転職のご相談・お問い合わせ

コンサルティング業界に強い専門の
エージェントに転職相談(無料)してみませんか?

1分で完了無料登録・転職相談

株式会社アーキ・ジャパン 代表取締役社長 吉田 周平 氏

プロ経営者インタビュー

吉田 周平 氏

「未来を創る人づくり」を理念に掲げ、建設業に携わる人材を育て、市場価値を高めて社会に送り出したいと考えているアーキ・ジャパン。これまで多くの商業施設やビル建設、インフラ工事の現場に、数々の技術社員を派遣してきた。
2021年の就任以来、「想いに共感してもらい、現場に任せる」という方針で経営してきた同社は、2023年には単月売上が10億円を突破し、成長を続けている。
「利益第一主義ではサステナブルな経営はできない」という吉田氏に20の質問に答えていただいた。

吉田 周平 氏
株式会社アーキ・ジャパン 代表取締役社長
https://akijapan.co.jp

大学卒業後、OracleやMicrosoftでプロダクトマネージャーとしてパッケージソフトのマーケティング戦略立案・実行に携わる。2008年に祖父が創業した旭シンクロテックへ入社し、事業再生に従事。2011年に代表取締役に就任し、トーエネックへ売却するまでの5年間、続けて事業再生に取り組む。2018年にゆこゆこホールディングスへ入社し、副社長に就任。19年より代表取締役社長となり、コロナ直後の激動期を乗り越える。2021年よりアーキ・ジャパンの代表取締役社長に就く。

[1]自己紹介をお願いします

photo01.jpg

大学卒業後、Oracleというアメリカのパッケージソフトウェアメーカーに入社し、9年間、プロダクトマネージャーとして人材マネジメントシステムのマーケティングを担当しました。その後Microsoftに転じ、CRM製品の立ち上げに携わることに。いずれの会社でも、日本市場における広報・PRやマーケティング、販売戦略の企画・実行を任されていました。
2008年11月に役員から請われて旭シンクロテックという祖父が立ち上げた建築関係の会社に入ります。赤字体質だった経営を1年で黒字化し、さらに2年後には再生ファンドに売却。それからもう3年かけて事業再生に取り組み、最終的にはトーエネックという会社に引き受けてもらうことができました。

旭シンクロテックを売却して1年ほど経った頃、事業再生が完了したということで私の役目も終了。就職活動をすることになりました。そのタイミングでユニゾン・キャピタルを紹介してもらい、プロ経営者の道へ進むことになったのです。
2018年に旅行業やシニア事業を手掛けるゆこゆこホールディングスに副社長として入社、翌19年には社長に就任します。豪雨災害や地震、コロナ禍など厳しい時を過ごしながらも業績を伸ばそうと、旅館やシニア向けのマーケティングに取り組みました。
そして建築業での経験を買われ、2021年からアーキ・ジャパンの代表を務めています。

[2]現在のご自身の役割について教えてください

オーナーだった会長と社長が引退する際、後継者として経営を任されました。当時は、創業以来15年連続で増収増益を達成していたものの、それ以上拡大することに限界を感じていました。そこで心機一転、より一層成長するために外部のプロ経営者に経営を託したいと考えたのだそうです。

代表就任後はコロナ禍の影響もあって、技術社員の採用も派遣も苦戦しましたが、2023年にはひと月で100人の新規採用を実現。売上も単月10億円を超えコロナ前最高値を更新しました。
今後さらなる成長や業界でのシェア拡大を担っていくのが、私のミッションです。

[3]小中学生時代はどんなお子さんだったのでしょう?

子どもの頃はおばあちゃん子で、庭で野菜を育てるのが好きでした。小学校高学年までは運動も苦手で、女の子たちに混ざって遊ぶことが多かったように記憶しています。当時から泣き虫でしたね。
中学からバレーボール部に入って、キャプテンになるなど運動に打ち込むようになっていきました。

[4]高校、大学時代はいかがですか?リーダーシップの芽生えのようなものはあったのでしょうか?

高校でも引き続きバレー部に所属し、ここでもキャプテンを任されました。大学ではバレーボールサークルの強豪チームに所属し、プレーを続けました。
並行して高校のバレー部や同じサークルの女子チームのコーチを行うなど、周りに教える立場になることも多かったですね。自分からリーダーに立候補したわけではありませんが、誰よりもプレーがうまくなろうと努力しリーダーを任されることが多かったですね。
当時は、半ば高圧的に指示するトップダウン型のリーダーでした。どちらかというと「リーダーとはぐいぐい引っ張っていくものだ」と思いこんでいたような気がします。ただ、もともと強く言うのが得意な性格ではないので、違和感はありました。思えば、トップダウン型のリーダーを「演じて」いたのかもしれません。

[5]ご家族やご親戚に経営者はいらっしゃいますか?

