はじめに
コンサルティング業界で働いているとクライアントや学生、転職活動中の方から「いつ独立されるのですか?」「独立してコンサルティングをした方が、儲かりませんか?」というように、独立に関して聞かれる機会が多くあります。
特に報酬面と仕事・ストレス面に関する質問を良く受けますので、本日はその点を中心に実際のところを皆さんにお伝えできればと思います。
尚、私個人の感覚からすると、リスク・リターンの観点に鑑みると、コンサルティングファームにおいて一定の役職以上になった現段階においては、独立することなく所属した方のメリットが大きいと感じています。なぜ、そのように感じているのかを含めて、今回はファームに所属することのメリットをお伝えしたいと思います。
報酬面
皆さんも気になる点かと思いますが、毎月定額の給与をもらうことが出来るファームとは異なり、独立した場合、諸々の諸経費や税金の問題を除くと、「総額=報酬単価×継続率」で、簡易的に想定収入を推計することが出来ます。
報酬単価は、余程の業界有識者としてプレミアムの価格を乗せる等がない限り、労働集約的な働き方になる為、200~250万円/月・人程度が現実的な最大値の着地になるのではないでしょうか。200~250万円/月・人まで到達する人も少ないですが、到達したとしても、その後は逓増での収入カーブを描くのかと思います。
継続率は、若手については外部リソースとして使い勝手が良いので、余程のミスをしない限りにおいては、長く安定的に収入が見込めます。ただ、年齢を重ね、また求められる役割が変わってくるにつれて、その継続率は低下していきます。つまり、ファームの立場からすると、プロジェクトにおける大事なパートは内製化し、調整弁として外部リソースを使うプロジェクト設計をしています。
私の肌感覚からすると(長期的なキャリアをどのように描いていくかは別の問題として)若手の内は収入面では比較的良いものの、マネージャー以上になるとファームにいた方がリスクを鑑みても、待遇は良いのではないか、という感覚ではあります。
仕事・ストレス面
大きな違いは、各クライアントが外部に依頼するコンサルティングプロジェクトのサイズや、プロジェクトがクライアントに与えるインパクトにあると考えます。つまり、一定規模のプロジェクトや、よりインパクトの大きいプロジェクトに取り組みたい方は、ファームに所属していた方が良いのではないでしょうか。例えば企業によっては、汚職防止を目的に一定規模以上の企業にしかプロジェクトの発注を行わない規程も存在しており、その個人のコンサルタントの能力とは別問題としてのハードルがあります。
ただ、収入の継続性の問題は横においた時、現在の業界の勢いからすると、比較的、仕事内容は選びやすい状況にあるかと思います。但し、報酬面のところでも少し触れましたが長期的なキャリアの描き方は難しく、独立後に、自ら事業をスタートするといった目論見等がないと、キャリアの閉塞感を感じてしまった方が多い印象を受けます。
最後に
コンサルティング業界は皆さんが想定される以上にインナーサークルな業界です。ファームに所属している時に、着実なパフォーマンスをあげ、円満な形で卒業しているのであれば、独立したとしても声を掛けられる機会は多いのではないかと思います。
そのような意味で、他業界よりも気軽に独立することも出来ますし、独立後も生きていきやすい業界かと思います。ファームに所属をしていても、1人のプロフェッショナルとして仕事をしていることからファームの所属から独立への転換はハードルが低いのかと思います。皆さんも、1人の個人として力試しをしたいと考えられているのであれば、若手の間だけかもしれませんが、コンサルティングファームで2~3年働いた後に、独立を経験してみるキャリアの選択肢もありではないでしょうか。