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プロ経営者インタビュー 株式会社PAPABUBBLE JAPAN 代表取締役社長 CEO 横井 智 氏

プロ経営者インタビュー

横井 智 氏

2003年にスペインのバルセロナで生まれたオシャレで独創的なアートキャンディーショップ、それがパパブブレである。
そして今や世界30都市に店舗を構える同ブランドを日本で展開するPAPABUBBLEJAPANのCEOに、2018年就任したのが横井智氏。
大手メーカーやコンサルティングファーム、そして医療ポータルベンチャーであるエムスリー等々、多彩なキャリアを持つ横井氏だがなぜこの畑違いの領域で経営者となる道を選択したのだろうか?
どんなビジョンや夢がそこにあるのか?
いつもの20の質問を通じて語ってもらった。

横井 智 氏
株式会社PAPABUBBLE JAPAN 代表取締役社長 CEO
https://www.papabubble.jp

1973年、愛知県生まれ。東京大学思想文化学科を卒業後、帝人株式会社に入社。経営への関心を高め戦略コンサルティングファームの米国モニター・グループ(現モニターデロイト)に参画した後、2003年に設立間もないソネット・エムスリー(現エムスリー)に入社。通算14年間の在籍期間中1度はベネッセに転じたものの復帰し、取締役に就任する一方、新規事業の立ち上げ等を担った。そして2018年、PAPABUBBLE JAPANの代表取締役CEOに就任。2017年末に11店舗で展開していたビジネスを17店舗(2020年5月現在)にまで拡大し、さらなる成長を目指している。

[1]自己紹介をお願いします

学生時代の私は、就職について特にこだわりを持っていたわけではありませんでした。「いったんどこかの会社で社会人というものを経験させてもらい、そのうえでもしもアカデミックな道に進みたくなれば、それはそれでありかな」くらいの気持ちです。ですから最初に内定をいただいた帝人にほぼ迷いなく入社し、当初は定時の4時半が来たらまっすぐ帰宅するような社員でした。

でも入社3年目に、計数管理のプロジェクトに関わる仕事を担当して、その面白さから会社の経営というものに興味を持つようになったんです。「もっとダイレクトに経営を学べる職場に行きたい」という気持ちが膨らみ、人材エージェント(キャリアインキュベーション)に相談をしながら外資系戦略コンサルティングファームのモニター・グループへの転職を決めました。

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様々な企業の経営上の課題を解決するコンサルタントの仕事は、非常に面白く、勉強にもなったのですが、約2年が経過する頃には「戦略策定の"お手伝い"ではなく、実際に自分が実行したい」と考えるようになりました。コンサルあるあるです。そして、よりダイレクトに経営を学べるように、経営者のすぐ近くで仕事をさせてもらえる事業会社を探している中で出会ったのがソネット・エムスリー(現エムスリー)です。

ご存知の通りエムスリーは、インターネット等を活用しながら医療関係者をつないでいくという独自性の高いビジネスを展開して今では時価総額2兆を超える成長をしていったわけですが、当時はまだ設立から数年を経たタイミング。大忙しの毎日の中でビジネスモデルの確立を模索し続けるような状況でしたが、とにかく刺激的であり、なにより創業社長である谷村格さんから多くのことを学ばせてもらいました。

ただし、通算すると14年ほどこの会社にはいたものの、もともと教育や文化に興味が強かったこともあり、ベネッセから「全く新しい教育事業を準備しているので参画してほしい」とのご縁をいただいたことから、一度は転職をしました。自分の手で自分の一番興味のある分野で新しいビジネスを創っていく経験に惹かれたわけです。ところが、転職直後にベネッセの経営体制の大きな変更があったため、当初約束されていた事業を始められないことになり、結局はエムスリーに出戻りをさせてもらったんです。

復帰したエムスリーでは、M&Aによって吸収合併した出版事業をベースにエムスリー・パブリッシングの経営を任されたのですが、それは半年で撤退してしまいました。その後、元の医療ポータル事業を任せていただき、約10年の間、広告代理店業×メディア事業のようなビジネスを進めつつ、M&Aにも携わる日々になりました。そんな中、2017年にゲーム事業などを展開するアカツキから社外取締役に就任するお話をいただくことになりました。そして、このアカツキとの出会いはその後のキャリアチェンジに影響した気がします。

