職種研究 CxO/部門長

[インタビュー]今なぜCxOが求められるのか? 経営者を目指すビジネスパーソンが30代までにやっておくべきこと

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現在ハイエンド求人市場でCxOへの期待が高まっている。とはいえ、CxOの定義は企業によって大きく異なる上、担うべき責任の大きさや使命もさまざまだ。そこで、CxOにふさわしい人物像や、経営者を目指す20代、30代のビジネスパーソンが、CxO候補者に名乗りを上げるまでに経験しておきたい取り組みなどについて、キャリア研究の第一人者である小杉俊哉氏に話を訊いた。

プロフィール

写真:小杉 俊哉 氏

小杉 俊哉 氏

合同会社THS経営組織研究所 代表社員

慶応義塾大学大学院理工学研究科 特任教授

立命館大学大学院テクノロジー・マネジメント研究科 客員教授


1958年生まれ。早稲田大学法学部卒業後、NECに入社。マサチューセッツ工科大学スローン経営大学院修士課程修了。マッキンゼー・アンド・カンパニー・インク、ユニデン株式会社人事総務部長、アップルコンピュータ株式会社人事総務本部長を歴任後、独立。慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科准教授を経て現職。
著書多数 「職業としてのプロ経営者」、「起業家のように企業で働く」、「30代はキャリアの転機」

専門性を高めることだけで出世が望めた時代は終わった

【INQ荒井】国内市場が低迷するなか、企業間競争は激しさを増しています。さらに人工知能やビッグデータ、ソーシャルマーケティングなど、これまで経営者の守備範囲にはなかったような課題が次々と押し寄せるなか、企業のトップがひとりで的確な経営判断を下すことが難しい時代になりました。

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【小杉】同感です。2015年から日本でも適用が始まったコーポレートガバナンスコードをきっかけに、上場企業の多くが2人以上の社外取締役を迎えたり、経営の監督と執行の分離を明確化するために、CxO制度を導入する企業が増えたりしているのも、その多くが複雑化する課題に対して適切に対処するための取り組みですからね。

【INQ荒井】ええ。採用の現場でもその影響が少しずつ出はじめています。以前ならCxOを採用したいという企業の大半は外資系でした。でも最近になって、オーナー企業や買収ファンドの投資先にあたる企業からもCxOを求める声が聞かれるようになっています。とはいえ、なかなかCxOにふさわしい人材が見つからないというのが現状です。

【小杉】きっと求められる人材像とビジネスパーソンの認識にギャップがあるからでしょうね。

【INQ荒井】どういうことでしょうか?

【小杉】今日のように環境の変化が激しく、意思決定に際して検討すべき課題が山積しているような状況では、多様な価値観と向き合わなければなりません。しかし特定の業務スキルを磨き続けることに執心してきた人が責任者の地位に就くと、異なる価値観を受け入れられず拒絶してしまうケースがよく見受けられます。その結果、担当部門の利益代表になってしまい、全体最適の妨げる要因になってしまうんです。

【INQ荒井】なるほど。

【小杉】もちろん、経営を担う人材に専門性は不要と言っているわけではありません。ただ専門的な知識や経験は経営者にとっての必要条件ではあっても、十分条件ではないということなんです。たとえばCFOに求められる能力を例に挙げてみましょう。言うまでもなく経理・財務について知識は欠かせません。数字を把握する力や読み解く力、決算や監査を乗り切るにはチーム統率力も必要でしょう。しかしそれでは単なる財務のスペシャリストに過ぎません。

CFOに求められるのは、財務のスペシャリストであることと同時に、取締役や他部門との間に信頼関係を築き、バリューチェーン全体を捉え、全社の利益を考え判断を下せる能力です。異なる価値観を持った他者を理解しようという意欲を持ち、コミュニケーション力や課題解決能力、環境適応力に優れた人材であることも必要です。つまり、心の知能指数とも言われるEQ力が必須なのですが、この事実が「出世=高い専門性」という誤った考えの影に隠れてしまい、これまであまり顧みられることがありませんでした。

キャリアの「食わず嫌い」をやめれば、チャンスに近づける

【INQ荒井】それがCxOと事業部長の違いなのですね?

【小杉】そう思います。現在活躍している著名なCxOの皆さんにお会いすると、ひとつの会社、ひとつの専門性だけでキャリアを積んだという方は非常に稀であることがわかります。思いのほか、海外経験や異なる業種、業態での経験を持ち合わせている方が多い。こうした方々は得てして、多様性への理解や思考の柔軟性があるので、先ほど申し上げたような「専門性の罠」にかかることが少ないように感じます。

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【INQ荒井】ではどうしたらCxOに必要な経験が積めるのでしょうか?

