「プロ経営者」になる。〜経営者インタビュー〜

岡本 浩一郎 氏

[5]ご家族やご親戚に経営者はいらっしゃいますか?

いません。父はずっとサラリーマンでした。ですから、「経営者である誰かに刺激を受ける」というような経験は持ち合わせていませんでした。ただ、サラリーマンだった父は、昔から仕事で海外への赴任が長かったので、私が海外留学に憧れるようになったきっかけの一端は親の影響だったのだろうと思っています。

[6]ご自身の性格について教えてください。

自分で言うのもなんですが、真面目な方だと思っています。「自分が信じることに向き合っていたい」という思いがいつも心の中にあり、そう思えるものや人と出会った時には、そこに気持ちが一気に集中していきます。子どもの頃のコンピュータへのこだわりもそうでしたし、社会人になってから大きな節目を迎えていく時にも、「信じられるもの」との出会いが必ず関わってきたような気がします。器用な人間ではないのですが、「これだ」と思ったものには周囲もあきれるくらいに没頭していく。そういう性格だと自分では思っています。

周りからは、「マメだね」と言われることが多い気がします。主流派ではないので(笑)、率先して仕切っていこうとする気質ではないものの、取りまとめ役のようなものを誰もやろうとしない場合などには、引き受けることも少なくありません。たとえば、BCG時代の同僚と毎年集まる機会があるのですが、その同窓会的な集まりを取りまとめていく役目も、いつの間にか私が引き受けるようになっていました。やる、となれば生真面目な性分ですから細かに準備をします。その結果、「岡本はマメだ」と言われるわけです(笑)。

[7]いつ「経営者になろう」と思われましたか?

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本当に強い気持ちで「俺がやる」と心に決めたのは、弥生の社長に就任する時だったかもしれません。とはいえ、たとえばNRI時代には海外のベンチャー企業と協業する案件も多かったので、香港やカナダのベンチャー企業で忙しく働く人たちを見て、「楽しそうだな」「自分で会社を立ち上げたり、その経営をしていく、という生き方というのもあるんだな」と感じ入ったりはしました。UCLAに留学した際には、もともとアントレプレナーシップで名高いビジネススクールだったこともあって、同級生の多くが強烈な独立志向の持ち主でした。やはり、この経験でも大いに刺激されました。

その後、自分でリアルソリューションズを立ち上げ、その経営も行うようになったわけですけれど、先ほど申し上げたように「経営者になる」ことを目的に据えて行動したのかというと、そうではなかった。ですから、これまでのキャリアを通じて、さまざまな人と出会い、影響を受けていく過程で経営というものに近づいていったものの、「弥生という魅力的な会社が新しい経営者を必要としている」という状況と遭遇していなければ、どうなっていたかはわかりません。「俺がやらなきゃ誰がやる」と強く思えたのは、そう思えるだけの良い出会いがあったからなんだと考えています。

[8]経営者に必要なメンタリティ、スキル、経験とは何でしょう?

私は、経営者には3つ必要なことがあると考えています。1つは、ビジョンを持って社員に方向性を指し示すこと。2つめは判断をすること。その判断にブレを生じさせないこと。3つめは範を示し、率先していくこと。この3つを実現できるだけのスキルと経験とメンタリティが求められるのだと思います。決して簡単なことではありません。

たとえば1つめですが、ビジョンを掲げることならば、多くの人ができるかもしれない。けれども、そのビジョンをきちんと個々の社員に理解してもらい、納得してもらうのは容易ではありません。2つめにしても、リスク回避を得意とする優等生タイプでは判断に迷いやブレが生じていくはずです。3つめなどは、口で正論を言うことと、それを身体で示していくことのギャップに悩む人が出てくるかもしれません。

[9]他に経営者に必要な資質や能力などありますか?

先の質問でお答えした3つの要素は、必要条件なのだと思っています。もう1つ重要なのは、「人が好きだ」という資質。これが加わり、先の3条件を満たし、結果として事業を成功させることができた時、初めて経営者としての必要十分条件を充たしたといえる。私はそう考えています。人を人として愛すること。私はこれをとても大切にしています。

[10]これらのスキルなどをどこで手に入れたのでしょうか?

NRI、BCG、リアルソリューションズという私の経歴のすべてを通じて、少しずつ手に入れていったのだと思います。特に大きかったのはリアルソリューションズ時代の経験。小さいながらも自分で会社を作り、それを動かしていく。誰からも庇護を受けることなく、責任者として従業員の人たちを守らなければ生けない立場に就いた経験が、私に多くのことを学ばせてくれました。けれども、ここまで私が提示した数々の条件を「完璧とは言えないけれど、それなりに揃えることは出来た」と自負できるようになったのは、今の弥生に来てからです。「経営者に必要なものを全部完璧に揃えたから経営者になった」というよりも、弥生が私をそれなりの経営者に育ててくれた、と思っています。

[11]業界のプロとしての知見はいかがでしょう? やはり必要だとお考えですか?

あった方がベターでしょうね。でも「なくても問題はない」とも思います。BCGやリアルソリューションズでコンサルティングをしていた頃は、常にゼロからスタートしていました。本人にその気さえあれば、業界のプロとしての知見がなくても、キャッチアップしていける事柄だと考えます。

[12]過去に体験した最大の試練やストレッチされたご経験について教えてください。

試練は数限りなく経験してきましたが、本当にしんどかった経験というと、2つ思い浮かびます。1つはリアルソリューションズを立ち上げてしばらくしてからの話です。実は独立前から任せてもらえることが決まっていた案件があったのですが、これが頓挫してしまったのです。非常に大規模なプロジェクトでしたし、ある意味、このプロジェクトの存在ありきで独立した部分もあったので、それがなくなった時には途方にくれました。

後から振り返れば、私自身の甘さによって引き起こされた事態だったんです。現場担当のマネージャークラスとの話だけで先に突っ走り、先方の経営者層をきちんと巻き込むことができていなかった。結果として自分の会社をいきなり危機に引き込んでしまいましたが、それ以上に私の働きに期待してくれていたお客様の現場のかたがたに迷惑をかけたことが本当に辛かった。心から反省しましたし、ビジネスをきちんと進めていくことの重さを痛感して、学ばせてもらいました。

もう1つは弥生に来て早々の体験です。当時の弥生は、成長の曲がり角に差し掛かったところで世界的な金融危機の影響を受け、それまで通りの金融機関との取引が難しくなりつつある状況でした。至らない点を誠意を持って謝罪し、取引の継続を認めていただいたのですが、その信頼を絶対に裏切るわけにはいかない状況でした。私だけでなく、この会社の社員全員にとって非常に厳しい試練だったと思います。しかし、結果としてこれを乗り切ることができました。皆が同じ試練を味わい、全員で乗り越えたことによって、弥生はさらに強い会社になることができました。

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