[2]現在のご自身の役割について教えてください
2002年の設立時から、医療ビッグデータの時代が来ることを予見してきたJMDCですが、近年になってようやくその時代が本格的に到来しました。売上も倍増し、新規事業のタネも次々に生まれています。
私の役割は、このビジネスチャンスをフルに生かせるように、組織を整え、人員を強化し、新規事業を花開かせることで、売上をさらに倍増させるとともに医療ビッグデータのベネフィットを社会に実装することです。いわば、会社を全面的にバージョンアップさせ、一流企業に脱皮させることです。
[3]小中学生時代はどんなお子さんだったのでしょう?
私の地元は神奈川県の川崎です。公立の小中学校でのびのびやっていました。バスケットボール部に入って、学級委員もやったりしました。中学時代の文化祭で、クラス全員出演の映画を撮影したのは本当に楽しかったですね。[4]高校、大学時代はいかがですか?
リーダーシップの芽生えのようなものはあったのでしょうか?
大学では勉強はしなかったですが、サークルの役員として100人くらいのメンバーを取りまとめて練習したり合宿にいったり、飲み会を企画したりしていました。たくさんの人をまとめていくような役目は好んで引き受けましたし、そういう場で必ず起こる大小さまざまなトラブルを解決するのも好きでした。[5]ご家族やご親戚に経営者はいらっしゃいますか?
父が大手商社の取締役でした。関連会社の社長をしていたこともありますから、身近に経営者がいたことになります。でも、父は家であくまでも父親として振る舞っていたので、「経営者として何かしら影響を受けたかどうか」といえば、それはなかったと思います。[6]ご自身の性格について教えてください
「理想の経営者」の人物像としては、「どっしり構えて泰然自若」が良いのでしょうけれど、残念ながら私は違います(笑)。良く言えば、正直でオープンな性格だと思っています。
悪いニュースや仕事の失敗に対して、言葉や論点をすりかえてキレイ事に見せかけるのは好きではありません。信念ではなく、性格的な好みの話です。もちろん対外的なビジネスコミュニケーション戦略としては「正直ベース」は愚策な場合も多いので、そうそう好みどおりにはいかないですが、少なくとも社内向けにはなるべく正直ベースで勝負していきたいという思いはあります。[7]いつ「経営者になろう」と思われましたか?
4段階くらいで思いは具体化していきました。まず、大学卒業当時は漠然とした憧れでした。次に、農林中金に入ると、経営職に備えようとMBAを目指すようになりました。そして、MBAで学ぶ中で、農林中金や金融業界でなく、事業会社の経営に携わりたいと定まりました。さらにマッキンゼーで働くうちに、大企業ではなく、数百名規模の事業会社の社長に魅力を感じるようになりました。[8]経営者に必要なメンタリティ、スキル、経験とは何でしょう?
まず繊細な理解力と豪胆な実行力の2つは必要でしょう。これは経営者として共通項だと思います。
ただ、そこから先は、会社の成長ステージや組織規模、経営スタイルによって千差万別で決まった答えはないと思います。ですので一般論ではなく、JMDCという約100名の会社を成長させるという具体的なケースにおいて、重要だと私が日々感じていることを追加で1つ挙げます。
それは次世代リーダーを選ぶ眼と育てる力です。言うまでもなく、経営陣だけで出来ることはたかがしれています。事業拡大を目指すには、自律的にビジネスを発展させていってくれる事業リーダーがどんどん追加で必要となってきますが、「医療データ」という新しいビジネス分野では即戦力の事業リーダーを採用できることは稀ですし、大企業のように実績はなくてもポテンシャルのある人材が控えているわけでもありません。
そこで、実績はなくポテンシャルも不透明な次世代リーダーを青田買いし、最初は事業パフォーマンスが落ちるのを覚悟で、業務を任せて経験を積んでもらう。言うは易し行うは難しです。失敗もします。
JMDCのようなステージの会社では、こんな風に次世代リーダー育成に覚悟を決めて取り組むか否かが、企業の成長が単発で終わるか、あるいは事業のタネが次々に花開いて持続的に成長していくかを大きく左右すると感じます。[9]他に経営者に必要な資質や能力などありますか?
社員全員のリーダーという観点で見た場合、経営者は全方位的に人格を磨く責務があると感じます。なぜなら、リーダーの人格は、多かれ少なかれ組織に投影されるからです。
明るいリーダーでしたら組織の雰囲気も明るくなりますし、神経質なリーダーならメンバーの日々も神経質なものとなり、経費にだらしないリーダーなら組織もそうなります。リーダーの人格上の弱点は、組織カルチャー上の弱点となってしまい、社員に無用のストレスを与えたり、業績に悪影響を与えたりすることになります。
私なんかは人格上の弱点だらけで社員に申し訳ないですが、少しずつでも直すよう努力をしていくのが責務だと思っています。