「プロ経営者」になる。〜経営者インタビュー〜

画像:西口 一希 氏

西口 一希 氏

ロクシタンは1976年に南仏で誕生。 プロヴァンス地方で採取された植物を主原料とする製品群で支持を受け、世界90ヵ国以上で販売されるに至ったグローバル・コスメティックブランドだ。
グループの総売上が約1600億円(2015年決算時)に達する今も前年比約10%の伸びを示し、1998年設立の日本法人・ロクシタンジャポンは、 本国フランスやアメリカを超える伸び率を示している。そして2015年4月、さらなる成長の担い手として西口一希氏が代表取締役社長に就任した。
P&Gおよびロート製薬においてマーケティング分野を担い、実績を築いてきた西口氏は、今後ロクシタンジャポンでいかなる成長戦略を実行していくのか?経営者としてどのような発想・思想を体現していくのだろうか?
いつもの20の質問を通じて、話を聞かせてもらった。

西口 一希 氏
ロクシタンジャポン株式会社
代表取締役社長
http://jp.loccitane.com/

1967年、兵庫県生まれ。大阪大学経済学部卒業後、P&Gジャパンのマーケティング本部に入社。約17年間の在籍中、ブランドマネージャー、マーケティングディレクターとしてパンパース、パンテーン、ヴィダルサスーン、ヴィックス、プリングルズ等のブランドマネジメントを担当。日本初のECRプログラム導入のマーケティング担当や、日本と韓国におけるショッパーマーケティング部門の創設にも携わった。2006年、ロート製薬に入社し、執行役員マーケティング副本部長を経て本部長に。肌ラボ、OXY、オバジ、50の恵、デオウや、メンソレータムブランド、ロート目薬ブランド等、ブランドマーケティングを担当。2015年4月、ロクシタンジャポンの代表取締役社長に就任。

[1]自己紹介をお願いします

私が大学卒業後の就職先としてP&Gを選んだ理由は2つあります。1つは、他の企業に比べて研鑽を積んでいけそうな会社だったから。そしてもう1つの理由は実は単純に「本社が神戸にあったから」です。兵庫県の片田舎で育った私にとっては神戸で働くこと、そして地元の兵庫から離れずに生きていくことが、とても大切な夢だったんです。

P&Gが高度なマーケティング戦略を世界で実行していることは、すでに当時から知る人ぞ知る事実だったのですが、P&Gジャパンは、まさに取り扱いブランドを急速に拡大していく時期。幅広い製品ブランドを担当し、得難い経験を重ねていくことができました。

私の経歴だけを見たかたの多くは、順調にキャリアを伸ばしていったかのように誤解するのですが、失敗もたくさんしました。ヘアケアの新ブランドの導入などでは、本当に痛恨の失敗もしています。しかし、それらの失敗体験も、私にとっては価値ある勉強だったのだと思っていましたから、苦しい時期ではありましたが「この会社を辞めたい」というような気持ちは一度も抱きませんでした。

しかし、キャリアを伸ばしていこうとすれば一定のタイミングで考えなければいけない時期が来ます。私の場合も、ブランドマネージャーからディレクターへ昇格し、その職務を長く続けていたものの、「その次のポジション」に就いて、もう一段スケールの大きい仕事を得ようとすれば、どうしても海外での実績を問われることになります。

冒頭でお話をしたように、私は地元に対する強い愛着を持っていましたので、離れたくはありませんでした。そのため、別の選択肢として転職を考えるようになったのです。

ヘッドハンターからいくつかお話をいただいた中に、ロート製薬がありました。前職のP&Gがまさしく外資系企業そのものだったのに対し、ロート製薬は日本発のオーナー企業です。価値観や社風、意思決定のプロセスなどもまったく違うことは推測できましたが、独自のマーケティングで高い成果を上げており、マーケターとして魅力を感じていた企業でした。

しかも本社は大阪です。地元にこだわる私としても、この会社でマーケティングに携われるならば、という気持ちになり、転職を決めました。

実際に入社してみると、推測していた以上の「違い」が待っていました。社長である山田さん(山田邦雄氏。現会長)と一緒にマーケティングや経営に関わるテーマで話し合えるポジションをいただいたものの、社長は高水準のロジックだけでは説明のつかないような直感型のアイデアやデシジョンをされます。

それが高確率で当たるんです。しかも決断が速いので、大企業であるにもかかわらず、ベンチャー企業並みのスピード感でビジネスが進んでいく。当初はただただ驚いていました。

世間的な論調だと「外資系育ちのロジカル人材は、オーナー企業の感性の経営についていけなくなる」かのように言われがちですが、私は正直、面白くてしかたありませんでした。P&Gではめぐり逢えなかった「謎の世界」に魅入られていたんです。

ブランドマーケティングという領域について、P&Gでの経験が私に自信をくれましたが、ロート製薬での日々は、私に商売の原点というものを教えてくれたと、そう思っています。「お客様をいかにして喜ばせ、驚かせ、商品を買っていただくか」を追求するのは、どちらも同じですが、プロセスがまったく違っていました。だからこそ、前職にはない勉強をすることができたんです。

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ですから、P&Gの時と同様に、ロート製薬もまた私にとっては離れがたい会社だったのです。それでも転職を決意した背景には、私なりのやり方で企業経営をしてみたいという思いが強くなったことがあります。

直感や感性から導き出されるものを、どうにかして形式知に変換することで全社員と「なぜこれがいいのか。これをやるべきなのか」を共有していくようなチャレンジをしてみたくなった。それならば山田社長の懐から離れて、自ら挑戦していくしかない、と決断したんです。

ありがたいことに、以上のような気持ちになっていたタイミングで、ロクシタンジャポンから経営者にならないか、というお話をいただきました。

ロクシタンは、私のお気に入りのブランドでした。製品の素晴らしさのみならず、店頭ブランディング等での独自性にも目を見張り、10年以上ベンチマーキングしていたほどです。そのグローバル・ブランドの経営を日本でやれるというのですから、喜んでお引き受けしました。

ロクシタンは日本で化粧品メーカーが展開するショッパー戦略やブランディング戦略とは、上陸時から一線を画してきました。

PRにセレブを登用して店頭ではコスメカウンターを軸にした接客をするのが既存のやり方だったのに対し、ロクシタンはオーガニックな製品を通じて得られる生活スタイルを発信し、店頭でも販売員が自由に動いて接客をしていくスタイルをとっていたんです。

コスメ業界よりも、むしろインテリア業界に近い「ライフスタイルの提供」を行って、成果に結びつけてきたわけです。カッチリとしたビジネス上のロジックをおさえつつ、同時に直感に訴えかけていく部分も大切にする。そういう経営をここでなら実践していける、と確信して社長に就任したのです。

ちなみに、「地元で働く」ことにこだわり続けてきた私ですが、ロート製薬での仕事の幅が広がる中で、平日は東京で働き、週末は神戸に帰ってくる、という生活スタイルを経験する機会がありました。そして「これでも十分満足なライフスタイルをキープできる」と実感していたので、ロクシタンジャポンのオフィスが東京にあることについては、特に問題だとは感じなくなっていました。ですから今も週末は神戸に帰って家族とすごしています。

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