エムスリーでは人の生命に関わる医療の仕事をしていましたが、一方のアカツキが扱っているのはモバイルゲーム。世の中にゲームがなくなっても人は生物として生きていけるわけですが、人間として生きていく毎日に彩りを与えるのがこうしたエンターテインメントのビジネス。どちらも社会に必要なのですが、心がワクワクすることを一番大切にして経営をドライブしていくアカツキの方々に共感を覚える自分に気づいたんです。

私は学生時代に哲学を勉強していたこともあり、「遊び」とはなんぞや、という問いに夢中になりました。例えば子ども時代に誰もが親しむ「ごっこ」遊びなどは、自分たちが恣意的に決めたルールで虚構の世界を愉しむもの。「遊び」って、神さまが支配する(?)現実や自然の法則から離れて、人間が創造した想像の世界の中で過ごす時間かな、という考えに至ったんです。

ゲームもその1つだし、アートやお菓子の領域も同じ仲間な気がします。野山にある木の実や果物でも食欲や味覚の欲求はある程度満たされるのに、人はわざわざ手間をかけてお菓子を作り、それを楽しみますよね。自然に存在しないものをうみだすクリエーションによって、ちっぽけな人間が、絶対権力者の神にささやかな抵抗をしていくというアイデアに興味を覚えるようになっていきました。

ともあれ、エムスリーで働きつつ、アカツキの経営にも触れる日々が続く中でも、時おり転職についてのお声がけをいただいていました。その中で、あるファンド企業が買収予定の会社の経営者を探している話を、お世話になっていた方から紹介いただきました。あまり気乗りはしなかったのですが面談にでかけた際、面接官から「何かBtoCのビジネスで興味を感じているものってありますか?」と質問されたので「パパブブレって知っていますか? あそこは面白い」という返答をしたんです。

実は、私はパパブブレの1号店の近所に住んでいて、オープンした頃から面白いなと感心していました。キャンディという市場を選択したこと、またキャンディそのものではなく体験やブランドを提供するビジネスモデルやプライシングなどが秀逸でした。そして何より、職人さんが目の前で魔法のように作ってくれる、美味しくて可愛いキャンディやグミが単純に好きでした。

その面談後、面接官から連絡があり「奇遇ですね。あそこはうちが買収しようとしている会社で......」という展開に(笑)。本当に驚きました。すぐに、パパブブレのオーナーにも会わせてもらったのですが、そこでも意気投合をして、「よかったら後を継いでくれないか」とおっしゃっていただきました。

冷静に考えるとエムスリーを去ることは非常識でしたが、「やってみたら、どうなっていたかなぁ」と死ぬ瞬間に考えている自分が頭に浮かんで、転職を決心しました。上場企業の取締役の責務がありましたから、谷村さん、パパブブレ創業者の菅野さん、投資会社のジャフコの南黒沢さんや小林さんのご理解があってこそ実現できるわがままでした。2018年の6月に正式にパパブブレの社長に就任。現在に至っています。

[2]現在のご自身の役割について教えてください

最初にパパブブレの経営状況を見た時には、いろいろな意味で驚かされました。良い部分で言えば、かつてアカツキでも感じたように、働いている人たちがアルバイトの若いメンバーも含めて皆、会社のファンだということです。パパブブレのキャンディーやサービスが大好きで、そういう愛情から働いているという人ばかりなので、真面目によく働きますし、モチベーションも非常に高い。

一方、「今のところ、ここは"会社"とは言えないな」と感じてしまった部分もありました。組織とか業務のシステムやルールといったものがことごとく確立されていなかったんです。改善すべきところを数え上げていけばいくらでもありました。でも、急いで何もかもを変えてしまうようなアクションはとらないことにしました。あれもこれもと次々に手を加えることで、働くスタッフが肝心のパパブブレへの愛情を損なうことがないよう、事のプライオリティをしっかり見極めながら動くことにしたんです。

