ファンドアドミ業務の概要説明
PEファンドにおけるファンドアドミ業務とは
ファンドアドミとは、Fund administrator の略称です。PEファンドには投資検討からexitまでを担うフロント業務とファンド組成、ファンド管理、資金調達、コーポレート業務等を担うミドルバック業務があり、ミドルバック業務を総称して「ファンドアドミ業務」と呼んでいる場合が多いです。
具体的な業務内容
会計関連業務
ファンドにおける会計関連業務は、事業会社の会計関連業務に比べると幅が広く、各ファンドによって組織規模や組織体制、アウトソーサーを利用しているかどうかが異なるため、それに応じ各担当の業務範囲が異なります。
具体的な業務内容の例としては、ファンド自体の会計系業務(ファンドの会計・決算業務、監査対応、税務対応等)、投資家に対する会計系業務(投資家への出資払込、請求、手続き等)、投資先に対するバリュエーション業務(投資先の資産価格の評価、純資産額、基準価額の算出業務等)が挙げられます。
IR関連業務
ファンドにおけるIR業務は、大きく分けて2つの業務があり、1つは主にファンドレイズ時期に注力する投資家向け営業業務、もう1つは日々のルーティン業務としての投資家向けレポーティング業務・QA対応です。
ファンド運用が継続的に行われ、組織が大きくなると、ファンドのトップマネジメントではなくIR担当者が中心となり投資家向け営業(ファンドレイズ)を行う場合もありますが、特にファンド設立初期や少数組織においてはファンドのトップマネジメントと二人三脚で行う場合が多いです。
また、IR担当者が複数名在籍しており、海外投資家との取引が一定以上ある場合は、海外投資家担当と国内投資家担当をIRチーム内で分けている場合があります。
その他
ファンドの人員構成によっては、上記以外に、一般事業会社における総務・人事業務がファンドアドミ担当者の業務内容に含まれている場合もあります。
一方、法務・内部管理・コンプライアンス関連業務においては、リーガルバックグラウンドの専任担当やアドバイザーを若干名採用している場合があります。
尚、主に会計、IR業務においては、ファンドならではの専門性が求められる業務でもあるため、オルタナファンドのアドミ業務に特化したアウトソーサーも少数存在しており、各ファンドの陣容やノウハウの有無に応じて活用している場合があります。
採用ターゲット
PEファンドにおけるファンドアドミ求人の特徴
大きく会計系ポジション、IRポジション、コーポレートポジションの3つに分けられますが、業務範囲は裁量が広いポジションから細分化されたポジションまで様々であり、各ファンドの陣容によって決定します。
各ポジション、スタッフクラス~マネージメントクラスまで多様なニーズがあり、組織上必要な層に対して採用ニーズが発生します。求めるバックグラウンドとしてはフロントに比べ幅広く、実際に業界内の方々の経歴としても会計士資格保有者が一定数採用されている印象はありますが、投資フロントのようにバックグラウンドに統一感がなく、ファンド、監査法人、事業会社、金融機関等様々です。
募集時期については、欠員補充を除き、ファンド規模拡大に伴う組織拡充が必要となったタイミングでニーズが発生します。特にIRポジションは次号のファンドレイズを見据えて増員ニーズが発生する場合が多いです。
求められる経験・スキル
● 会計関連ポジション
PEファンドにおける会計業務の経験者が採用ターゲットとして優先順位高いですが、人材マーケットにおいて当該経験者はかなり少数であるため、他オルタナファンド(不動産ファンド、インフラファンド、ベンチャーキャピタル等)の会計業務経験者も優先順位高い採用ターゲットとなっています。
尚、オルタナファンド未経験者については、会計士・税理士・簿記2級以上の資格保有者やファンド監査の経験者であれば、ポテンシャル含みで前向きに検討する傾向があります。
事業会社経理財務の経験者については、大企業より中小企業やベンチャー企業等で経理財務全般を裁量広く担当している方の方が少数組織のファンドにおいては馴染みやすい可能性があり前向きに検討する傾向があります。
英語力については、日系のPEファンドであれば問われない場合が多いです。
● IR関連ポジション
大きく分けて2つの業務があり、主にファンドレイズ時期に注力する投資家向け営業業務と日々のルーティン業務としてのレポーティング業務・QA対応業務です。一人の担当者が両方担当する場合と、IRチーム内で担当を分けている場合があります。投資家向け営業業務においては、投資ファンド・資産運用会社等の金融機関における年金・機関投資家営業経験が望ましく、その他、投資銀行におけるスポンサーカバレッジ業務、銀行における大企業向け融資業務、投資ファンドに対するLP投資業務経験者も採用ターゲットとなっている場合も多いです。
英語力については、外資系PEファンドは海外投資家や本社とのコンタクト時にもちろん必要ですが日系PEファンドであっても海外投資家からの資金調達を進めたいと考えているファンドが近年増加傾向にあるため、ビジネスレベルの英語力があると採用ニーズが強く、中でも英語での資料作成経験が豊富な方、プレゼンテーション力・交渉力がある方はより歓迎される場合があります。
レポーティング業務・QA対応業務においてはオルタナファンドまたは事業会社におけるIR(主に投資家向け資料作成業務)経験が求められます。こちらも事業会社においては中小企業やベンチャー企業のように組織がコンパクトで業務範囲が広いIR経験者がマッチしやすいです。英語力は、組織体制や投資家種類によっては必須でない場合もありますが、必要な場合は読み書きにおいてビジネスレベルが求められる場合があります。
ファンドアドミ転職の魅力
ファンドアドミ業務のやりがい
投資家とのコミュニケーションにおいてはクイックかつ丁寧な対応が求められますが、投資家からの期待値を満たせれば感謝され、やりがいを感じられる業務です。また、ファンドレイズにおいては、当たり前ながら、ファンドレイズができなければ投資実行ができないため、ファンド運用の根幹として大変重要な役割を担っています。
報酬水準は金融機関として他業界に比べ高水準である中で、それに加えてファンドレイズやファンド償還といったイベントに紐づいた報酬を受け取れる場合があります。具体的には各ファンドやタイトル毎に異なりますが、フロントだけでなくアドミポジションにもキャリーを支給したり、ファンドレイズボーナスを支給したりするファンドがあります。
ファンドアドミ人材の今後の市場価値とキャリアプラン
日本のPEファンド(バイアウトファンド)市場は右肩上がりで成長中であり、ファンドの大型化や、ファンド数が増加している傾向にあります。新規でファンドを設立すると必ずファンドアドミ業務は必要なポジションとなりますので、今後もニーズが増加するものと思われます。
ファンドアドミ人材のキャリアプランとしては 1社に長く在籍しアドミポジションとしてプロモーションをしていくケースと、業界内で転職をしていくケースが多く、他業界への転職事例はあまり見かけません。また、スキルセットが異なるため、基本的にフロントへ異動をすることはなく、アドミポジションの専門性を深める方向でのキャリアとなります。
業界内転職に関しては、ファンドアドミ経験者のニーズが強いため近年は売り手市場であり、アドミ業務の中で業務範囲を変える/働き方を柔軟にする/経済条件を上昇させる等の目的で転職を行うケースが見受けられます。
業界内転職、または、周辺業界からファンドアドミ業務へのキャリアチェンジにご関心がある方はぜひご相談ください。