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プロ経営者インタビュー

20人のプロ経営者インタビューを終えて

「自己効力感≒根拠なき自信」に導かれた
ポジティブ・スパイラルがプロ経営者を生み出す!?

【荒井】自己効力感とは何なのでしょう? 「自信」に近いものですか?

【小杉】非常に似通っているようでいて、本質的には違います。自己効力感は「望んでいる結果を生み出すために必要な行動を、自分は上手にすることができる」というような信念を持っている状態のことです。

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「自信」と私たちが普段呼んでいる心理状況は、すでに経験したこと、結果を出したことのあるものに対して抱く感覚だと言えますが、自己効力感あるいはセルフ・エフィカシーと呼ばれているものは、未知なる体験、ワケのわからないものと相対した時にでもわき上がってくるものです。

わかりやすい言い方をすると、「まあよくわからないし、今まで経験したことがある事柄じゃあないけれど、自分ならなんとかできるだろう」というような、ある意味ゆるい感覚です。

【荒井】それって、俗に言う「根拠のない自信」というヤツではないですか? もしもそうだとしたら、危険な感じもしますが(笑)。

【小杉】まさにそれです(笑)。根拠のない自信。荒井さんが言うように、通常はあまり良いことではないように評価されていますが、実はとても大切なんですよ。

荒井さんは、根拠のない自信の持ち主の多くが、実は成功体験を過去に数多く持つ人たちだと気づいたことはありませんか? 例えば、「最近太ってきたから今月2kgダイエットしよう」と考え、実際にそれを達成した。今度は「毎週3冊以上の本を読む習慣を持とう」と思い立ち、その通りこの習慣を身につけた。こういうちょっとした成功体験でも積み重なっていくうちに、自己効力感は自然と高まってきます。

そういう人は、新しいことに挑戦する時にでも、ポジティブな気持ちで困難に向き合っていくようになります。「なんとかうまくやれるだろう」と思う人たちなのですから、当然そうなりますよね。しかも結果として目的をクリアできたなら、さらに自己効力感は上がる。その後は、一層大きな困難にチャレンジしていく姿勢ができていく。とても前向きな行動スパイラルが確立されていき、その連鎖の中で成長スピードも速まっていく。

逆にダイエットもうまくいかず、読書も三日坊主に終わるような経験ばかりしている人の自己効力感は高まっていきません。そういう人はどういう行動に出ると思います?

【荒井】無難に生きるようになりますねえ。ネガティブなスパイラルをたどるうちに、イチかバチかの挑戦はしなくなる。

【小杉】そうなんです。安全策をとりながら生きるようになる。「この目標値は自分には高すぎるから、半分にしてもらおう」となり、仕事面ならば「このプロジェクトは自分には無理そうだからやめておこう」になり、就職や転職を例にすれば「こんな凄い会社には入れないだろうし、入れたとしても活躍できる気がしないからやめておこう」になる。

【荒井】子どもの頃から、それなりに成績が良かった人たちというのは、他の面でも成功体験を多く積み重ねた可能性が高い。つまり、自己効力感の高い20人だったのではないか、という分析が成り立つわけですね?

【小杉】そうです。「多少難しい挑戦でも、自分ならうまくできるかもしれない」という根拠のないポジティブさが、「リスクを恐れない」という別の共通点にもつながっていく。

【荒井】たしかに、20人全員がかなり困難なチャレンジにも果敢に挑んだ経験の持ち主でした。

【小杉】自己効力感や根拠のない自信を持っていない人間は、リスクなんて怖くてとりにいけません。安全策ばかり考えて行動します。しかしそれではプロ経営者などというタフな立場は務まらない。そもそも自分から進んで経営者になろうなどというチャレンジもしなかったはずです。

仮に失敗をしても「経験から学ぶことを学ぶ能力」
の持ち主ならば、苦境から脱出できる

【荒井】ただ、皆さんの共通点の中には「失敗から学んだ経験」というのもあります。多くの人が挫折を体験しているんです。そうして失敗をしてしまったら、それまで高まっていた自己効力感も一気に低下するのではないですか?

【小杉】そこがポイントです。人間だから誰だって失敗や挫折をします。「自己効力感さえ高ければ、毎回必ずうまくいく」なんてはずもないですよね。でも、こういう風に考えることもできるんです。

例えば同じ失敗をしたとして、もともと自己効力感の低い人だった場合は、確実にくさります。心が折れます。「ほら、やっぱりうまくいかなかった。もうこういう挑戦はしないことにしよう」となります。逆に自己効力感が高い人だったらどうか?