ですから当初は2つのことに集中しました。1つはキーエリアへの新規出店。2005年に日本での事業を開始したパパブブレは、2017年には首都圏を中心に11の店舗を構えていたのですが、その独自性や魅力を考慮すれば、しばらくは店舗を増やせば増やした分だけ収益規模を拡大していけると考えました。もちろん、ブランドを引き上げてくれるような立地と出店スピードにはこだわりました。例えば、就任初日はターゲットリストを作って、商業施設に電話をしまくって、パパブブレの魅力を伝えていきました。

同時に2つめのポイントにも力を入れました。それは来店したお客様の目の前でキャンディーを製造する職人さんを育成していくことです。ブランドの向上を意識しながら店舗を増やす戦略をとるからには、その店舗数に見合う数だけ腕の良い職人さんが育っていかなければいけない。そこで、職人さんの採用に力を入れるとともに、キャリアパスの見える化や、ベテランから技術をしっかり学んでいけるメンター制の導入などを実行していったんです。

現在は以上のような施策が一通り進行している段階にあります。そこで、次のプライオリティとして新たなチャレンジを開始しているところです。地味な所では、チョコレート商品のサイズを半分にして売上を2倍にするなど。他には、当初整っていなかった組織上の仕組みや業務上のシステム作りに着手しています。例えば店舗運営や接客については、店長達に話し合わせて、全店舗で共有すべきポイントをマニュアル化。また、新人は必ず青山店に配属して基本ルールで仕事をする癖をつけてから、各店に配属されるようにしているところです。

また店舗数については、2年弱で17店舗にまで増え、20店舗までは計画済です。今後もターゲットエリアに出店する路線は維持しますが、いたずらに数ばかり追いかければ、品質とブランドを毀損しますので、バランスを見ながら進めていくことになります。そこで、キャンディーショップとは異なる新ブランドの買収を進めています。具体的には、東京の世田谷区で約50年にわたり、他店にはない"本物の"バウムクーヘンを作り続けてきた創作菓子のヴィヨンに出資して傘下に入ってもらったところです。ヴィヨンは、ドイツ農業協会が主催する世界最高峰の DLGコンテストにて、全ての出品商品が、200項目に及ぶ審査項目すべてに満点で金賞を獲得。

さらに次回のコンテストでも連続して金賞を獲得しました。そんなヴィヨンには、パパブブレ同様、昔からのファンが多数います。私自身、ここのご主人がお一人で作られているバウムクーヘンを食べた時には、その美味しさに驚かされました。しかし、ご主人も80代になり、その素晴らしい技術がこのままでは絶たれてしまいます。「もったいない。未来の子どもたちにも是非ともこの美味しいお菓子を食べてもらいたい」という一心で「継承者を一緒に育てませんか」とご提案したところ、嬉しいことに共感してくれたんです。

私としては今後も、ヴィヨンのような事例を増やすことで会社としてのパパブブレの経営基盤をより強固にしていこうと考えています。ただし、単なる収益拡大のためのM&Aを進めようとは考えていません。冒頭にもお話をしましたが、世の中は「なくては生きていけないもの」を扱うビジネスもあれば、「なくても死ぬわけではないけれども人を幸せにするもの」を扱うビジネスもあって、後者はそれを愛する人たちによって成立しています。

お菓子はまさにその領域。ですから、今後のM&A施策においても①安全で安心して食べられるもの、②とにかく美味しいもの、③他の人(店)では作れないものを、愛情込めて創出なさっているところと連携していき、パパブブレはそういう理念を持ったお菓子の企業なのだというブランドもまた高めていきたいと考えているところです。

[3]小中学生時代はどんなお子さんだったのでしょう?

小中いずれも田舎の公立の学校に通う、ごく普通の子どもでした。ただ小さい頃は科学者になるのが夢でしたから、小学生の頃から合成繊維を作ったり、発明や特殊相対性理論にはまったり、興味のわくものについては熱心に勉強したほうかな、とは思います。小中高を通じてクラス委員や生徒会長を務めることもない普通の生徒でしたが、そういう役職に立候補する同級生の応援演説をしていたので、リーダーになるよりも、それを支えるプロデューサーのような立場が性に合っていたんだろうと思います。

[4]高校、大学時代はいかがですか? リーダーシップの芽生えのようなものはあったのでしょうか?

