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プロ経営者インタビュー

小出 斉 氏

[12]過去に体験した最大の試練やストレッチされたご経験について教えてください

冒頭の自己紹介のところでもお話をしましたが、私にとっての最大の試練といえば、やはり三菱重工にいた時代の終わり頃。サウジアラビアの石油化学プラントで仕事をしていた時をすぐに思い出します。当時の私はビジネスマネージャーという肩書きで、サウジアラビア西海岸で始まった数千億円規模の国家プロジェクトの重要な部分を三菱重工が受注しており、プロジェクトマネージャーの右腕として大変重要な任務を任されていました。

「誰かがやらなければいけない仕事」というのが無数に発生していて、「エンジニアでなければできない仕事」以外のすべては、私の責任の範疇だったんです。我々日本人の常識から見れば禁欲的なイスラム教国、しかも都会から遠く離れた場所に長期に渡って駐在していましたので、息抜きをする場さえほとんどありませんでした。

もう1つの試練はコンサルタント時代です。私は、やるとなったらとことん細部に至るところまでやり抜きたい気性の持ち主なのですが、コンサルタントというのはクライアント企業の望みを叶えるためにひたすら応えていく仕事です。夢中になって取り組んでいたら、それこそキリがなくなってしまい、常にストレスと闘う日々でした。

こうした前職、前々職での試練を経て私が得た最大の収穫はといえば、非常にシンプルな力。つらいことをつらいと思わなくなった、ということです。こうした単純明快なる「強さ」は、私にとって武器になっていきました。

もちろん、今も試練の時だと受け止めています。電子書籍業界は、IT産業の1つであり、デバイスもソフトウエアもコンテンツも、劇的に進化と変化をしていく市場です。ですから、今の私のテーマは「早く決断する」ということ。ここの部分でもっともっとストレッチをしていかなければいけないな、と自らに言い聞かせているところです。

[13]経営者を志す者には、どのような努力や学びが必要でしょうか?

こればかりは、その人の状況や能力などの条件次第で大きく違ってきます。ただ、メッセージとして贈るのならば、常に「自分に欠けているもの」というのを認識できるようにすることが肝要だと思います。その時、その時によって「欠けているもの」は違ってくるでしょうから、即座にこれを認識できれば、効率よく納得しながら自分を高めていくことが可能になります。

では、どうすれば「欠けているもの」を見つけられるかというと、一歩引いてゴールに照らして周りや自分を客観的に捉える視点を持つこと。これさえできれば、迷うことなく自分なりの努力や学びを継続していけるはずです。

[14]今までに影響を受けた先輩や師匠といえるかたはいらっしゃいますか?

もちろん、これまでに出会った数多くの先輩方から学ばせてもらいました。その一方で、本から学ぶことも少なくありませんでした。稲盛和夫さんや藤田田さんなどの偉大な経営者が書かれた本から刺激や教訓をもらいましたし、司馬遼太郎さんの歴史小説などからも、様々な気づきをいただきました。

イーブックの社長だから読書家なのだ、と言いたいところではありますが(笑)、もしも言ったら社員たちに笑われてしまいます。彼らは筋金入りの読書のプロですから、彼らに比べれば私の読書量など知れたもの。ただ、経営者を目指すかたがたには、本からも学ぶことは多いし、良い影響を受けることもしばしばあるということは伝えておきたいと思います。

[15]キャリアの成功とは「計画的に努力して成し遂げるもの」でしょうか?

それとも、「偶然や人との出会いなど、運が影響するもの」だとお思いですか?

努力や計画は必要条件だと思います。努力し続けていなければ、成功というものには近づけません。ただし、十分条件というわけではない。努力さえすれば、それだけで誰でも必ず成功するかというと、そうはいかない。偶然の出会いや幸運というものが加わって初めてチャンスが生まれてくる。そして、そのチャンスをつかみ取れるのは、それまで努力を続けて力を養ってきた者だけ。だから結局、努力し続けるしかない。私はそのように考えています。

[16]なぜ起業ではなかったのでしょうか?

