三谷宏治の学びの源泉

[第119回]雪だるま、ってなんだろう

 #なぜ欧米の雪だるまは3段なのか?

 ある日友人から、こんな問題を出されました。
 「なぜ欧米の雪だるまは3段なのでしょう?」

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 そう言えば、その通り。ディズニー映画『アナと雪の女王』に出てくるお茶目な雪だるまオラフも3段です。一体なぜなのでしょう?

 パーツごとの役割を考えたら、わかるかもしれません。
 上段は頭、中段は胴体、下段は足です。合わせて3段。

 これでは答えになっていないですよね。質問の意図は「日本の雪だるまは2段なのに、欧米の雪だるまはなぜ3段なのか。その差の理由を答えよ」なのでしょうから。
 では日本の雪だるまと比べてみましょう。日本の雪だるまは、上段は頭、下段が......胴体と足?

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 いえ、違います。日本の雪だるまには、足はないのです。本当は手も。
 だって、もともと「だるま」なのですから。

 #なぜ「だるま」は、あんなカタチ?

 日本の「だるま」人形の姿は、達磨大師の伝説から来ています。
 中国禅宗の開祖といわれるインド人仏教僧である達磨大師は、壁観(へきかん)を唱えました。「壁のように動ぜぬ境地で真理を観ずる禅」というものです。
 それが、達磨大師が「壁に向かって座禅をした」という誤解が生まれ、更に日本では、おかしな伝説が生まれました。
 「壁に向かって九年の座禅を行ったことによって手足が腐ってしまった」
 というのです。本当は寒くて「被」という掛け布団を頭から被って座禅をしていただけだというのに......。

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 手足が「被」に隠れていたために、「だるま」人形でもだんだん省略されて、描かれすらされなくなりました。
 そして、こうなったわけです。

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 そして日本の雪だるまは、その名の通り、手足のないカタチが主流となりました。

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 #なぜ欧米の雪だるまは3段なのか? という問いの誤り

 もちろん欧米の雪だるまは、「だるま」人形と関係ありません。だから手も足もあっていいのです。だから足の部分があって3段なのでしょう。
 本当は、この問題、問い自体が間違っているわけです。
 欧米のものは、雪だるまではありません。snowman、スノーマン、雪男、雪人、なのです。そしてそれが3段なのはむしろ、自然なことなのでしょう。

 だから本当の正しい問いはこうなるのでしょう。
 「どうして欧米でつくられる雪人形は3段で、日本の雪人形は2段なのか」
 そして答えは、
 「欧米ではヒト(スノーマン)としてつくられ、頭・胴・足の3段である。日本ではだるま人形(雪だるま)としてつくられ足が省略されて2段となった」

 問いは必ずしも正しくありません。いや、多くの場合、間違っています。
 正しく問う力をつけましょう。それにはまず、与えられた問いを疑う、その姿勢から。

 参考資料
 ・「ふるさと小包 早来雪だるま」北海道ファンマガジン
 ・「だるまのモデルになった達磨大師とは」必勝だるまのdaruma INDEX
 ・「達磨忌(だるまき)10月5日」曹洞宗公式サイト・曹洞禅ネット


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プロフィール

三谷 宏治 氏

K.I.T.虎ノ門大学院 教授
http://www.mitani3.com

1964年生まれ、三女の父。 87年、東京大学理学部物理学科卒、92年、INSEAD MBA修了。87年から96年までBCG、96年から06年までアクセンチュア戦略グループ。03年から06年は同 統括エグゼクティブ・パートナー を務める。 06年8月からは教育(特に小学生から大学生)の道へ。 近著に「ペンギン、カフェをつくる」「お手伝い至上主義でいこう!」「ルークの冒険 ~カタチのフシギ」「コンサルタントの整理術」「ハカる考動学」「発想の視点力」「正しく決める力」「観想力 - 空気はなぜ透明か」など。早稲田大学ビジネススクールおよびグロービス経営大学院 客員教授。永平寺ふるさと大使。

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