高校・大学時代は本の虫でした。とにかく読書が好きで、海外に興味がわけば英語、フランス語、スペイン語などの語学の本を読みましたし、古典文学も読みあさり、マンガにも夢中になっていました。ですからリーダーシップの芽生えのようなものが、学生時代の私に合ったのかと問われれば、なかったとお答えする他ありません。

今ふり返ってみても、ノートと鉛筆一本で仕事をする理論物理学者や哲学者を志していた点、スポーツは水泳やボクシングをしていた点、日頃は読書にはまっていた点などなどを総合すれば、「集団を率いる」ことよりも「1人でできること」を好む人間だったことは明らかです。

[5]ご家族やご親戚に経営者はいらっしゃいますか?

いません。いわゆる普通のサラリーマン家庭でした。ただ、とにかく真面目な両親でしたから、「社会に出て働くということは、真面目に努力を積み重ねることなんだ」というような解釈をしてはいましたし、そういう意味では今の私に通じる影響を受けていました。

[6]ご自身の性格について教えてください

シンプルに、頑張り屋さんというのが私だと思います。

[7]いつ「経営者になろう」と思われましたか?

「経営に関わる仕事って面白いな」と初めて感じたのは、新卒で入社した帝人で、計数管理の仕事をした時です。ビジネス自体の醍醐味を覚え、リアルな経営に触れていく面白さを実感したのはエムスリー時代です。冒頭でお話したように、短期間で撤収を余儀なくされたとはいうものの、エムスリー・パブリッシングという子会社の社長も務めました。苦しい局面ばかりに遭遇していたにもかかわらず、社長の仕事そのものは面白かったし、壁を超える度に視界がパッと開けていくような感覚を味わうことができたんです。

何より、どんな下手くそでも結果を出さなければいけない、逆にいえば結果を出せばよい、約束を果たせばよいという学びは貴重でした。実際に社長業をやってみて思ったんです。「別にコミュニケーション能力に長けた社交家ではなくても、あるいは人を惹きつけるカリスマ性の持ち主ではなくても、経営の仕事では役割を果たしていくことができる」かもしれないのだと。

パパブブレの魅力に惹かれ、嬉しい偶然も重なって社長就任というお話をいただいた時も「社長をやらせてくれないとイヤだ」とまで思ったりはしなかったのですが、当時のオーナーからごく自然に「社長をしてください」と言われた時、すんなり当たり前のこととして受け入れていました。努力しか武器にならなくてもやれるという自信と、やっぱり携わるのであれば、経営のすべてを任されたい、という気持ちがあったのだと思います。

[8]経営者に必要なメンタリティ、スキル、経験とは何でしょう?

何が正解かはわかりませんが、私自身がチャレンジしているのは、理性と感情のバランスを常に気にしながら、使い分けるということです。

そもそもプロフェッショナルな経営者というのは、その会社が目指すゴールを達成するのが使命。経営者個人の気持ち良さなんてものは関係ないと思うのです。プロの経営者が日々の判断で意識すべきは「ゴールに近づくのか遠のくか」なのですから、望ましい仮説や思い込み、そして虚栄心をグッとこらえて、solidなファクトと冷静な分析の上で、理性的に意思決定していくべきです。

一方で、正しいからといって人は首を縦に振るとは限りませんし、感情で語らないと動きません。
理性でひとの話に耳を傾け事実を見極め、感情でひとにするべきことを熱心に伝える。それが経営者にとって必要なスキルのひとつかと考えています。

[9]他に経営者に必要な資質や能力などありますか?

2つめの質問でお答えしたように、私は自身のミッションにプライオリティをつけて動くことを重視しています。「今この時点で真っ先に手を入れるべきことは何なのか」を見極めつつ、「何をゴールだと設定するのか」を明確にしながらブレずに徹していく。プライオリティの1番と、ゴールとを、誰にでもわかるように定量化していくことが経営者には必要な能力だと考えています。

また、人を"動かす"のではなく、(本人は意識することなく)人が"動く"仕組みを作るセンスがあれば大きいです。

[10]これらのスキルなどをどこで手に入れたのでしょうか?

