[2]現在のご自身の役割について教えてください
セント・ジュード・メディカルは数あるグローバル医療機器企業の中でも、とりわけ心疾患領域で突出した成果を築いてきました。そのジャパンオフィスを任されたのが私ですので、この実績ある企業を次の成長ステージへと引き上げていくのが私の責任であり、役割となっています。
[3]小中学生時代はどんなお子さんだったのでしょう?
大阪の堺市で生まれ育った私には、自転車工場を営む祖父がいました。初孫だったせいもあってか、この祖父に可愛がらたのですが、バリバリの商売人だった祖父は、私をみて「英孝は優しい子だから商売人には向いていない。学者に育てよう」と言っていたそうです。
当の私は、そんな祖父の言葉も気にせず、ろくに勉強もしないで遊んでばかりいましたが(笑)、学習塾への入学をきっかけに真剣に勉強を始め、中学受験をすることになりました。受験では灘中学を目指したものの、結果は不合格。灘と同じくらい進学校として有名だった大阪星光学院には入れたのですが、とにかく灘に入れなかったのが悔しくて、12歳にして人生最初のショックを味わいました。
今思えばこんなに早い時期に挫折を覚えたおかげで、少しは精神的に強くなったかもしれません。社会人になってからも、経歴だけ見れば華々しく映るかもしれませんが、実際振り返ってみると「1勝2敗」の繰り返し。。失敗したり負たりすれば当然悔しいけれども、いちいちめげていないで次に勝つために頑張る、ということを繰り返してきたように思います。
「努力すれば必ずいつか報われる」「努力は人を裏切らない」という思いは、十代の頃から知らず知らずに意識していたと思います。[4]高校、大学時代はいかがですか? リーダーシップの芽生えのようなものはあったのでしょうか?
中高一貫校ですから高校も大阪星光学院でした。中学受験で第一志望に落ちたので、大学受験は頑張ろうと、結構勉強をしていましたが、父親がテニス選手だった影響もあり、部活のテニスにも夢中になっていました。大学時代は同好会ですが、テニス漬けの毎日となりました。
リーダーシップという面でいえば、中学時代には生徒会長もやっていましたし、テニスでも中心的な役割を担っていたので、リーダーになることをそれなりに好んでいたとは思います。けれども、さほど重々しい気持ちで取り組んでいたわけではありませんでした。[5]ご家族やご親戚に経営者はいらっしゃいますか?
先ほども申し上げたように、祖父が自転車工場を経営していましたし、父も自分で会社を経営していましたので、私の家にはサラリーマンが一人もいなかったことになります。幸い事業が順調だったこともあり、私の家では毎晩皆で顔を揃えて食事ができましたし、お金に不自由しない生活をさせてもらいました。
もちろんサラリーマン家庭には恐らくおこらないようなこともありました。例えば、会社の業績が悪化したときには、父は当たり前のようにすべての社員や取引先を心配し、休みもなく働いていましたし、金融機関との厳しいやり取りを耳にすることもありました。こんな風に良い事も良くない事も両方経験していたわけですけれど、子どもだった私には「それが当たり前」でした。
ただ、今の私は雇われ経営者ですから、オーナー社長であった祖父や父とは違います。ただ身近に経営者がいる環境で育ったことで、「オーナー社長とサラリーマン社長の違い」をごく自然にわきまえることができた、ということだと思います。[6]ご自身の性格について教えてください
一言でいえば「B型な性格」です(笑)。気になる事柄があれば、集中して取り組まないと納得しない一方で、特に気にならない事柄には無頓着だったりする。良きにつけ悪しきにつけ、そうした割り切りがハッキリしていますね。仕事でも、誰かに任せてしまう場合は、つべこべ言わずに任せきりますし、「これは手放せない」と直感したものは徹底的にハンズオンで取り組んでいます。[7]いつ「経営者になろう」と思われましたか?
先述の通り、私の幼少期の我が家には社長と社長夫人しかいませんでしたし(笑)、「仕事をしている大人」のお手本が「経営者」しかなかったこともあり、子どもの頃からサラリーマンのイメージがありませんでした。ただ、銀行員時代もコンサルタント時代も、漠然と経営者になりたい気持ちはありましたが、具体的なイメージやビジョンがあったわけではなかったと思います。[8]経営者に必要なメンタリティ、スキル、経験とは何でしょう?
経営者に求められる能力というのは、あらゆることのかけ算で決まりますから、一概に「これとこれを持っていないとダメ」というように答えることは難しいです。もしかしたら何十年か前ならば、そういう答えもでてきたかもしれませんが、最近の新しいテクノロジーが生み出すビジネスチャンスや、あるいは最近の若いベンチャー経営者の実態を見ると、一つの型をみつけるのは困難です。
つい最近も、新進気鋭のベンチャー企業の経営者の方とお話をさせてもらいましたが、なんとも個性的な方で、まったく「社長」の型にはまっていない。いわゆる「できるビジネスパーソン」のプロトタイプとはだいぶかけ離れているけれども、経営で大成功し、カリスマとして若い人たちのハートをつかんでもいる。
このような方々と接していると、自分のこれまでの価値観だけで、安直に「●●なスキルや経験値が必要」とは言ってはいけない気持ちになります。強いて挙げるとすれば、どんな面でも構わないから何かについてエッジが立っていること、は共通に感じる部分です。