祖父も父も経営者です。母方の親族も町工場を営んでいたそうです。とはいえ、家族の影響で経営者になろうと思ったわけではありません。当時の男同士ですから、父とはほとんど会話がありませんでした。

[6]ご自身の性格について教えてください。

共感性が高いですね。映画やスポーツの勝利者インタビューなどを見ているとすぐもらい泣きしてしまいます(苦笑)。そういうこともあって人と接するときは、一人ひとりの気持ちに寄り添い、個々人の強みを大切にするようにしています。
それから、新しいもの好きでもあります。90年代後半にIT系企業に就職したように、「次のトレンドをキャッチしたい」「周りに先駆けて新しいことをやってみたい」という欲求が強いと思います。

[7]いつ「経営者になろう」と思われましたか?

大学で経営学科に進み、企業戦略や分析を学んだのがきっかけです。経営戦略のゼミに参加したり、教授とディスカッションしたりする中で漠然と「経営者って面白そう」と思うようになりました。
IT業界に絞って就職活動をしたのもこれからの経営にはITが不可欠だと思ったからです。ちょうどWindows95が登場し、Yahoo! JAPANや楽天が創業した頃のこと。授業でもパソコンを使うようになり、世の中にITが広がっていくうねりを感じていました。

[8]経営者に必要なメンタリティ、スキル、経験とは何でしょう?

実は正直、私自身はプロ経営者に向いていないと思うんですよ(笑)。もちろん数字にコミットはします。でも、利益第一主義ではありません。
数字を一番に持ってきてしまうと、組織の歯車が狂ってしまいます。社員同士の関係がうまくいかなくなったり、心理的安全性が担保されなくなったりする。
あるいは短期的な業績に目を向けていると、3年は業績を向上できても、5年は続かないということがある。それでは意味がありません。
業績や成果は、正しい方向へ向かって組織が一致団結すれば結果としてついてくるものです。結果がついてこないということは、その手前の組織や人間関係がどこかおかしいということ。社内でも、予算必達、売上最優先とは決して伝えません。

[9]他に経営者に必要な資質や能力などありますか?

バランスを取ることだと思います。企業が永続的に成長していくためには、さまざまなバランスを保つことが重要です。プロ経営者として社長に就任するときは、「単年度では成果は出ません、少なくとも3年はかかります。できれば5年は見てください」と話しています。
いきなり新しいことをしようとすると、従業員は混乱して拒否反応を起こすことがあります。早く成果を出そうとトップダウンで指示をすれば、従業員は本気でやりたいとは思っていないのに「やります」と言って従うかもしれません。でも、単年度だけで数字を出そうとすると、企業経営に必要なバランスを崩してしまいかねないのです。

従業員が自発的に「これをやりたい」と思う空気が醸成されるには時間がかかります。そして、やりたいことに取り組むスキルや経験値を習得するにも時間がかかる。そこを飛ばしては、業績は上がりません。
少なくとも現段階で、利益第一主義で業績を伸ばす方法を私はとりません。あの社長についていこう、この会社のやることなら共感できると、ステークホルダーや従業員が想いに共感して、一致団結することの方が先。そういう空気感を醸成しないと、永続的な成長はできないと思います。

[10]これらのスキルなどをどこで手に入れたのでしょうか?

旭シンクロテックで事業再生に携わったときです。そもそもIT業界出身の私には、建築業界のことはわかりませんでした。ですから現場を深く理解している人にアイデアを出してもらい、力を尽くしてもらわなければならないと考えたのです。
そこで、現場のリーダーのみなさんに「営業利益5%を目指そう」という目標と下請けをたたいたりしないという原則だけ伝え、やり方は全て任せることにしました。そして現場のみなさんが良いと思うことにどんどん取り組んでもらった結果、大幅に営業利益が伸びたのです。

そのとき、「業界やドメイン知識に詳しくない自分ができることは、詳しい人に目指す方向性を伝えてやり方は任せきることだ」と実感しました。大切なのは従業員自身の内側から湧いてきたエネルギーや、「やりたい」という気持ち(内発的動機)を大切にすることです。
私がひとりで戦略を考えて現場のみなさんに実行だけを任せていたら、瞬間風速的な業績アップにとどまり、会社を伸ばすために必要な考え方は組織に定着しなかったでしょう。それでは、サステナブルな事業成長は成し得なかったのではないかと思います。

[11]業界のプロとしての知見はいかがでしょう? やはり必要だとお考えですか?