当然、悔しいでしょうし、痛手を負うでしょうけれど、成功体験の積み重ねによってポジティブ・スパイラルに入っているだけに、1度や2度の失敗で心が折れたりはしない。なぜ失敗したのか学習して、再度チャレンジしようとする可能性は高いはずです。

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【荒井】完全に心が折れてしまうのか、失敗してもまた立ち上がるのか、の違いも自己効力感の高さで説明できる、ということでしょうか?

【小杉】そうですね。それに、もう1つ手がかりがあるんです。それは米国No1のリーダー育成機関といわれるCCL(Center for Creative Leadership)で活躍し、現在は南カリフォルニア大学マーシャルビジネススクール教授のモーガン・マッコールが提唱している事柄。彼は「リーダーシップに関する才能の最低条件」について「経験から学ぶことを学ぶ能力」だと言っています。

【荒井】「経験から学ぶ」ことを「学ぶ」んですか? なんだか、ややこしいですね(笑)。

【小杉】たしかにややこしい(笑)。でも、例えば自己効力感が低くて安全策ばかりとるような人が失敗をした場合、「後悔」が先に立つはずです。「こういう失敗をするくらいならば、これからはリスクを背負った挑戦をしないでおこう」という方向に気持ちが行く。

一方、自己効力感の高い人は、自分に対する包括的な信頼感が高いわけですから、失敗したとしても前向きさを維持する。もちろん「後悔」はあっても、それだけで終わらずに「学習」しようという意識も生まれてくる可能性が高い。

ビジネスの現場ではよく「失敗から学びましょう」という話は出ますが、本当に手痛い失敗をした時に、誰もが本気でその原因を探ったり、次に成功するための秘訣を考えたりできるわけではない。「経験から学ぶことを学べる人」がいるとすれば、それはやはり自己効力感の高い人に限られてくると思うんです。

【荒井】もしかしたら「経験から学ぶことを学ぶ能力」の持ち主で、リスクを恐れない人たちだからこそ、「目の前の仕事の重要性」を皆さんが共通して口にしていたんでしょうか?

【小杉】私はそう解釈しました。どんな仕事でも、成功する時があれば失敗する時もあります。どちらの結果が出ようと学習機会につながっていくことを覚えた人は、目の前の仕事に手を抜いたりしないし、些細なことからもいろいろな価値を見つけ出して学び取っていく。

自己効力感の低い人たちのように、目の前の仕事にしがみつくような姿勢で臨むのではなく、将来的な成長に期待感を持って目の前の仕事に臨む。おのずと成果にも違いは出てくるのではないでしょうか。

30代という貴重な時期を「待機」して過ごすか
勇気を持って挑戦へと動くか。違いはそこから生まれる

【荒井】けれども、もしもそうして目の前の仕事に不平不満をあまり持たず、やりがいを持って学びながら臨んでいけるのだとしたら、わざわざ「最初に入った大企業」から出て行かなくてもいい、と思ったりしませんかね?

【小杉】いや、その通りだと思いますよ。非常に優秀で、自己効力感も高い方が日本の大企業にはたくさんいらっしゃいます。すべての人がプロ経営者を目指すわけでもないでしょう。

ただ、どんなに「目の前の仕事を大切にする人」であっても、「リスクのある困難なチャレンジ」をさせてもらえない環境だったら、どうなります? 自己効力感の高い人にとっては学習機会や成長機会がモチベーションにつながるわけですから、その源を今いる会社が与えてくれないのだと知ったら、外にそれを求めたりするんじゃないでしょうか。

【荒井】なるほど、納得しました。たしかに20人の皆さんは、元々いた会社が嫌いになって辞めたというのではなく、新たな成長や挑戦を求めてキャリアチェンジをした方ばかりでした。

【小杉】日本の伝統的大企業がずっと解決できずに抱えている問題点につながるポイントだと思うんです。何も知らない20代の時には、すべてのことが新しく、従って常にチャレンジできる環境があるのに、そこで成果をどんなに上げた人だろうと、30代あたりからは待機することを強いられてしまう。

