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画像:新井 健資 氏

プロ経営者インタビュー

新井 健資 氏

若くして政治の道を志したものの夢破れた経験を持つ新井健資氏は、企業経営に携わる新たな夢に向かい、ベイン・アンド・カンパニー、リクルートで活躍。
その後、業績停滞に悩んでいた中古住宅再生事業のカチタスに身を転じ、代表取締役社長として同社のV字回復に取り組んでいる。
独特のキャリア・パスを歩んできた新井氏は、なぜ経営者を目指すに至ったのか?
どのような姿勢でカチタスの復活を成し遂げたのか?
これからプロ経営者を目指す者にどんなメッセージを持っているのか?
さまざまな質問に誠実な言葉で答えてくれた。

新井 健資 氏
株式会社カチタス 代表取締役社長
http://katitas.jp

1968年、東京都生まれ。東京大学法学部を卒業後、三和銀行(現 東京三菱UFJ銀行)入行。3年間の在籍後に退職し、28歳の若さで都議会議員選挙に出馬したものの落選。その後、ベイン・アンド・カンパニーに入社し、約4年間コンサルタントとして従事した後、コロンビア大学ビジネススクールにてMBA取得。帰国後の2004年よりリクルートにて住宅関連事業を担い、新規事業部門ゼネラルマネジャー、営業部長等を歴任後、2012年退職。同年、やすらぎ(現 カチタス)に入社。1ヵ月の後、代表取締役社長に就任した。

[1]自己紹介をお願いします。

私は高校生の頃から政治家になろうと決めていました。しかし、日本では被選挙権を得るのが衆議院議員ならば25歳、参議院議員ならば30歳と規定されています。大学を卒業しても数年の間がある。そこで就職活動では「良い政治家となるための修行期間」のつもりで活動先を選択していきました。結局、経済を学ぶために最適だと考えた金融機関を中心に応募していき、三和銀行に入行することができたんです。27歳で選挙に出馬できる機会を得たため(選挙出馬時は28歳)、在籍していたのは約3年間だけですが、よい経験をさせてもらったと感謝しています。

残念ながら選挙には敗れました。悔しい思いをしましたが、国会議員の秘書になって再起を志すことにしました。私がお世話になった古川元久議員は財務省出身だったこともあり、多くの経済界の要人が頻繁に訪れていましたが、そこで痛感したのは「自分はビジネスのことを全然わかっていない」ということです。政治家になれるかどうか以前の問題として、「このままではいけない」という焦燥感にかられ、再度、ビジネスの世界で自分を鍛え直す決意を固めました。

当初は経験のある金融業界を中心に転職活動をしましたが、すでに20代後半。3年間の都銀経験はあったものの、きちんとした専門性を身に付けるには至っていなかったため、スペシャリストを望む転職市場では苦戦しました。そんな中、コンサルティングファームを薦めてくれる声もあって、受けることにしたのがベイン・アンド・カンパニー(以下、ベイン)だったのです。

それまで国内の企業をまわっていると、過去に選挙活動をしたことに対してネガティブな反応しかなかったのですが、ベインは違いました。むしろ「若いのに素晴らしい」とプラス評価してくれたのです。採用が決まり、3年と10ヵ月、非常に有意義な日々をすごしました。

もちろん、ビジネスに関する知識等の不足というハンディを埋めていくため、必死で勉強をする必要もありましたが、お客様である企業経営陣やベインのパートナー、とりわけ白石章二さん(現ジー・ストラテジック・ビジョン代表取締役)や火浦俊彦さん(現ベイン日本代表、マネージングディレクター)から多くのことを学びました。「何の仕事をするのか」は、もちろん重要な事柄ですが、「誰と仕事をするのか」もまた非常に大切なのだということを感じ取り、なおかつ経営という役割が持つ魅力にとりつかれたのです。

その後、「これまでに学んできたことを再整理統合したい」という願望が強まり、ベインを退職してビジネススクールへ行き、その先のキャリアを再度見つめ直そうと考えました。そしてこの時にも、白石さんや火浦さん、そして古川議員が背中を押してくれました。すでに30代半ばになっていましたから、「今さら留学しても遅すぎるのではないか」という不安もありましたけれど、やはり留学してよかったと思っています。コロンビア大学ビジネススクールで、具体性のある勉強をすることができたことは、自信にもつながりました。

