11月なってすぐのタイミングで武田薬品工業のM&Aの記事2件がメディアに大きく報道された。
当該企業からの正式な発表はまだされていない。
実際、ディールは最後までどう転ぶか分からないからだ。
メディアにすっぱ抜かれた後にしばらくして破断となったというケースもよくある。
報道によると武田薬品工業がカナダ製薬大手のバリアント社から胃腸薬事業を買収するとのこと。
その買収金額は日本円で約1兆400億円。
武田は重点領域を消化器疾患、オンコロジー、中枢神経系及びワクチンとしており今回は消化器領域の強化と考えられる。
米国では今回買収対象となる医薬品の潜在患者が人口の約10%と大きな市場で今後も成長が期待されている。
広報によると重点領域の様々な戦略オプションを常に検討しているが現時点で開示すべきことはないとのこと。
しかし、バリアント社は財務内容に深刻な問題を抱えておりこの事業の売却が急務なので案件の成立する可能性は高いのではないだろうか。
そしてもう1件は歴史ある子会社である和光純薬の売却だ。
買い手は富士フィルムで約2000億円のディールとのこと。
日立や外資ファンドのカーライルも入札に参加したと報道されている。
和光純薬は1922年に武田の化学部門が独立した会社で旧社名は武田化学薬品と言い非常に深い関係があった会社。
しかし、選択と集中を進める経営者にとって聖域やしがらみは許されない。
また、富士フイルムにとっても医療分野の強化は急務だ。
デジタルカメラの成長は期待できず、事務機器もいつまでもキャッシュを生み続けるとは限らない。
医療機械や医薬品領域の充実は経営課題であり今後も積極的な買収を続けるだろう。
日本では大きな武田もグローバルでは準大手に過ぎない。
ファイザー、メルク、ノバルティスなどの巨人がM&Aによる買収攻勢をかけている。
ヘルスケア・ライフサイエンス業界ではこのように瞬く間に地図が大きく変わってしまう。
世界中で合従連衡が起こっている今、日本企業に残されている時間は多くはない。
以下武田薬品工業のサイト
http://www.takeda.co.jp/company/
(荒井)