私は30代こそが、レベルの高い挑戦を通じて成長していける最も良い時期、最も伸びる時期だと思っているんですが、一般的な大企業に所属していると、いかに結果を出して、優秀だと認知されてもポストがない。マネージメントや経営につながる仕事をしたくても、それを許されるポストは40代や50代が占めていて、待機せざるを得なくなる。もったいないですよね。

【荒井】だから、今いる会社やそこでの仕事が嫌いになったわけでなくとも、外に向かって足を踏み出した。そうせざるを得なかったということですね。

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【小杉】日本の大企業に若い社長が登場していない理由は、大企業にいる人材に能力が不足しているからではない。本質的問題は、経営者としての訓練を経験する環境がないことにある、と考えているんです。

とても重要な30代という時期に、経営に関わる仕事を任され、そこで自らを鍛え上げていくチャンスを与えてもらえない。つまり、研修ではなく仕事による成長機会やトレーニングの機会が不足している。だから日本企業の状況はこれまでなかなか変わらなかったのだと私は考えているんです。

【荒井】先ほど「根拠のない自信はあってもいいんだ」という話をうかがいましたが、結局、大企業に漫然と在籍して待機し続けていると、その「根拠のない自信」を裏付ける経験ができなくなる、ということですね?

【小杉】そうです。これまでに登場してくれたプロ経営者の方たちは、その「根拠のない自信」を持って行動を起こしたからこそ急成長できたわけです。私自身も家族を連れて私費で留学し、30代で2社の人事責任者をやれたのは、これがあったからだと思っています。行動が伴わなければ、いくら根拠がない自信を持っていても何も変わりません。

20人の皆さんが、こういうことをどこまで考えて外に出たのかはわかりません。いずれプロ経営者になるためのステップだと自覚して転職した方もいるでしょうけれど、そういうところまで考えて行動したわけではない人もいたように感じます。それでも間違いなく共通しているのは、学習や成長の機会を求める気持ちに素直に従った結果の行動だったということ。

そして、その行動によって、本人が意識したか否かに関わりなく、自身の成長スピードのネジを巻く効果につながっていったということ。大企業に残って待機を強いられ続けた人との成長スピードにおける格差が30代の内にどんどん広がっていったのではないかと、私は考えます。

【荒井】実はこれまでに取材させていただいた20名の内、数名の方が退任なさって、次のキャリアに向けて動き出されています。

小杉さんがおっしゃったように、現任の企業から去る時にも、「会社を見切って出て行く」のではなく、ファンド会社が切り替わったから、ですとか、変革が一段落したから、というような理由で動かれているようですが、ともあれこうした動きは、内部昇格型経営者よりもプロ経営者に顕著に表れていく現象のような気もします。これについてはどうお考えになりますか?

【小杉】「プロ経営者」という命名からも明らかなように、皆さんは経営のプロフェッショナルとして行動していますし、荒井さんのようなヘッドハンターや他の企業の上層部の人たちもそういう目線でこの方々に注目をしているはずです。

プロとして今の会社の経営にコミットをしていても、何かしらの外的要因で去らなければいけない状況は来るでしょうし、外から違うチャンスの誘いを受けるようにもなります。わかりやすく考えるには、プロ経営者をプロのスポーツ選手に置き換えてみるのがいいと思いますね。

彼らは常に高い実績を上げてチームに貢献していますし、今いるチームへのロイヤリティが低いわけではなく、リーダーシップを発揮して勝利にコミットしている。それでも次の期に別のチームに移籍することはあるわけです。移籍してしまう現象だけをとらまえて、「冷たい」などと受け止める傾向を持つ人もいるでしょうけれど、それは違うんじゃないかと私は思います。

会社というコミュニティが好きだったり、そこで向き合う仕事が好きで長く居続ける生き方もありますが、そういう意味でのロイヤリティ、忠誠心は必ずしも優れたリーダーの条件だとは考えていません。むしろチームが勝利することにどれだけコミットするか、勝てるチームにするために自分はどう動くべきか考えられることがプロには求められます。

【荒井】今いるチームが、ある程度勝てる下地を持てたなら、プロ経営者は新たなフィールドに向かうことも十分あり得るということですね。それと関連するのかどうかわかりませんが、20人の方々の共通点に「人が好き」というのもありました。

【小杉】20人の方々のインタビューを見ると、たしかに皆さん人が好きで、現場の人たちとのつながりを大切にしていますよね。仮に今いる会社を離れることがあっても、それは先ほど申し上げたように「プロ経営者」だからそうするのであって、人が嫌いになったからではないでしょうね。

