はじめに
コンサルティング業界以外から見ると、どのファームも共通したコンサルティング業界用語を使用しているかのように見えると思います。
しかし、例えば方言と同じで、ファームによっては同じようなことを似た用語で表現をしています。
たとえば、「プロジェクトとプロジェクトの間の期間」を指す用語の場合では、
【A社】アイドル(Idle。次のプロジェクト期間の充電期間)
【B社】ノンチャージ(Non-Charge。非稼働で稼いでいない期間)
【C社】ビーチ(Beach。仕事をしていない自由な時間)
というように、微妙に言外に含むニュアンスの異なる表現が各ファームに存在しています。
各ファームの歴史的・文化的な慣習から、プロジェクトとプロジェクトの間の期間を、どのように捉えているか透けて見えてくるのではないでしょうか。
今回は、各ファームであまり意味合いとして異なっておらず、業界共通の意味合いで使用されている用語を、なんとなくプロジェクトの開始から終わりまでの流れに沿える感じで伝えていきたいと思います。
独特なコンサルティング用語
ビジット(Visit)
使用例:「ちょっと、ビジットあるんで。」、「今度のビジット一緒に行く?」
クライアント候補、並びに現クライアントに対して営業段階での打ち合わせ訪問することを指します。
コンサルティング業界における歴史的経緯から、コンサルタントは自ら売り込むような恥ずかしい真似はせずに、自然と噂が広がった結果として依頼をクライアントから受けるのが良い、という考えを持つ方もおります。
その結果、わざわざ横文字にすることもありませんが、営業に行ってきますという表現よりは、ビジットに行ってきますという用語の方が使用されているのではないでしょうか。
インターナル(Internal)
使用例:「インターナルセットお願い。」「次のインターナルいつだっけ?」
ファーム内部メンバーのみの打ち合わせのことを指します。
略さずに使用すると「インターナルミーティング(Internal Meeting)」と表現します。なぜ、このような用語を使用しているかは不明ですが、コンサルティング業界に入った後に略称であることを知らないと、打ち合わせが実施されることすら、分からないのではないでしょうか。
なお、インターナルに対比する用語として、ファーム外部の方との打ち合わせのことを、エクスターナル(External)とは言いません。
アサイン(Assign)
使用例:「次のアサインどうしようか?」「アサイン決まったよ。」
プロジェクトに参画することを指します。
プロジェクトの終盤頃、またはプロジェクトの間の期間に、マネージャー以上のクラスと話をしていると、「次のアサインどうしようか?(=次に取り組みたいテーマとか興味は、どんなタイプのプロジェクトをしたいの?)」というニュアンスで聞かれます。
不用意に答えると大変な結果を生むことがあるので、注意が必要となります。
イシュー(Issue)
使用例:「イシューを捉えていない。」「今回解くべきイシューは?」
プロジェクトを通じて、クライアントが解決したい課題のことを指します。
コンサルタントの価値は、クライアントの抱える課題を特定し、何から解いていくかの全体像を描き、そして優先順位付けを行い、解決方法を考えて提案し、解決していくことにあります。
イシューを外した検討や資料作成は時間の無駄であり、どれだけ頑張ったとしても自己満足でしかない、という大事な価値観とも密接に関係する重要な用語となります。
バリュー(Value)
使用例:「ノーバリューだね。」「君のこのプロジェクトにおけるバリューは?」
プロジェクトにおける、各コンサルタントが提供する価値のことを指します。
各役職(コンサルタント、マネージャー、パートナー等)でクライアントに対して果たすべき価値は異なります。そのため、価値が出なければ役職に関わらず、プロジェクトから外されたり、ファームを辞める原因になったりすることがあります。上述のイシューと同様に、コンサルタントの大事な価値観と密接に関係する重要な用語です。
「No Value, No Consultant」といっても過言ではありません。但し、バリューの出し方やクライアントからの期待の多様化により、"様々なバリュー"が生まれ始めている現実もありますが・・・。
vf(ブイエフ。Version Final)
使用例:「vfで印刷してる?」「vf送っておいて。」
プロジェクトにおける各打ち合わせや、最終納品時の資料のことを指します。
内外のコンサルタントでチーム組成し、プロジェクトを実施することが多い中、ファイルの命名ルールやそのバージョン管理は、基本的な動作として求められます。特に手戻りの発生は、完全にノーバリューである禁忌な行為といっても過言ではありません。
基本、拡張子の前に「日付_クライアント名_テーマ_バージョン」というファイル命名ルールで管理することが多く、バージョンは例えば「1.0→2.0→3.0・・・→vf」というようにアップデートしていきます。
なお、打ち合わせの後に修正すると「vfr」や「vfr2」という形でアップデートされることもあります。
最後に
今回は、独特なコンサルティング業界をピックアップしてお伝えしましたが、他にも色々な用語があるかと思います。
他には、皆さんは受け入れていただいているかもしれませんが、実は顧客やお客さんではなく「クライアント」と、この一連の記事で表現をし続けており、これも独特な用語かもしれません。
この「クライアント」という言葉に込めている意味合いや考えがあって使用をしてはいるのですが、気になる方は、身近なコンサルタントに聞いていただけると答えてくれる・・・、場合もあるでしょう。
このような、独特なコンサルティング業界に興味を持たれたのであれば、是非挑戦してみる価値はあるかと思います。