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私の場合、起業家になってもよかったし、プロ経営者として今のように歩んでいってもよかった......つまりどちらでも構わない人間だったんじゃないかと思っています。起業する可能性を排除したこともありません。実はバークレー校に通っていた時期に、ビジネスプランコンペティションというのがあって、そこに新しいビジネスモデルの提案を出して応募したこともあったんです。当時の私に自信や思い切りがあれば、起業をしていたかもしれないんです。

それに、私は「経営をするということは、起業をしている要素も大いにある」と考えてもいます。イーブックが変化の激しい領域のビジネスだから、なおのこと強く感じるのかも知れませんが、業種を問わず、会社を経営していけば、常に新しい事への挑戦がついてまわります。既存企業の経営をすることと、起業をすることとを必要以上に「異なるもの」として分けて考える必要はない、というのが私の考え方です。

[17]特別な信条やモットー、哲学などをお持ちですか?

「我以外皆我師」です。吉川英治さんがお書きになった『宮本武蔵』に登場してくる言葉なのですが、読んで字の如く「自分以外のすべての人から学ぶことはできるのだ」という意味の言葉です。

実はA.T.カーニー在籍時に、尊敬していた先輩のオフィスに色紙が飾られていて、そこにこの言葉が書かれていたんです。私にはそもそもつまみ食い的な気質があって、若い頃から周囲にいるいろいろな人たちから少しずつ学び取っていく生き方をしていたので、「我以外皆我師」の言葉に出会った時、「これだ。これが自分の信条を示す最適な言葉だ」と感じたわけです。もちろん今も「我以外皆我師」で、学んでいます。

[18]経営者となった今、何を成し遂げたいとお考えでしょうか?

イーブックを成功させたい、電子書籍というビジネスを成功させたい、という想いはもちろん強く持っています。しかし、それ以上に出版という素晴らしい文化の価値を未来に向けて保ち、向上させていきたいと望んでいます。

時代に関係なく「本を読む」という行為の多くは、余暇時間に行われてきました。現代ではこの余暇時間に手軽に楽しめるものが本以外にも豊富にあります。テレビ、インターネット、ゲーム、YouTubeなどなど。これらは皆、限られた余暇時間の争奪戦を繰り広げるライバルなのかもしれません。けれども、本には独特の性質と価値があります。

たとえば長期に渡って人の心に染みていくのは、今の時代であってもテレビやネットではなく書籍なのではないか、と思うのです。書籍は、それが電子書籍であろうと紙の本であろうと、読む人のペースで物語が動きます。つまりページをめくるスピードを自分で決めることができる特性を本は持っています。

テレビやネット上の動画の場合は与える側のスピードに従うのが基本であり、簡単に止まったり、前のページに戻ってみたり、というようにスピードを調節できるのは本が最も得意とするところ。そうして深く入り込むことで心に染みこませていけるから、本に書かれている言葉や物語がいつまでも読んだ人の心に留まるのだと思うのです。

ですから、きっと読書という行為がなくなることはないでしょうし、いたずらに余暇時間争奪戦を他のコンテンツを相手に繰り広げるというよりは、本だけが持つ素晴らしさを伝えていけるようなアクションを起こしていきたいと思っています。

日本の出版には多様性を尊重する素晴らしい仕組みがあります。電子書籍という新しいアプローチを通して、そうして生まれた出版物をあらためて世の中の皆さんにお届けできるのなら、こんなに素晴らしいことはないし、これから生まれてくる価値ある読み物も含めて、出版界を盛り上げていくことができたら最高だな、と思っています。

[19]現在のポジションを去る時、どういう経営者として記憶されたいですか?

私が尊敬する経営者の一人にヤマト運輸の小倉昌男さんがいます。運輸、物流という領域で、画期的な変革を起こし、業界のみならず社会のあり方を大きく変えた方です。できることなら、私も小倉さんのように「書籍の世界、出版界に変革をもたらした」と言われたい。そう本気で願っていますし、実現できるように努力しなければと考えています。

[20]20代、30代のビジネスパーソンにメッセージをお願いします

人生は一度きり。今日死んでも後悔のないように、今を精一杯生き、覚悟を持って意思決定していってほしい。それが私からのメッセージです。実はこの会社に入ってから、私は交通事故に遭い、丸1日意識不明に陥ったことがあるんです。目を覚ました時、痛感したのが「人生は一度きりなんだ」という想いでした。

スティーブ・ジョブスさんが同じことを言っていたのですが、それがより骨身に染みました。私は瀬戸際を経験して初めて気づいたわけですが、若い皆さんにはぜひ早いうちから、こうした覚悟を持って生きて欲しいと願っています。本気で思いきることができれば、どんな望みも叶えられるはずだと信じています。

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