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プロ経営者インタビュー 株式会社ビューマインド 代表取締役社長・CEO 鈴木 明 氏

プロ経営者インタビュー

鈴木 明 氏

ビューマインドは、アイゾーンを中心としたパーツ美容のパイオニア企業である。パーツ美容が世の中に浸透する以前の2005年にまつ毛エクステンション専門店「プラスアイ」を開業し、その後もアイブロウスタイリング専門店「エサージュ」、ジェルネイル専門店「プラスネイル」とブランドを拡大している。トップを務めるのは、外資系企業で長年キャリアを積んできた代表取締役社長の鈴木明氏だ。2019年12月に社長に就任し、間もなくコロナ禍に直面するも、危機を脱し、今では成長に向けて軌道に乗りつつあるという。仕事を「楽しむ」ことを大切にしているという鈴木氏に20の質問について語っていただいた。

鈴木 明 氏
株式会社ビューマインド 代表取締役社長・CEO
https://beaumind.com

大学卒業後、当時創業間もない東急ハンズ(現・ハンズ)に新卒入社。10年間勤務した後に外資系に転じ、ディズニー・スペシャルティ・リテイル ジャパン(現・ディズニーストア ジャパン)、アディダスジャパン、タッパーウェアブランズ・ジャパンで営業統括、企画、マーケティングなど様々な分野の部門長を歴任。その後、企業の成長を担うプロ経営者として、2014年にネイルサロンチェーンのコンヴァノの代表取締役社長に就任し、2018年4月に東証マザーズ市場(現在のグロース市場)への上場を実現。2019年12月より現職。

[1]自己紹介をお願いします

私はこれまでBtoCビジネスでキャリアを築いてきました。

大学を卒業して最初に東急ハンズ(現・ハンズ)に入社しました。金融政策のゼミだったので、ゼミ仲間はみんな金融機関に就職しましたが、私は「人と違うことをしたい」「新しいことをやってみたい」という想いから、創業3年目で「これまでの世の中にはない物販店」という当時としては新業態である東急ハンズに入社しました。東急ハンズには約10年勤務し、渋谷旗艦店の企画や営業統括、新規出店など経験しました。その後、再び新しいことにチャレンジしたいという想いでディズニー・スペシャルティ・リテイル ジャパン(現・ディズニーストア ジャパン)に転職しました。

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米ウォルトディズニーが日本でディズニーストアの直営店を初出店するために立ち上げた日本法人で、1号店の店長として開店準備やグランドオープン、その後商品プランニングマネジャーや出店企画などを経験しました。約8年勤務し、その間に店舗数は80を超えました。2000年に独アディダスの日本法人であるアディダスジャパンに転職しました。

アディダスブランドは、それまで日本ではライセンス契約をした日本のスポーツメーカーがビジネスをしており、ドイツ本社出資の日本法人はまだ設立3年目の立ち上げ間もない時期でした。セールスプランニングマネジャーとして入社し、インテグレイテッドプランニング、ビジネスプランニング、マーケティングプランニングの部門ヘッドを経験しました。

その後、2009年末に米タッパーウェアの日本法人、タッパーウェアブランズ・ジャパンに転職しました。日本でもお馴染みのプラスチック容器「タッパー」を広めた本家本元の企業で、ここではマーケティングディレクターとしてブランドの再構築に従事しました。

その後、ファンドから投資先に派遣される「プロ経営者」に転じ、2014年にネイルサロンチェーンのコンヴァノの社長に就任しました。ファンドからはIPOをミッションとして与えられました。2018年4月、業界で初めて東証マザーズ市場(現・グロース市場)へのIPOを実現し、無事任期を満了しました。このIPOに至るまでの経験は非常に大きな財産となりました。

そしてご縁があって2019年末にビューマインドの代表取締役社長に就任し、現在に至ります。ビューマインドでは就任3カ月でコロナ禍に直面しました。大変なことも多々ありましたが、社員が一丸となって力を合わせたことで無事業績を回復し、現在は成長に向けて軌道に乗っています。

[2]現在のご自身の役割について教えてください

ファンドからの派遣で、創業社長から事業承継する形で代表取締役社長に就任しました。社長として私に課せられた役割は、ビューマインドを『いい会社にする』ということです。

『いい会社』とは何かを定義するために、まず経営理念であるミッション、ビジョン、コアバリューを明文化しました。そして、『お客様からもスタッフからも選ばれる会社になる。』をビジョンに掲げ、その実現に向けて3つの柱を立てました。「店舗ネットワークの拡大」「顧客満足度の向上」「社員満足度の向上」です。

まず、「店舗ネットワークの拡大」については、この3年で新店舗を12店オープンしました。コロナ禍中は営業に制限も入り厳しい状況でしたが、マスクをしていても見えるパーツとしてのアイブロウの需要拡大を促進する施策を行ったり、営業時間を調整しながら営業を継続するなどの努力をして収益を確保し、新店オープンに繋げました。

「顧客満足度の向上」については、顧客満足度に向けた施策の企画・立案を行う社内プロジェクト『プロジェクトハート』を立ち上げて、新規顧客リピート率をKPIに日々様々な施策を行っています。

「社員満足度の向上」については、会社というリソースを活用して社員個人が成長でき、かつライフステージに応じた様々な働き方ができる「選ばれる会社」を目指して様々な変革を行っています。まずは会議体の運営方法を改善したり、全社カンファレンスを開催して会社が目指すことを全社員で共有したり、成果を上げた社員を表彰したりと、マネジメントスタイルを変更しました。現在は人事制度の見直しに着手しています。

[3]小中学生時代はどんなお子さんだったのでしょう?

