マーケティングを取り巻く状況
1.経験と勘から、データとファクトへ
消費者に対して情報を発信する手段がマスメディア中心だった時代には、顧客嗜好を知る術は、コミュニケーション手段は、アンケートなどの定量調査やグループインタビューや行動観察などの定性調査などに限られていました。
しかし、位置情報をはじめとするさまざまなセンサーや通信規格を搭載したスマートフォンが普及し始めると、消費者の購買行動はもとより、ウェブサイトやアプリ内での振る舞いやソーシャルネットワーク上での発言など、多様な行動がデータとして記録されるようになりました。
さらに、こうしたデータを分析するためのIT基盤が安価に提供されるようになったこともあって、多くの企業が世界中で日々生成される膨大なデータを自社のマーケティングに生かそうと力を尽くしています。
かつては、優れたマーケティングノウハウを持つことで知られる、米P&Gのように、特別な企業にしか実現できなかったマーケティング手法の多くが、ITの進化によって多くの企業が手にすることが出来るようになりました。 マーケティングの世界にも、経験と勘から、データとファクト(事実)への価値変換が急速に進んでいます。
2.海外市場開拓を指揮する人材を外部招聘する動きが加速
先進国に先駆けて少子高齢化が進む日本市場の将来性を見越して、現在多くの日本企業が海外市場へと活路を見いだそうとしています。
しかし、海外市場は日本市場とは異なり、国や地域によって、言語や文化の多様性が著しく異なるため、日本での成功事例がそのまま通用することは稀です。
そのため、北米や欧州、アジア市場を舞台に、マーケティング戦略を実行し、ブランド力を高め、販路拡大に貢献した経験を持つ人材ニーズが急速に高まっています。
たとえば、日本コカ・コーラで会長を務め、後に資生堂に移った魚谷雅彦氏のように、国内外で「売る力」蓄えたプロ経営者がその力量を変われ、国内外の市場シェア獲得のために尽力するケースも年々増加しています。
3.デジタルマーケティング分野で進む業界再編の動き
社会のデジタル化が進展したことによって、マーケティング手法も多様化、高度化の一途を辿っています。
その象徴的な動きとして、ここ数年顕著になっている、コンサルティング会社による広告会社の買収があります。
IBMはおよそ20年前からデジタルマーケティング分野に参入し、2016年には米Resource/Ammirati社や独Aperto、ecx.ioなど、広告会社やクリエイティブ会社を次々と買収している。PwCも同様に、2013年に広告会社の米BGTを買収し、デロイトも2016年に米Heatをグループ傘下に加えました。
さらにアクセンチュアに至っては、2013年には英FjordとAcquity Groupを買収したのを皮切りに、豪Reactive Media Pty LtdやスウェーデンのBrightstep、米Chaotic Moon、ブラジルのAD.Dialeto、米Boomerang Pharmaceutical Communicationなど、デジタルマーケティング、広告、クリエイティブ領域で、次々と買収を進めており、業界再編の先導役を務めています。
こうした動きは、年を追うごとにマーケティングとITが分離不能なほど深く関わっていることの査証といえるもの。もちろん日本とも無縁ではありません。