経営者が業界の知見を持っているかどうかについては、一長一短があります。その業界のプロだからこそ具体的な指示もできるし、経営にスピード感が出る場合もあるでしょう。しかし業界にいた人間ではないからこそ、素朴な疑問や業界の慣習に対する違和感を口にできることもあるのではないかと思います。

[12]過去に体験した最大の試練やストレッチされたご経験について教えてください

旭シンクロテックでの事業再生経験です。私が入社したのは2008年11月で、折しもその前月にリーマンショックが起きたばかりでした。建設業は景気の波が2~3年後にやってくるといいますが、数年後に大打撃を受けました。
それに加えて明らかになったのが、債務超過と慢性的な赤字体質です。大きな借り入れもありました。当時30代半ばでしたが、メインバンクの方々や弁護士、コンサルタントなどに相談し、3年間本気で事業再生に取り組みました。おかげで無事に2016年に引受先も決まり、なんとか立て直すことができました。

そのとき学んだのは、「誠実で真っ正直であれ」ということです。
会社の債務超過や赤字体質が明らかになったとき、私は従業員や取引先、パートナー企業に窮状を包み隠さず説明しました。一軒一軒、頭を下げて「みなさんが当社との取り引きを止めると判断するなら、仕方がありません。しかし、パートナー企業のみなさんがいなければ当社は回りません。約束を反故にしないよう新しい資金繰りの計画もつくったので協力してください」と。
すると「私たちは旭とともに歩んできました。旭と心中するつもりです。」と言う取引先やパートナーばかりで、1社も離れることはなかったんです。正直に包み隠さず話すことが、信頼につながるのだと思います。

[13]経営者を志す者には、どのような努力や学びが必要でしょうか?

どのような想いで事業に取り組むのかを語れる、ストーリーテラーであることが必要だと思います。
会社とは組織であり、一人では成し得ないことに取り組む場所です。組織を動かすには、多くの人の心を動かし、従業員に協力してもらう必要があります。そのためには、多くの人に共感してもらい、賛同してもらえる想いを語れなければなりません。

[14]今までに影響を受けた先輩や師匠といえるかたはいらっしゃいますか?

photo02.jpg

二人の師匠がいます。
一人目は、旭シンクロテックの事業再生を担当してくれたメインバンクの次長さんです。当時30歳そこそこの自分はバンカーといえば、ドラマや映画に出てくるビジネスライクなイメージしかありませんでした。
しかし担当の次長さんに会社の危機的状況について話したところ、真剣に叱ってくれたんです。「景気が悪いのも、業績が良くないのも知っていました。だけど、本気で支援したいから何かできることはないだろうかと策を練っていたんです。それを裏切るようなことはしないでくれ」と。その時、はっと目が覚めました。金融機関の方は企業のことを親身になって考えてくれる大切なパートナーなのだと。こちらも正直に、真摯に向き合わなければならないと学びました。

二人目は、旭シンクロテックの事業再生をサポートしてくれた元投資銀行の方です。以前から経営のいろはを教えてくださっていたのですが、社長を退く挨拶をしに行ったところ、「君はサイエンスとアートのバランスがいいから、プロ経営者に向いているよ」と言ってくださったのです。その方に、助言をいただいたことがプロ経営者になるひとつのきっかけにもなっています。

[15]キャリアの成功とは「計画的に努力して成し遂げるもの」でしょうか?それとも、「偶然や人との出会いなど、運が影響するもの」だとお思いですか?

「計画的偶発性理論」(キャリアの8割は偶然によって起こるが、残りの2割は本人の行動や努力に左右されるという考え方)の通りだと思っています。
もともと経営に対する興味関心があったところに、たまたま事業再生を経験することになり、「経営者に向いているのでは」という助言の結果、ここにたどり着いています。さまざまな偶然や人との出会いのおかげでこの仕事をしていますが、そのベースには私自身の想いがあったからだと思います。

[16]なぜ起業ではなかったのでしょうか?

起業するだけのアイデアがなかったからです(笑)。自分のアイデアで事業を大きくするより、その会社にいる人や組織の力で会社を強くしたいと思っています。

[17]特別な信条やモットー、哲学などをお持ちですか?