あまり人と戯れずに、1人自分の好きなことに没頭していました。近所の車両基地を眺めたり写真を撮ったりするのが好きでした。
今思えば少し変わり者だったかもしれません。

[4]高校、大学時代はいかがですか?リーダーシップの芽生えのようなものはあったのでしょうか?

高校生の時は、3年間ブラスバンド部でトランペットを吹くのに明け暮れていました。
大学時代は経済に興味を持ち、経済政策や金融政策を専攻して一生懸命勉強していました。空き時間はデザイン企画研究会のクラブ活動やアルバイトに明け暮れていました。当時は先頭に立ったり、リーダーシップを発揮するタイプではありませんでした。

[5]ご家族やご親戚に経営者はいらっしゃいますか?

いません。

[6]ご自身の性格について教えてください

周囲からは温厚に見られることが多いようですが、実際はせっかちで、思い立ったらすぐに行動に移したいタイプです。また負けず嫌いです。第一印象と実際とでギャップがあるようです。

[7]いつ「経営者になろう」と思われましたか?

外資系企業を数社経験したタイミングです。その経験を活かしてトップとして意思決定したいと思うようになりました。
また、外資系では日本法人でも本国からトップが派遣され、本国のマネジメントスタイルが適用されるということがよくあります。海外の企業では変わることを善しとする企業も多く、ある日方針が突然変わることもよくあります。時には良い方向に柔軟に変わっていくことも大事ですが、私はある程度は一貫性を大事にしたいと考えていました。そういった経験もあり、私自身で意思決定したいという想いが強くなったのだと思います。

[8]経営者に必要なメンタリティ、スキル、経験とは何でしょう?

一度決めたことをやり抜く力です。自分が正しいと思うことを進めていく一貫性と、そこに向かっていくための邁進力が必要です。ただ、自分1人ではなくて組織を動かす以上、仲間たちにもついてきてもらえるスピード感でなければいけません。ですので、毎日少しずつでも、ステップバイステップで前進させていく必要があります。

また、現場で何が起こっているのか、誰が何をして売上が生まれているのか、収益の源泉を本質的に理解することも必要です。収益の源泉を適切に理解していることで、本質的な打ち手が初めて見えてきます。ビューマインドの例で言うと、スタッフ1人ひとりが施術をして初めて売上が立ちますが、同時に提案するオプションやセルフケアアイテムを含めての客単価です。その内訳を理解しようとせず、ただ売上だけ、単価だけを見ていては本質的に必要な打ち手に気づけませんし、現場と経営層との間に乖離が生じてしまいます。

[9]他に経営者に必要な資質や能力などありますか?

常にニュートラルなスタンスであることです。組織には色々な人がいます。「360度評価」というものがありますが、それと同様に多角的に見るためにもバイアスをかけずに聞く力、接する力は大切です。人間ついつい自分の視点で見てしまいがちですが、そうならないように常々意識しています。

[10]これらのスキルなどをどこで手に入れたのでしょうか?

これまでのビジネスの経験や、接してきた上司からの学び、そして与えられた役割を全うする中で培ってきたと思います。
アディダスでは企画部門のリーダーだったので100人が参加する大きな会議をファシリテートする機会も多くありました。100人もいると、様々な人が様々な立場から発言します。各人の意見を尊重する必要もありますし、一方では本質的なゴールをしっかり意識して進めないと、大きく脱線してしまい物事が進みません。こうした状況下でリーダーとして、全体をまとめ上げて、物事を進めていった経験は大きな学びとなりました。

また、知識の幅を広げるためにビジネス本を読んだこともあると思います。私はファーストリテイリングの柳井正さんが好きで、柳井さんの本を読んだり、講演に行くなどして、柳井さんの経営に対する姿勢を学ばせていただきました。出光興産の創業者の出光佐三さんも好きで、伝記をよく読みました。様々な困難を乗り越えてお1人で6,000億円の企業を創り上げていくお話はとても刺激ですし、ゴールに対して歩みを止めずに毎日ステップバイステップで進んでいったお話からは非常に多くのことを学ばせていただきました。

[11]業界のプロとしての知見はいかがでしょう? やはり必要だとお考えですか?