帝人でもモニター・グループでも、それぞれたくさんのことを学びましたが、やはりビジネスの本質や経営につながる部分を本当の意味で徹底的に学んだのはエムスリーにいた時代です。
ちなみに、社長である谷村さんから学んだ最大の収穫は「ウソはつくな」という教え。他人に嘘はつかないのはもちろん、心地好い嘘で自分を欺かない。経営とは事実を見て営むものだということです。

また当時の担当取締役だった西さんという先輩からは「"正しい"に徹する」ことの大きさを学びました。エムスリーの事業は医療の領域ですから、正しくないビジネスをしてしまえば、人々の健康に甚大な影響を及ぼします。あるとき、お客様企業との間でトラブルが発生し、お客様の要望を飲めなければ収益的に大打撃になる事態となったのですが、そのお客様が突きつけてきたコンプライアンスに問題がある要望を、西さんは事も無げに突っぱねてしまったんです。

「たしかに不道徳だとは思うけれども、なんとかグレーゾーンで妥協して収束を」という判断をしてもおかしくない場面だったのに、西さんには一点の迷いもありませんでした。「いいんだよ。売上がゼロになっても正しい事をしていれば、絶対やり直せる。これが正しい判断なんだ」と言い切った西さんは、結局この一件をきっかけにエムスリーの評価と売上を上げてしまいました。

ウソはつかず、正しさにこだわって、筋を通す。その大切さをエムスリーで学べたから、今も妥協しそうになる局面で勇気をもらえている気がします。

[11]業界のプロとしての知見はいかがでしょう? やはり必要だとお考えですか?

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ポジションと業界次第だと思います。もちろんリーダーを務める以上、いつまでも業界知見を習得しないでいるわけにはいきませんが、幸いなことに私はモニター・グループ時代、コンサルタントとして常に未知の業界や企業と向き合い、必要最低限の知見を猛スピードでキャッチアップしていく訓練をしてきました。ですから、ほぼ未経験のBtoC事業、お菓子業界にも、特に動じることなく馴染んでいくことができました。

また、既に現場が存在する企業の経営者に限っていえば、そのレイヤーに求められる業界知見は参画してからのキャッチアップで対応できると考えています。ただし、長年最前線にいて経験を積んでいかなければ手に入らない知見というのは、どんな産業にも必ずあります。これについては、そこにいるエキスパートを尊重する姿勢をもって接していくことが不可欠だと思います。良い相談役、耳を傾ける相手がいることは重要です。

[12]過去に体験した最大の試練やストレッチされたご経験について教えてください

最大の試練は、先ほどお話したエムスリー時代のトラブルでした。西さんという頼もしい先輩がいてくれたことで、結果は上々だったわけですが、トラブル発生時にはその影響が大きかったこともあり、経営陣が騒然とする場面だったんです。

私もまた大慌てしていたのですが、実は同時に他人事のように「なんだかドラマみたいな事件が起きちゃったなあ」と淡々と捉えている自分にも気づいていました。昔から、困窮が極まった場面ではまるで幽体離脱でもして、自分のことをマンガの登場人物を見下ろしているかのように、客観視してしまう傾向があり(笑)、それが決して悪いことではないんだと確認するきっかけにもなりました。

[13]経営者を志す者には、どのような努力や学びが必要でしょうか?

経営を行っていく上では、事業や市場、競合や自社のツボを本質的に理解することが力になると考えています。

そのために必要な努力は、私自身がまだ学習中の身の上なのですが、「目の前にある課題と真摯に向き合う」ことです。「真摯」とか「真面目」といった言葉にすると、抽象的ですが、要するに表層的な理解だけでわかったつもりにならず、また「わからない」と逃げて曖昧にしない努力のことです。

腹落ちするまで、少なくとも3回以上は「なぜ?」「それは本当?」「それはどういう意味?」「そもそも・・」と問い続ける努力をすることです。
たとえば夏はキャンディが売れないという課題が上がってくる。売れないからしょうがないではなく、何故売れないのか?本当に売れていないのか?そもそも何故お客様はキャンディを買うのか・・。真摯に向き合っても課題は解決されないことがあるかもしれませんが、将来につながる理解・知見を得ることができます。経営者は常にこの努力、粘りを怠ってはいけない気がします。

ちなみに、この課題に向き合った結果、昨年の夏は「チョコミント商品」と「氷キャンディ」で業績を伸ばすことができました。
「課題」を「問題を抱えたスタッフ」に置き換えても同じことがいえるかもしれません。

[14]今までに影響を受けた先輩や師匠といえるかたはいらっしゃいますか?