常にWin-Win-Winでなければダメだということです。
お客さまがいて、仕入先があって共に仕事をしてくれるパートナー企業がいる。そして、従業員やその家族もいます。パートナー企業に支払う金額を大幅に下げて利益を出したところで、関係性は長続きしません。次第にパートナー企業は離れてしまうので、サステナブルではないですよね。同様に、お客さまだけに利益があって当社にメリットがなければ破綻してしまいますし、パートナー企業に払いすぎて当社が赤字になっては元も子もありません。
当社に関わる人たちが、仲間としてついてきてくれる、そんな関係性がつくれなければ永続性のある経営はできないのではないでしょうか。

それから、サイモン・シネックの「ゴールデン・サークル理論」の「WHYからはじめよ」にとてもこだわっています。最初にHOWを伝えてしまったら自律的な行動は起こりませんが、WHYを伝えられたら自然とHOWもWHATも出てくるはずです。

[18]経営者となった今、何を成し遂げたいとお考えでしょうか?

人の力で、中堅、中小企業を元気にして、日本経済に貢献したいと考えています。メディアで取り上げられるのは一部の大企業ばかりですが、日本経済を支えているのは多くの中堅、中小企業です。でも、これらの企業には大企業のように潤沢な経営資源があるわけでも、自由に人を採用ができるわけでもありませんから、限られた人材の価値をどこまで上げられるかが企業価値を大きく左右します。私は、人は誰しも才能を持っていると信じています。しかし、その才能に自分自身でも気づいていない人が少なくありません。自分の才能に気づけなければ、才能を伸ばすことも発揮することもできません。私は経営者として、彼らが才能に目覚め、発揮する環境を創りたい。そして、縁あって関わることができた中堅、中小企業の価値向上と日本経済への貢献をしていきたいと思います。

[19]現在のポジションを去る時、どういう経営者として記憶されたいですか?

記憶ではなく、「想い」や「言葉」が魂のようなかたちで残るといいなと思っています。旭シンクロテックでは、当時私が伝えていた言葉がいまもパーパスの一部や、会社説明資料、さまざまな企画書などに残っているそうです。すでに私は旭シンクロテックの経営から退いていますので、それはもう私の発言ではなく、会社にとって大切な考え方としてしっかり根付いているということですよね。
私のことを知らない人が増えても、想いや言葉が受け継がれていく、そんな存在になれたらいいですね。

[20]20代、30代のビジネスパーソンにメッセージをお願いします

photo03.jpg

仕事の意味って、簡単に見えてくるものではありません。目先の仕事だけ見て、「やりたいことがわからない」とか「これは自分がやる仕事じゃない」と仕事を辞めてしまう人が多いのではないでしょうか。私自身も、50歳を間近にようやく自分にとっての仕事の意味が整理できてきたような気がしています。

強みや得意とするところと、社会に求められることが重なってバリューを発揮し、その先に成し遂げたいことがぼんやり見えてくるものです。強みや得意なことは、いま目の前にある仕事に懸命に取り組むことで浮き上がってきます。去年の自分よりいまの自分がより良くなるよう邁進して、自分を表現する「タグ」を増やしていってほしいですね。

「プロ経営者」になる。〜経営者インタビュー〜の最新記事

一覧を見る
初めての方へ 私たちキャリアインキュベーションについて

転職のご相談・お問い合わせ 業界の専門分野で10年以上の
経験を持つエージェントに
転職相談(無料)
してみませんか?

あなたのキャリアに関する相談相手として、現在の状況に耳を傾け、これまでのご経験や今後のポテンシャル、
将来の展望を整理し、よりふさわしいキャリアをご提案します。

  • 転職成功者の90%以上が
    対応に「満足」と回答

    キャリアと並走して
    長期的・継続的にサポートする活動に
    多くの方から賛同いただいています。

  • 転職ありきではなく戦略的に
    状況を見極めて案件を紹介

    今後のキャリアの可能性を
    探りたい方にも希望や適性を
    踏まえて本音でアドバイスします。

  • 転職決定者の70%以上が
    年収1,000万円以上を獲得

    圧倒的な求人情報量があり
    ご相談いただく多くの方が転職前よりも
    好待遇で就業されています。

1分で完了 無料登録・転職相談

現在約6000人以上が登録中!
転職活動にすぐに役立つ
メールマガジン(無料)もございます。

メールマガジン登録(無料)