大局的な観点から、トレンドがどうなっているかなど業界に関心を持つことは重要だと思いますし、私自身もトレンドや関連するレポートを読みながらキャッチアップしています。

BtoCビジネスには有形・無形様々な商材がありますが、「企業と消費者の間に商品がある」という意味で本質的には同じだと思います。ですので、私自身あまり抵抗感なく美容業界に入っていくことができました。

[12]過去に体験した最大の試練やストレッチされたご経験について教えてください

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最大の試練として、ディズニーストアからアディダスジャパンに転職した時に、大きなカルチャーギャップに直面しました。
当時のアディダスジャパンは設立3年目で、外資の日本法人ながらも、多くの社員はそれまで日本でアディダスブランドのライセンスビジネスをしていた日系メーカーの出身で、体育会系バリバリのカルチャーでした。私は営業部のプランニングマネジャーだったので、現場と密なコミュニケーションを取り、現場を理解しなければなりません。しかし当時の日系企業的な文化では、会議の場ではあまり発言をしてくれません。会議が終わった後、喫煙所で初めて本音での会話が始まる文化でした。

私は職務上彼らの本音を知る必要があるので、以前から禁煙していましたが、タバコを再開して喫煙所に通うようにしました。そこで営業社員たちの会話に参加して、彼らが何を考えているのか、何を感じているのかを理解し、上層部に伝えるパイプ役に徹しました。時間は掛かりましたが、彼らへの理解を深め、良い関係性を築くことができました。コミュニケーションなくしては自身の役割を全うできないというのは、非常にタフな経験でした。

[13]経営者を志す者には、どのような努力や学びが必要でしょうか?

自分の役割に"コミットする"ことです。昭和的な発想かもしれませんが、365日常に会社のことを考えるだけの覚悟は必要だと思います。

そして、それを"楽しむ"ことです。仕事とプライベートをしっかりと分けたいという人も多いと思いますが、休暇中に仕事に生かせるヒントを見つけることもありますし、あえて公私を線引きしない方が気持ち的にも楽なのではないかなと私は思います。 "ワークライフバランス"ではなく、"ワークライフハーモニー"のスタンスが良いのではないかと思います。

[14]今までに影響を受けた先輩や師匠といえるかたはいらっしゃいますか?

今までお世話になってきた上司の中にこの部分は自分も取り入れよう、やってみようという方がいました。それが積み重なって今の自分があると思っています。私はもともと1人で何でもやろうとするタイプでしたが、ある上司に1人で背負わずに同僚に助けを求めたり、チームでやる大切さを教えていただきました。

[15]キャリアの成功とは「計画的に努力して成し遂げるもの」でしょうか?それとも、「偶然や人との出会いなど、運が影響するもの」だとお思いですか?

両方です。

運は確実に存在すると思います。
実は現在のビューマインドの社長就任にも縁がありました。キャリアインキュベーション経由で決定したのですが、サイトに登録した1時間後に連絡をいただき、面談に行くと以前お世話になったコンサルタントの方が転職でキャリアインキュベーションに入社していて、久々の再会となりました。しかも、ちょうど前職コンヴァノでの経験を活かせる美容系の求人を持っているというのです。そこからとんとん拍子でビューマインドへの入社が決まり、何か運命的なものを感じました。

計画ももちろん重要です。私はグロービスに通ったり、長年に亘って様々な努力で経営の知識を身に着けてきました。計画があってこその運なのだと思います。

[16]なぜ起業ではなかったのでしょうか?

正直申し上げて、経済的な面からゼロからのスタートは選択肢にありませんでした。
ただ、私のこれまでのキャリアは、東急、ディズニー、アディダスなど、設立間もない成長フェーズにある企業が中心でした。その経験が活かせるのは、ゼロイチのフェーズの企業ではなく、あるものを伸ばしていく成長フェーズの企業です。

[17]特別な信条やモットー、哲学などをお持ちですか?

常に志を高く、決して諦めず、そして仕事を楽しむというスタンスを大切にしています。ビューマインドの行動指針にも「楽しんでチャレンジする姿勢(Have Fun)」と入れています。最近もコロナ禍で大変でしたが、諦めずに色々と施策を打ち、それらが成果として実を結ぶ過程を楽しむことで乗り越えていきました。

[18]経営者となった今、何を成し遂げたいとお考えでしょうか?

トップとして組織を率いて、中期ビジョンである『お客様からもスタッフからも選ばれる会社になる』を実現することです。

[19]現在のポジションを去る時、どういう経営者として記憶されたいですか?

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私が社長になったことで『良い会社になった』 と言ってもらえたら光栄です。

創業者から引き継いだ後、新体制に移行して、企業カルチャーやマネジメントスタイルを変えたり、顧客満足度・社員満足度を上げるなどの活動をしてきましたが、進捗としてはまだまだ5~6割程度です。今後は制度面をより充実させて社員のライフステージの変化により柔軟に対応できるようにしたり、社員同士のコミュニケーションを促進するための取り組みをしたり、つい所属店舗のことしか見えなくなってしまうので会社としての一体感を高める取り組みなどをしていきたいと思います。

[20]20代、30代のビジネスパーソンにメッセージをお願いします

「仕事を楽しめ」とお伝えしたいです。皆さんはこれから色々なことを経験し、そこから何かを学び取ると思います。それを自分の中で積み重ねていくことで大きな財産、つまり力になります。それを意識して日々を過ごしていただきたいと思います。とにかく仕事は楽しむことが大切ですので 常に志高くあっていただきたいです。

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