【小杉】仮に40代でCxOになるとしたら、30代までに組織の大小は問わないので、部門責任者か事業責任者の役割を担うべきなのですが、それ以前にまず、キャリアの「食わず嫌い」をやめることだと思います。

【INQ荒井】どういうことでしょうか。詳し聞かせてください。

【小杉】はい。たとえば、会社から意外な異動を命じられても、前向きに捉え、好奇心を持って取り組んでみることです。米スタンフォード大学のジョン・クランボルツ教授が提唱した「プランド・ハプンスタンス(計画された偶然性)」理論にも「予期せぬ出来事をキャリアのチャンスに活用する」という項がありますが、経営者として大成した方にお会いすると、ほとんどの方が「当時はこんなことしてるなんて想像もできなかった」とおっしゃいます。「自分は狙ってこのキャリアを築き上げた」とか「まんまと狙った通りの人生を歩んだ」という人もいるのでしょうが、実は少数派なんです。

【INQ荒井】確かに経営者とお話しすると、ユニークなキャリアを経験されている方が少なくありませんね。

【小杉】そうなんです。あえて言うなら、好奇心旺盛な人ほど、自分を際立たせるようなキャリアの差異化要因を持っていると言えるかも知れません。たとえば「期せずしてアフリカで仕事をした経験がある」人であれば、アフリカに関連するプロジェクトが持ち上がったとき、同じ専門性を持つ人のなかからその人が選ばれる確率が高まります。それまでやってきたことと関連性がない仕事に取り組むほど、キャリアの幅は広がります。もしCxOや経営者を目指すのであれば、キャリアの食わず嫌いはやめるべきでしょう。

多様性への理解は、副業や留学、社会貢献活動からも学べる

【INQ荒井】とはいえ「先々を見越してキャリアプランを立てるべき」と考える人は少なくありません。そういう方にはどんなアドバイスをされますか?

【小杉】「現実的にはあまり意味がないですよ」と伝えたいですね。たとえば、2011年にデューク大学のキャシー・デビッドソンという研究者が「アメリカの小学校に入学した子どもたちの65%は、大学卒業時に今は存在していない職業に就くだろう」と米誌のインタビューで語り話題になりました。また2015年には、野村総研とオックスフォード大学が「10~20年後に、日本の労働人口の約49%が現在就いている職業が、人工知能やロボットに代替されうる」という推計結果を出しています。

これらのことから見てもわかるように、自分のキャリアをあらかじめ固めてみたところで、その通りになる可能性は低い。ですから、自分で立てたキャリアプランに縛られて生きるより、目の前にある出来事をチャンスと捉えて利用するほうをお勧めしたいですね。

【INQ荒井】多様な経験を積むことが重要なのであれば、海外留学なども有効でしょうね。

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【小杉】おっしゃるように海外留学は異文化や多様性を知る上で非常に有効な手段です。もし退職するリスクを冒したくなければ、副業に取り組んでみるのもひとつの手でしょう。リクルート、日産、富士通、花王のように、副業を積極的に認める企業はまだ全体の5%に過ぎませんが、法的には縛りはないので、競業や業務に支障がでない限りは挑戦する価値はあると思います。

【INQ荒井】副業がダメでも社会貢献活動ならOKという場合はいかがですか?

【小杉】NPO法人『二枚目の名刺』が取り組んでいるような、社会貢献活動に参加してみるのもいいでしょうね。以前、あるイベントで出会った大学生は、学生の身でありながら数百人のメンバーを率いて社会貢献活動に取り組んでいました。そんじょそこらの経営者より、言葉に重みもありましたし、風格もありましたよ(笑)

【INQ荒井】すごいですね。

【小杉】そうなんですよ。もし20代、30代の若手社員が会社組織のなかで、これと似た経験を積むことは難しいでしょうが、社会貢献活動ならその可能性が広がります。国籍、性別、年齢が異なる人々と交流を深めれば、コミュニケーション力が高まるでしょうし、マネジメントやリーダーシップも学べるでしょう。ボランティア経験だからといって決して侮れません。

【INQ荒井】たとえ留学や兼業が難しい状況でも、やる気になればできることは多いことがよくわかりました。

【小杉】違いは「やる」か「やらないか」。それだけの違いで10年後、20年後に成長の差として表れてくると思います。しかし専門性を高めることが、そのまま出世やキャリアアップに直結すると早合点してしまうと、将来、選択の幅を狭めてしまうことになりかねません。もし40代で経営の一翼を担いたいと考えているのであれば、30代までに自分の得意分野を確立した上で、他人との差異化要因となる経験をたくさん積んでおくべきです。それがCxOの候補者になるか、ならないかの分水嶺になるのではないでしょうか。

【INQ荒井】本日はお話しいただきありがとうございました。

【小杉】こちらこそありがとうございました。

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