多くのかたから影響を受けてきましたが、やはり先ほどお伝えした通り、エムスリー時代に出会った谷村さんと西さんの存在が、非常に大きいです。

[15]キャリアの成功とは「計画的に努力して成し遂げるもの」でしょうか? それとも、「偶然や人との出会いなど、運が影響するもの」だとお思いですか?

人それぞれかとは思いますが、私は後者の運や偶然に恵まれた人間だと自認しています。ただし、日々を漫然とすごしていたら、きっと良い運や偶然には巡り逢えなかった気がします。少なくとも目の前に好機が訪れた時、その事実に気づくためにも「成長したい」という願望を強く抱き続け、ある程度の計画も秘めていなければ、せっかくの運を掴むことはできないと思います。

[16]なぜ起業ではなかったのでしょうか?

空想レベルで良いのなら、何度も起業するイメージを頭に描いていました(笑)。帝人にいた時代にも、Amazonのようなビジネスを自分も興して......というように、かなりリアルなビジネスプランまで空想をしていました。ただ、そういうプランを形にするために本気で動いた経験は一度もありません。理由はおそらく、私が常に目の前にあるミッションにどっぷりつかっていくスタイルで働いてきたからではないかと思います。

[17]特別な信条やモットー、哲学などをお持ちですか?

座右の銘というほどではありませんが、「人間万事塞翁が馬」という言葉は昔から好きです。その人間にとって何が幸福で何が不幸なのか、何が成功で何が失敗なのかはわからないものなのだから、安直に一喜一憂するな、という教えですよね。ここまでお話をしてきた通り、目の前にあるミッションや、設定したゴールに近づいていくのがプロフェッショナルだと思っています。今日の結果は、明日のスタートラインでしかない。一喜一憂せずに、ゼロベースで明日の一手に向き合いたい。ですので、この言葉がぴたりとはまるんです。

[18]経営者となった今、何を成し遂げたいとお考えでしょうか?

最初にお伝えしたように、私はファンド企業とのお約束を果たすためにプロ経営者として社長に就任した経緯があります。現状、順調にビジネスは前進しているものの、まだ約束を果たせていません。経営者としての私がまず成し遂げるべきミッションは、このファンド会社との約束を果たすことだと考えています。

[19]現在のポジションを去る時、どういう経営者として記憶されたいですか?

やっぱり「もう少しここにいてほしい」とスタッフに思ってもらえたら嬉しいです。でも大切なのは、もしも私が去ることになった時、皆がそれでも安心してこのパパブブレで楽しく働ける、と思える状態にしておくこと。それが経営者の使命ですから。

[20]20代、30代のビジネスパーソンにメッセージをお願いします

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間違っていたとしても、今この瞬間、自身が目指していることを信じて一所懸命になれたら素敵ですよね。以前どこかで聞いた、有名な方の言葉だったと思いますが「(世間の評価ではなく)自分自身が成功したと思えることこそが、成功というものなのだ」をメッセージとして伝えたいです。

例えば会社を成長させて、1兆円企業にまで大きくすることを成功だと思えるのであれば、そのゴールに向かって奮闘することは素晴らしいと思います。一方で小さな会社であっても、こつこつと好きな世界で自分の役割を全うできていることを「成功」「幸せ」と感じて、そのために努力することも同じようにすごいです。

プロ経営者を志している場合、「経営者になること自体が幸せ」「それよりも、〇〇というビジョンへのチャレンジが幸せ」「お金持ちになることが成功」という成功や幸せのラインを引いてみてはいかがでしょう?それができたなら、自分を信じて、悔いのないチャレンジをしてほしいと思います。

自分にウソをついたら後悔します。容易ではないかもしれませんが、「人間万事塞翁が馬」です。私自身もまだもがいている最中ですけれども、他でもない自身が納得できる成功や幸福、そしてその結果誰かが幸せを感じられるのを大切にしたいですよね。

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