三谷宏治の学びの源泉

[第66回] 分ける・減らす・早めにやる、の仕事整理術(続)

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 #難しい問題、の存在

 通常、日々取り組む作業テーマには、さまざまな難易度のものがある。
 超簡単:誰でも出来るが、振る相手がいないか、暇つぶしでやるもの(大抵前者...のハズ)
 超難問:全く解決策が見えないが、振る相手がいないか、一攫千金狙いでやるもの
 難問:頑張れば出来そうだが、新しいアイデアと労力が掛かりそうなもの
 簡単:労力は必要だが解決策は見えているもの

 問題は、難問、の扱いだ。

 超難問は基本的に避けるべきで、よほどの余裕があるときに取り組めばよい。でも、難問クラスにトライしないと、儲けたり稼いだりしたりはしにくい。
 簡単な問題の解決で儲けられるほど、世の中は甘くない。いや、甘くなくなってきた、というのが正しい表現だろう。
 でも、その扱いがみな、上手ではない。ただ頑張ったって、ダメなのだ。

 #ドゥンカーのロウソク問題

 心理学者のKarl Dunkerは、ある実験をした。被験者に図を見せて「マッチと箱一杯の画びょうがあります。テーブルに蝋がたれないようにロウソクを壁に取り付けてください」と尋ねたのだ。

ドゥンカーのローソク問題

 ※Glucksberg & Weisberg,1966より引用

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※出典:「特別講義コンサルタントの整理術」99ページ(実業之日本社)

 被験者たちはなかなか正解に辿り着けない。この問題は、ちょっとした発想の転換を必要とする(でも労力は要らない)、結構な難問なのだ。
 この実験では、もう一枚の図が用意されている。大きな差はない。パーツは全て同じだ。
 でもその図では、画びょうが箱の外に出ているものだ。テーブルの上にあるのは、マッチと画びょうとロウソクと、箱。
 これで同じことを被験者に求める。「テーブルに蝋がたれないようにロウソクを壁に取り付けてください」
 こうすると、被験者たちは易々と正解に辿り着く。(もし分からなければhttp://www.mitani3.com/に)

 もともとの問題が解けない理由は「機能的固着」のためだとされている。
 人々は、画びょうが入っている箱の存在に気がつかない。気がついてもその真の価値に気がつかない。「箱」の機能を無意識に固定してしまっているからだ。画びょうの入れ物、と。

 #グラックスバーグのロウソク問題

 17年後、ニューヨーク大学(*1)の大学院生だったグラックスバーグ氏は、同級生たちを集めて実験を行った。
 「この『ロウソク問題 』を解いて欲しい」
 示したのはドゥンカーのもともとの図だ。

 彼は被験者たちを2グループに分け、こう説明した。
 ・グループ1 「この問題をどれくらいの時間で解けるのか平均を知りたい」
 ・グループ2 「速く解けた人には5ドル払うよ。一番だったら20ドルだ」

 片方には無償で問題を解かせ、片方には報酬を出して急かしたわけだ。被験者たちは校訓に従いこの難問に、屈せず立ち向かった。

 グラックスバーグは、被験者たちが何分で正解に辿り着くかを、ハカっていった。
 結果は、
 ・グループ1(無償) 平均7分
 ・グループ2(有償) 平均10.5分
 だった。なんと金銭的報酬を約束された方が、3分半、5割も余計にかかったのだ!
 

(*1)ニューヨーク大学。校訓は『Perstare et praestare "To persevere and to excel"』(屈せずやり通し卓越へと至れ:三谷訳)

 #なぜ「ご褒美」が効かないのか

 この結果は、こう説明されている。
 「答が明らかでない問題の場合、解くには試行錯誤や発想の転換が必要になる」
 「しかし、報酬や〆切りに急かされると、ヒトは一つの考えに固執し、離れようとしなくなる」
 「結果的に、気軽に取り組んだ方が早く答に辿り着く」
 と。

 ドゥンカーがロウソク問題で機能的固着を示したのが、1945年、そしてグラックスバーグがこの実験で難問における報酬系の失敗を示したのが62年。もう50年近く前だ。
 そしてまさに今、世の中は「答が明らかでない問題」に満ちている。

 故に、「早めにやる」ことが大切なのだ。
 〆切り間際の追い込みは、あなたの意欲を高めるかも知れないが、創造性は抑圧する。

 また、チームを叱咤激励やアメとムチだけで引っ張ることもリスクがある。それも、チームの柔軟で自由な発想を阻害するからだ。
 アメとムチでなく、楽しさと自由でこそ、難問に立ち向かえる。そういった自分とチームを作り上げよう!


 6/18の新刊『特別講義 コンサルタントの整理術』では、「早めにやる」ことの効用と方法を、さまざま紹介している。
 「スーパーコンピュータに学ぶ超並列処理」や「答えのカケラが見えなかったら寝る」など。あなたの仕事(とプライベート)を整流化するために、是非、ご一読を。

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プロフィール

三谷 宏治 氏

KIT(金沢工業大学)虎ノ門大学院 教授
http://www.mitani3.com

1964年生まれ、三女の父。 87年、東京大学理学部物理学科卒、92年、INSEAD MBA修了。87年から96年までBCG、96年から06年までアクセンチュア戦略グループ。03年から06年は同 統括エグゼクティブ・パートナー を務める。 06年8月からは教育(特に子ども・親・教員向け)に注力し全国で講演・研修・授業を行う。 著書多数。『経営戦略全史』『ビジネスモデル全史』『一瞬で大切なものを決める技術』はビジネス書賞を獲得。近著に『戦略子育て』『新しい経営学』『戦略読書〔増補版〕』など。早稲田大学ビジネススクールおよび女子栄養大学 客員教授。永平寺ふるさと大使。

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