はじめに
新型コロナウィルスと共に生きるという意味では既に半年以上の時間が過ぎました。私自身は、まだ駆け出しのコンサルタントであった当時のプロジェクトマネージャーから言われた「景気に関わらず、これから伸び続ける市場が3つある。それは、教育、物流、そしてコンサルティング業界。」という薫陶もあり、いつも通りの心構えで過ごしていました。
ほとんどのコンサルティングファームでは中途採用を絞っていたようですが、8月に入り採用を解禁する動きが増えてきています。結局、毎年の年次サイクルの通り4~6月の人員稼働は他期間と比較すると低調なものの、対昨年比ではそこまで業績は落ち込むことはなく、むしろ、ここ数年のトレンドの通り好調な結果になったファームも多い模様です。
尚、8月に入り各グローバル戦略ファームが採用を解禁してきている理由は大きく2つあるのではないでしょうか。1つは日本と海外でのコロナの影響の違い(日本はコロナ影響より、ここ数年のコンサル市場拡大ドライバーの方が強い)と、2つ目は入社時期が2021年以降となる候補者が増えてきたという点になります。つまり、日本は引き続き稼げると海外にある本社側が理解し始め、また、来年に備えて人材が必要だということで、採用許可を出してきている事情の為です。
又、9月末に集中する各社決算後に更に落ち込むと言われてますが、ある意味、この半年をかけて各ファームは再生支援を中心としたオファリングを整える準備期間の確保が出来たので、あまり悲観はしていません。
一方で、業績自体への影響は軽微なものの、明確に働き方は変わったなと感じる部分も当然あります。本日はその変化した部分を中心に、withコロナ時代におけるコンサルティングの姿をお伝え出来ればと思います。
コンサルタントの働き方
コロナ以前から常駐を含めて働く場所を選ばずに柔軟に対応出来る環境は整備されていました。又、プロジェクトベースで、且つアウトプット志向でのタスク設計、レビューという基本動作がなされていたことを背景として、環境面・業務面でスムーズにリモートワークへの移行を実現しています。
一方、この4月以降に入社された新卒・中途という新たにコンサルタントになる方へのフォローに課題が生じていました。そして、今も課題として存在し続けています。
これまでも一定のOff-JTトレーニングは各ファームで整備される来ているものの、実際は短期間での密な時間や雰囲気を一緒に過ごすプロジェクトを通じたOJTでコンサルタントは育成されていきます。今後はwithコロナ時代への対応として、リモートワークを前提とした育成方針の確立と、その育成を通じて生まれるコンサルタントがパフォームするのかは、今後のコンサルティング業界を見ていく上での重要な点になるかと考えています。
プロジェクトの進め方
プロジェクトにおけるジュニアの役割は、少し限定化しつつある感覚を持ちます。例えば、これまでは内部レビューではホワイトボードに書いた抽象化チャートを含めてジュニアが作成していました。しかし、リモートでは抽象化のイメージを伝えにくくなっていることから、その基礎情報の調査のみを依頼、といった役割の限定化が起きています。
尚、この役割分担の変化によりジュニアの労働時間が減って嬉しいという声も聞こえてきます。一方、抽象化チャートの作成機会は減少していることから、先程の話ではありませんが、今後のコンサルタントのパフォームについては注視が必要かと考えています。
一方のシニアにおける変化としては、移動時間の考慮されない"テレビ番組表"のようなスケジュールを設定される様になってきました。一定のスケジュールブロックをしなければ、油断をすると休む間もなく打ち合わせが入ります。但し、次ミーティングが設定されることにより、個別ミーティングが時間内に終わり易くなっており、効率化の効果は生じていると言えるかもしれません。尚、個人的にはリモート故に、論点と関係のないことを話す人が"地蔵"になることで効率化しているのでは、とは思っています。
また、クライアントとの進め方での変化としては、BD(Business Development)段階から最終報告まで全てリモートで完結するプロジェクトが出始めた点となります。但し、基本的にはクライアントは対面での打ち合わせを求めているので、withコロナ時代においては、初回訪問や軽い討議はリモートで実施し、更に深い討議を必要とする場合は対面での実施と、打ち合わせの重みで切り分けた運用になると、予想はしています。
最後に
現在は働き方を中心としたプロジェクトの推進プロセスに対する変化が起きている段階となります。しかし、リモートでの取り組みが前提としたプロジェクトが増え始めると、コンサルティングにおけるクライアントへの価値の出し方を含めて変化していくかもしれません。つまり、日本に所在するコンサルティングファームへ依頼する必要はないとクライアントは考え始めるかもしれません。その時は、日本に所在するコンサルティングファームがクライアントへ提供する価値は何か?を再考することが求められるでしょう。
このように変化しつつあるコンサルティング業界ですが、別の側面で見ると、新しいコンサルティングの在り方を創るチャンスとも言えます。そのようなチャンスを含めて興味を持たれた方はチャレンジしてみてもよいかもしれません。