MBAを取得して帰国した後は、コンサルティングとは違う場で経営に近づいていく道を模索しました。実を言うと、あるファンド会社から話をもらい、ほぼ決まりかけていたタイミングだったのですけれども、リクルートから声がかかり「必ず新規事業を任せる」という言葉に魅せられて入社を決めた経緯があります。私の頭の中では「将来経営者になるためには、まだ経験が必要だ」という気持ちと、「それならば事業会社で新規事業を担うか、もしくは経営の再生に携わるか、どちらかがいい」という考えがあったんです。

入社をすると、約束通り新規事業を開発・確立するミッションを得ました。当時からリクルートは住宅関連分野のメディア事業に成功していたのですが、そのカウンタービジネス的なものでも何とか成功をおさめたい、という意向を強く持っていました。そこで私は、社内であがっていた「お客様に直接会って、住宅に関するコンサルティングサービスを行いながら要望を抽出し、最適な住宅を提案していく」という事業アイデアに着目しました。そして、具体的なビジネスの形にしていくチャレンジに着手したい、と名乗り出たのです。

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私がプロジェクトリーダーとなり、2名のメンバーを伴って開始したチャレンジは、市場調査の段階から始まるようなものでしたが、短期間でビジネスモデルを確立し、成長軌道に乗せるところまで進めることが出来ました。大きな達成感を得ました。

ところが、この事業が軌道に乗ると、私は総合企画室的な部門に配属され、社内コンサル的ポジションに立たされたことから、一度はモチベーションを失いました。その後、住宅事業領域の中で、営業部門のマネジャーを任されることになったものの、花形のマンション事業ではなく、外様だった注文住宅事業の営業マネジャーに任じられました。もしもこの時に心が折れていたら、その先の私はなかったと思っています。しかし、当時の私は「こうなったら、いつか営業マネジメントのトップになってやる」という気持ちで奮い立ちました。正直なところ、「このまま転職活動をしてもいいところには行けない。もっとはっきりした実績を作ってから出て行くぞ」くらいの気持ちもあって(笑)、それで発奮したわけです。

変な話ですが、この時からの踏ん張りが、私にとっては非常に大きな体験となりました。外様だった注文住宅の営業を急成長させ、就任1年で部長に昇進し、メンバーの数も当初の20名弱から100名以上へと増えていきました。誤解のないように言っておきますが、リクルートは非常に良い企業だと今も思っています。特に若い人にとっては総合力を培うことができ、やる気ある者にチャンスを与え、実績をフェアに評価してくれる数少ない日本企業です。ベインとリクルートの2つの企業に恵まれなければ、今の私はあり得なかったと心から思っています。

ともあれ、実績も積み上げたことからヘッドハンターからも有望なベンチャー企業の経営陣となるような話が来るようになりました。その中に、株式会社やすらぎ、現在のカチタスへ社長就任前提で参画する話もあったのです。決して華々しい知名度のある企業ではなかったものの、可能性を感じ、このお話に乗る形で私はこの会社に来たのです。

[2]現在のご自身の役割について教えてください

中古住宅を買い取り、付加価値をつけて再生し、販売していく。それがカチタスのコア事業です。この領域では常に上位の実績を誇ってもいたのですが、私が来た当時は数年にわたって売上が下降していました。すなわち、社長就任前提で私が招かれた背景には、この状況を回復させるミッションが伴っていたんです。

苦境から脱出し、第2の成長軌道に乗せるために外部から経営者を招くことにしたわけですから、入社早々から私の役割は「V字回復の実現」と決まっていました。競売市場をベースとする既存の手法を根本から変えるなど、かなり思い切った改革を打ってきた結果、嬉しいことに売上の下降には歯止めをかけることができました。ですから、ここからは攻めの姿勢。売上を上昇させ本格的な第2創業期を迎えることが私の使命になっています。

[3]小中学生時代はどんなお子さんだったのでしょう?

勉強もスポーツもそこそこできた方でしたし、級長をやらされたりもしましたが、もともと私は目立つことを好まない子どもだったので(笑)、そんなに存在感のある子ではなかったんじゃないかと思っています。ただ、家の事情でかなり転校を経験しましたので、おかげで新しい環境に早く順応するような力は備わっていったと思います。

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