[6]ご自身の性格について教えてください。
熱しやすく冷めやすい。最後まで執着心を持ってやりきらないといけない経営者としては、あまり褒められた性格ではないのですが、こればかりは変わらないので(笑)、この性格が表れないように注意はしています。
[7]いつ「経営者になろう」と思われましたか?
最初にもお話ししたように、丸紅からコロンビア大学のビジネススクールへ留学する頃に、強く「経営者になりたい」と思うようになりました。アメリカと違ってプロフェッショナルな社長業を営む存在としての経営者が日本には少ない、という事実も知り、自分がその数少ない1人になろうと決めましたし、これからは日本でもそういう人間が増えていくだろうと感じてもいました。[8]経営者に必要なメンタリティ、スキル、経験とは何でしょう?
必要なメンタリティは「俺がやらなきゃ誰がやる」です。経営者を目指すと言っても「自分にできるのかな」という程度の「思い」ではなれません。「やらなきゃな」「やるんだ」というように、「やる」ことへの強い執着心を備えていなかったら、経営というかなりタフな仕事は務まらないと思っています。
必要なスキル、能力は判断力だと思います。経営者は判断をする役目です。「より成功に近づく確率の高い判断」を毎日、スピーディに下して、なおかつそれを仕事の形にしていく。そういう力は必要ですね。
経験については、正直なところわかりません。何か特定の経験をしたら、どんな会社の経営でもできるようになるかというと、そうではないし、逆に思いもよらない経験が後になって役立つケースも出てくる。ですから、「経営者になるための経験」という考え方に固執せず、画一的ではない多様な経験にチャレンジしていくことが、結果として経営者になるための手助けになっていくのではないかと思います。
また質問にはないですが、人の気持ちになって考えられること、そういうハートも経営者には必要だと思います。人の痛みもわからない人間にリーダーは務まらないのではないでしょうか。[9]他に経営者に必要な資質や能力などありますか?
数字に対する興味。それを一定の水準で読み解く力は持っておいたほうがいいですね。
もう1つ、あらゆることに対する興味。物事に優先順位をつけて実行していく習慣が大切だと思っているのですが、実は「逆もある」ということをサマンサ在職時に感じました。今さら言うまでもなく、サマンサの寺田社長は成功している経営者の1人ですが、その仕事ぶりを見ていると、「物事に優先順位をつけ、効率よく仕事を進めている」ようには見えない場面がありました。
今、私もロゼッタストーンで社長になったわけですが、実際になってみると予想していた以上に「社長がやるべきこと」というのはたくさんある。言い換えれば「社長がしなくていいこと」なんて会社の中には1つもない、とさえ言える。1つひとつに優先順位を振っていくのではなく、とにかくすべてのことに手をつけていくことが、実は経営者にとって大切なのかもしれないな、と最近は考え始めているところです。[10]これらのスキルなどをどこで手に入れたのでしょうか?
いわゆるスキルを手に入れる方法はたくさんあります。本を読んでもいいし、学校に通ってもいい、コンサルティングファームで働いてもいい。しかし、それだけでは手に入らないものが実は重要だったりもします。先ほど言いましたサマンサでの体験もそうです。自分が出会ったもの、とりわけ「自分とは違うな」と思えるものに対して、どこまでポジティブに興味を持ち、吸収しようとするか、という姿勢。好奇心。これが私の場合は子どもの頃から自然に身についていたので、良い方向に作用して、学びを加速させてくれたと考えています。
ですから、皆さんにも自分とは違う考え方や行動パターン、ものの言い方などなどに出会ったら、「違うでしょ」と否定する前に、「なんでそうなるの?」と興味を持ってみることをお薦めしたいですね。「面白い」と感じたら盗んでもいいと思います。そうして日々出会う「異なるもの、存在」を次々に活用できたら、時間を有効に使った学びができると思います。