人事・総務・法務を取り巻く状況
1.クラウド技術の普及で業務の効率化が進む
人事、総務、法務部門が「守り」だけでなく、「攻め」の姿勢で業務を改善していくためには、大量かつ煩雑な業務の効率化は不可欠です。かつては、各社が膨大なコストをかけ独自開発しなければならなかった業務管理システムも、パッケージ化が進み、近年では、より安価で使い勝手がいいクラウドサービスへの移行が進んでいます。今後は、人工知能や機械学習などテクノロジーの導入などによって、さらに業務の効率化が進めば、「攻め」の業務に欠かせない、戦略立案から、実行、検証というサイクルを容易に回すことができるようになるでしょう。
2.終身雇用から成果主義、多様性の時代へ
1960年代の高度経済成長期から1980年代のにかけて、「終身雇用」と「年功序列」は、日本型経営の象徴でした。しかし、1990年代に入ると状況は一転。リストラや米国型成果主義の導入など、日本型経営にも陰りが見えはじめました。さらに2000年代には、多くの企業が新しい就労形態や評価制度を導入することで、多様性のある人材の活用に乗り出そうとしています。
- 〜1970年代
- 【経済環境】 高度経済成長
- 【キーワード】 年功序列、終身雇用、新卒採用
- 〜1980年代
- 【経済環境】 バブル経済
- 【キーワード】 年功序列、職能級制度、終身雇用、新卒採用中心
- 〜1990年代
- 【経済環境】 バブル崩壊
- 【キーワード】 米国型成果主義、コンピテンシー、抜擢人事、リストラ、中途採用の一般化
- 〜2000年代
- 【経済環境】 デフレ不況、リーマンショック
- 【キーワード】 米国型成果主義の見直し、360度評価、団塊の世代の退職、雇用延長、インターネットの普及
- 〜2010年代
- 【経済環境】 アベノミクス、低成長時代
- 【キーワード】 ダイバーシティ、在宅勤務、グローバル化、ソーシャルネットワークの拡大
3.東日本大震災以降、注目を集めるBCM
2011年に起こった東日本大震災では、多くの企業が事業の停滞や中断を余儀なくされました。電気、ガス、水道、通信、物流が止まってしまった状況下において、被災からの復旧を待たず、事業再開にこぎ着けるのは至難の業です。そこで注目を集めたのが、人員の安全確保や連絡網の整備、代替拠点で事業を再開するまでのプロセスを明確にすることで、サプライチェーンが途絶した場合に備えるBCM(Business Continuity Management/事業継続マネジメント)という考え方。災害リスクに敏感な企業の多くでは、総務部門が中心となり、同業他社や地方自治体と協定を結ぶなど、枠組みを超えた協力体制をとることで、想定外の状況を生み出さないための取り組みを進めています。
4.国際法務が支える企業の海外進出
国内の消費動向が低迷し、労働人口の低下が指摘されるなか、製造業やサービス業の企業の多くは、海外に活路を見いだそうとしています。日本企業が海外企業を買収するクロスボーダーM&Aが増えているのも、そのひとつの現れといえるでしょう。しかし海外への進出を成功させるためには、法務部門のなかでも国際法務に長けたプロフェッショナルの支援が不可欠です。とくに日本の常識やルールが必ずしも通用しない海外においては、現地の法制度をよく理解した上で交渉に望むことが、自社を守る上で有効なのは言うまでもありません。とくに海外の法体系はもとより、歴史、文化、言語に精通している、海外のロースクール留学経験者や海外弁護士資格を持つ人材はその数も少なく、希少人材として重用される傾向にあります。