなって、「それなら架空対談だけで1章つくってやれ」と書き続けました。結局、9本も書きました。
 といっても、どうしても本に入れたい、というものではなく、「ディスカヴァーが嫌がったら引っ込めよう」程度のもの。あくまで私の趣味の産物でした。
 でも編集の原さんが面白がり、「バラして各章の冒頭に置きましょう!」と。「本当にいいのか?」と思いながらも、『経営戦略全史』ができあがりました。長崎さんのイラストが入ることで、物語(ショートコント)が本当に活き活きとしたものになり、びっくりしました。『ビジネスモデル全史』を書くことになったときも、当然、でも気分転換に書くことにしました。8本が、書き上がりました。
 せっかくですから一部、ご紹介しましょう。

 #「巨人たちの午後」1:ジョヴァンニとドーシー

 メディチ家を築いたジョヴァンニ・ディ・ビッチとスクエアを立ち上げたジャック・ドーシー

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 ドーシー(以下 ド):あなたがメディチ家の開祖といわれるジョヴァンニ・ディ・ビッチ・デ・メディチさんですね。お目にかかれて光栄です。
 ジョヴァンニ(以下、ジョ):ジョヴァンニで構わんよ。周りがメディチだらけだから、そう呼ばれとる。ドーシー君は、どんな商売をしておるのかな。
 ド:はい、僕はクレジットカードが誰でもどこでも使えるような仕組みをつくりました。どんな小さなお店でも、お客さんがクレジットカードで払えたら便利だなと。
 ジョ:ん? そのクレジットカードとは、どんなものかな?
 ド:お金の代わりの信用票なんですけれど、それでなんでも買えるし、支払いは後でいいんです。バンカメって銀行がVISAブランドで広めたものです。
 ジョ:国の境を超えるための査証(ビザ(*1))、という名前を使うとは洒落とるな。それにしても、そのクレジットカードとやらを発行するのは、大変そうだの。個人の未払い、店側の詐欺、とリスクだらけではないか。
 ド:その通りです。バンカメも最初、何百億円もの大損をしたとか。
 ジョ:しかし、リスクを乗り越えることこそが、金融というものの使命ではあるな、ドーシー君。われら北イタリアの両替商が、挑んだこともそうだった。14世紀、国の境を超えた商売が始まったが、お金を流通させることは大変だった。為替のリスクも、実際にお金を運ぶリスクも非常に大きかった。
 ド:そこで国際的な為替・決済ネットワークを築いたんですね。こっちでリラで預けたら、あっちでポンドで引き出せる、という。
 ジョ:そうだ。特にわがメディチ家は、国を超えた情報ネットワークを発達させた。もし、フィレンツェ本店からロンドン支店への多額の送金依頼があれば、すぐそれをロンドン支店に伝えて、逆の取り引きを探させたんじゃ。そうすれば、打ち消しあって、1リラも運ばず、為替のロスやリスクもなく、決済することができるからな。
 ド:情報は力だと。
 ジョ:その通りじゃ。ただ「顧客を変えた」ことも大きかったな。バチカンを客にできたことで、ヨーロッパ中から集まる巨大な上納金を資金化することができた。
 ド:そうだったんですね。ただ、僕がやったことはある意味では逆ですかねえ。巨大な顧客でなく、小さな顧客をいっぱい束ねて大きな商売にしたんですから。
 ジョ:ただ、小さな顧客のリスク管理は手間がかかろう。まともな担保もとれんだろうし。そこはどうしたんじゃ。
 ド:はい。リスク管理はずいぶん工夫しました。事前には審査しても仕方ないので、販売や支払の状況をコンピュータという自動機械で一件一件、チェックしてるんです。それで、なんとかなりそうなので。
 ジョ:なんと自動機械か! それは面白そうじゃな。しかし、それは他の者どもにたやすく真似されはせんのかな? でなくば、われらのような300年の栄華は築けんぞ。
 ド:真似は......されるでしょうね。そこは覚悟しています。だから、変え続けるしかないな、と。止まったら、終わりです。だからこれからも、どんどん新しいリスクに挑み続けますよ。
 ジョ:わかった。では100年後を、楽しみにしておこう。
 ド:ひゃ、100年ですか!
 ジョ:ふふふ。そのコツは「神の御技(みわざ)である芸術家を支援すること(*2)」じゃよ。現代のミケランジェロを見つけなさい。

(*1)ラテン語のcarta visa(調査済み証書)が語源。visa はvidere(見る)の過去分詞形。
(*2)当時、金融業の社会的地位は低く、高めるための重要な手段が芸術家への支援(パトロネージュ)だった。ミケランジェロの他にも、ドナッテロ、ボッティチェリ、レオナルド・ダ・ヴィンチなどを支援した。

 #『ビジネスモデル全史』のご案内

 さてこの『ビジネスモデル全史』ですが、9/12からは全国の主要22書店(リストは下部に)で先行販売がされています。9/18からは全面展開され、Amazonからの発送も始まるはず。
 みなさんの前でお話しする機会もいろいろです。
 ・9/11 刊行直前セミナー(アカデミーヒルズ、ディスカヴァー21共催@平河町)【無事終了】
 ・9/21 名古屋セミナー@名古屋A+LIVE
 ・9/24 大阪セミナー@グランフロント大阪(紀伊國屋 梅田本店、グランフロント大阪店、本町店 共催)
 ・10/3 虎ノ門セミナー@KIT虎ノ門大学院(ダイヤモンドHBR、KIT共催)
 ・10/10 八重洲セミナー@八重洲ブックセンター
 ・10/15 日本橋セミナー@丸善 日本橋店

 各々、参加の条件等がありますので、お気をつけください。そして、人数制限もあるので、お早めに~。

 先行販売店リスト
 ◆札幌:紀伊國屋書店 札幌本店
 ◆東京:丸善 丸の内本店、丸善 日本橋店、紀伊國屋書店 新宿本店、紀伊國屋書店 新宿南店、啓文堂書店 渋谷店、三省堂書店 神保町本店、三省堂書店 有楽町店、八重洲ブックセンター、リブロ 池袋本店、ブックファースト 新宿店、ブックファースト 渋谷文化村通り店、有隣堂 ヨドバシAKIBA店、有隣堂 アトレ恵比寿店、TSUTAYA 神谷町駅前店
 ◆川崎:丸善 ラゾーナ川崎店
 ◆名古屋:ジュンク堂書店 名古屋店、三省堂書店 名古屋高島屋店
 ◆大阪:紀伊國屋書店 梅田本店、紀伊國屋書店 グランフロント大阪店、紀伊國屋書店 本町店
 ◆福岡:ジュンク堂書店 福岡店

 では、本の感想、お待ちします。ぜひHPのお問い合わせまで、お寄せください。
 LEGO話はまた次回!

プロフィール

三谷 宏治 氏

K.I.T.虎ノ門大学院 教授
http://www.mitani3.com

1964年生まれ、三女の父。 87年、東京大学理学部物理学科卒、92年、INSEAD MBA修了。87年から96年までBCG、96年から06年までアクセンチュア戦略グループ。03年から06年は同 統括エグゼクティブ・パートナー を務める。 06年8月からは教育(特に小学生から大学生)の道へ。 近著に「ペンギン、カフェをつくる」「お手伝い至上主義でいこう!」「ルークの冒険 ~カタチのフシギ」「コンサルタントの整理術」「ハカる考動学」「発想の視点力」「正しく決める力」「観想力 - 空気はなぜ透明か」など。早稲田大学ビジネススクールおよびグロービス経営大学院 客員教授。永平寺ふるさと大使。

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