はじめに
コンサルティング業界へ転職される大多数の方は短期間での濃密な仕事経験を通じて能力アップし、その後、別のキャリアへ羽ばたこうと考えられているのではないでしょうか。昔からコンサルティングファームは毎年30%の人材が入れ替わっているとも言われています。
但し、最近は以前よりUp or Outを厳格運用するファームも減ることから在籍期間は長くなっている傾向があります。その為、肌感覚的には10~20%程度の入れ替わりではないでしょうか。
いずれにせよ、短期間で身につけたい能力や人脈、有名なTier1ファームに所属していたというキャリアシート上の"印籠"を求めてコンサルティング業界へ転職される方は今も昔も多く存在します。
一方で、コンサルティング業界も"魔法のステッキ"ではないので、転職者の求める全ての能力を等しく身につける機会を提供出来るわけではありません。コンサルティングを通じて身につけやすい能力と身につけにくい能力の傾向は存在します。但し、あくまで傾向となりますので、プロジェクトリーダーの傾向や得意技、テーマ、関わり方、といった個別事情に左右され、身につけにくい能力を身につけることが出来たという方もいらっしゃいます。
本日は、コンサルティング業界への転職理由の上位に能力アップを挙げる方の判断の一助となるように、身につけやすい能力と身につけにくい能力の傾向をお伝え出来ればと思います。
身につきやすい能力
比較的、頭をしっかりと使えば解決しがちな、「事業機会の発見」や「他社との競争優位の発見」、「既存オペレーションの効率化」といった能力はつきやすいと思います。
クライアントのみではリーチの難しい情報源へのアクセスや、ちょっと先の未来のトレンドや技術動向については、積み上げてきたネットワークや知見の蓄積に根差して事業会社よりもコンサルティングファームの方が洗練されていると感じています。その為、「どのような伝手が繋がっていて」、「どういう人が知ってそうで」、「どんな質問をする」と、新たな情報や見過ごされがちな事業機会の兆しを発見する勘所がつきやすいのではないでしょうか。
また、他社との競争優位の発見に向けた既に世の中で実行されている取り組みや事業モデルから差異化のポイントを特定して、他社へも転用可能な価値機能へ抽象化し、上手く整理する能力も身につきやすいと思います。やはり、幅広く深い情報を短期間で調査・分析し、整理・資料化するスキルが活きるテーマは得意になると思います。
最後に、お得意の競合ベンチマークや幅広な業界横断的な経験との比較に照らした既存オペレーションの改革は非常に身につきやすい能力かと思います。但し、構想策定といった机上面での能力はつくのですが、現場の機微を理解して形にしていく能力は身につきにくいかと思います。
身につきにくい能力
コンサルタントを経験した後に起業をしていくキャリアプランを描く方は多くいらっしゃるかと思います。しかし、意外かと思われるかもしれませんが、実態としてアントレプレナー的な発想や事業創造に向けた行動は身につきにくいのではないでしょうか。
様々な業界に短期間で触れることができるので、先程の身につきやすい能力であった「事業機会の発見」が出来るものの、一方で参謀的な立ち位置で仕事に取り組むことから、頭以外の部分を使って事業を大きくしていく能力は身につきにくくなります。
例えば、愚直に足を運んで営業をする、会社維持に向けたルーティン業務を日々対応していく、怒鳴られたり嫌な顔をされたりするときに精神的に切り替えて次に向かうといったことの経験をする機会は少なくなります。ある意味、一定の金額フィーを支払える企業を相手に企業内でもエース級の人材との仕事経験が多くなりがちなことから、事業運営の現実に触れずに過ごしている弊害かもしれません。
最後に
今回、コンサルティングを通じて身につけやすい能力と身につけにくい能力の傾向をお伝えしました。特に面接時に良く志望理由として聞く「将来は起業をする為の能力を身につけていきたい」といった希望には応えにくいという点がメッセージとしては重要ではないかと思いました。皆さんも身につけたい能力を理由にコンサルティング業界を目指される場合は、その点をよくよく調べてから活動をした方が良いのでないでしょうか。