INSEAD教授のハーミニア・イバーラ、モルテンT.ハンセンが「ハーバード・ビジネス・レビュー」で世界のCEOベスト50人に調査をした結果を発表しています("Are You a Collaborative Leader?"「部門横断的に巻き込み好業績を実現する力」二ノ方俊治訳 DHBR2012年4月)。そこで共通点として挙げられていた項目は「コネクターの役割を果たす」「様々な人材との関係を作る」「自らコラボレーションの範を垂れる」などです。

つまり、人と人とを結びつけるコラボレーションを自ら主導しているということです。そういう役割を積極的に買って出る姿勢の持ち主が成功しているんだということになります。ですから、今回の20人が「人が好き」という資質を持ち合わせていたことは、ある意味必然だったと言えますね。幾人かの方が同じポイントを指摘していましたが、プロ経営者の場合は「その会社に途中から参加した立場」になるわけです。たたき上げで社長になった人や、創業者として社長を務めている人以上に、短期間でコネクターになる資質や能力が問われるのは当然ですよね。

プロ経営者への最初のステップは「自己認識と自己確立」。
賢く振る舞うよりも、泥臭く目の前の仕事と向き合うこと

【荒井】では最後に、今回の分析を踏まえた上で小杉さんからアドバイスをいただけないでしょうか。プロ経営者をこれから目指そうという人には何が必要なのか、どういう姿勢が求められるのか、などなど示唆していただければと思います。

【小杉】私は数年前に『ラッキーな人の法則』という本を出したのですが、そこでジャック・ウェルチや本田宗一郎など「歴史に名を残すような偉人」の何が一般の人たちと違っていたのかを、その人の発言や書いた物の内容、そしてそれが経年でどう変化するかを調べていき、導き出した法則があるんです。過去の成功者、つまり「ラッキーな人」は共通した道筋をたどって成長していました。

まず最初は「自己認識と自己確立」です。若い時期に「自分を知ろう」と思い立ち、素直な気持ちで自らを見つめ、同時に自分ならではの主張や意見をアウトプットして、自己実現していく。ラッキーな人は苦労を厭わずに経験を積み上げ、努力を続けて、徐々に周囲から認められます。

同時に使っているのが「直感と洞察力」。一定量の経験値を獲得し、成功も失敗も味わった人間には、直感力や洞察力というものが備わってきます。論理や科学だけでは説明のつかない非合理的な勘が冴え渡るようになるわけです。

こんな風に、ラッキーな人は似通ったプロセスを経て大きく成長していくのですが、調査していて非常に面白かったのは、皆が一様にある段階から「他者支援と感謝」のモードに入っていく点でした。ある段階とは、一定の成功を収め、発達心理学で言う「中年の危機」を乗り越える時期。一般的にはには40代の前半です。

今回、20人のプロ経営者がたどった道筋やその時々で皆さんが感じていたことをコンテンツを通じて知っていくにつけ、私は「ああ、この人たちもラッキーな人の法則に当てはまるなあ」と感じました。

猛然と目の前の仕事と向き合って経験値を上げていく時期を通り抜け、人によってはオーナー企業などで「直感や洞察力」の持ち主と出会い、学んだり、苦労して関係性を築いたりした後、経営職に就いた人たち。皆さんのインタビューから共通して感じ取れるのは、ギラギラとした目標実現欲求というよりも、会社で働く現場のメンバーたちへの敬意や感謝があふれているということです。

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ですから、プロ経営者になろうと考えている方が、まだ若いのであれば、まずは「自己認識と自己確立」を目指して、自己効力感を高めながら、目の前の仕事で学びと成長を獲得するべきではないかと考えます。

「他者支援と感謝」のモードに入りつつある20人は、たいへん謙虚に自分のことを語っていましたが、ちゃんと読み込めば、若い時期にどれだけ泥臭く努力をしていたかがわかるはずです。どれだけリスクをとって外に踏み出していったかもわかるはずです。

若いうちから悪い意味で謙虚になって、「待機」せざるを得ない環境も受け入れているようでは「ラッキーな人」にはなれません。まずは貪欲に「自己認識と自己確立」を実行していくこと。それがプロ経営者になる道の第一歩ではないか。私はこのコンテンツを読んで、それを強く感じました。
(2014年 3月1日)

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