はじめに
皆さんもコンサルタントはパワポ資料を綺麗に作っているというイメージを持たれているのではないでしょうか。一部、"綺麗に"という意味に「中身がなく表面的」と揶揄する意味が込められている場合もあるかと思います。同業のコンサルタントから見ても、そのような"綺麗な"資料を見かけることはあります。しかし、大抵の資料は比較的、読み易く纏められているのではないでしょうか。
コンサルタントが綺麗な資料を作成する背景には、ある意味、"モノ"ともいえるパワポ資料に対する、日本のモノづくりにも通じる「こだわり」が存在しています。実際、海外オフィスのコンサルタントが作成したパワポを見て後に日本人の作成したパワポを見ると、異次元のレベルでの「こだわり」を感じることが出来ます。その良し悪しは横におくとして、事実としてそこに「こだわり」を感じることが出来ます。
なお、コンサルタントにとっての「こだわり」は、大きく2つの意味を持ちます。1つ目は「オペレーションエクセレンスのために、資料作成における型の徹底」を目的とした「こだわり」。2つ目は「メッセージをしっかりと伝えるために、最後まで細部にわたり作り込む」を目的とした「こだわり」となります。
どちらも重要であり、実際のレビューの場面や個別の作業時においては、そのどちらかを意識しつつ取り組んでいます。以降、この2つの「こだわり」を具体的にお伝えしたいと思います。
こだわりの理由①
資料作成における型の徹底
「こだわり」を発揮すると、作業工数が増えると直感的には思われるのではないでしょうか。しかし、現実はその逆となります。個人・チーム作業のどちらにおいても、オペレーションエクセレンスが実現されることになります。例えば、
「スライドはメッセージとボディで構成され、ボディはメッセージの根拠とする」
「目線を左上から右下に走らせやすいので、その流れでボディ内は構成する」
「基本、ボディ内は軸で分解可能で、その軸をメッセージと対応させる」
「オブジェクトコピーの際は、shift + controlで対象をクリックしつつ移動させる」
というように、皆さんも聞いたことがある有名な型から少し高度な型まで、色々と存在します。この型があるから、各コンサルタントにおけるパワポ作成のオペレーションに指針が生まれることで作成し易くなる、またレビューの際もレビュワーの観点が生まれて修正点の指摘をし易くなる、チームで作業分担をしても全員が同じ型に従って作成することから統合を楽に出来る状況になります。結果、非常に生産性が高く、最小限の工数での成果物の創出が可能になります。
こだわりの理由②
最後まで細部にわたり作り込む
メッセージをしっかりと伝える目的は大きく2つあります。1つは、対面するクライアントに、価値創出以外の余計な時間が生じることの予防です。つまり、例えば「この資料は、どう読めばよいのか?何が書いてあるのか?文章の意味が分からない」といった、資料を理解するためだけの思考に時間を使わせないことを目的に細部にわたり作り込んでいます。
もう1つは、背景等を良く理解している対面するクライアント以外に、資料のみが独り歩きしても、しっかり伝わるようにするためです。例えば、経営会議といったクライアント内での会議体では、資料のみが配布されるといったこともあります。結果、資料の作りが甘く、メッセージが読み取り難い資料の場合、読み手の解釈に頼る部分が大きくなり、上手く伝わらない状況が生じます。
また、社長の名代となる経営企画部へのコンサルティングの際には、更に気を付けるようにしています。つまり、社長の名代である経営企画部から発せられるメッセージは、社長からのメッセージと同義となります。その為、経営企画部が全社へ展開する資料の文言やオブジェクトの問題で、クライアント内の社員に上手く伝わらない状況は、意味が誤解されるのみならず、社長への求心力を落としかねない結果にもなるので避けなければなりません。
最後に
本稿を通じて、改めて、なぜこのような大変な「こだわり」を自分自身が徹底しているのかを考えてみたのですが、根底には「プロジェクトの成果物は、自分を含むチームが世の中に送り出した作品ともいえるので、こだわりたい」という想いがあるではないかと思いました。
コンサルティングは、目に見えるモノではなく、思考や仮説を価値として提供し続けることとなります。そのようなコンサルティングの仕事に共感や興味を覚える方がおりましたら、コンサルティングの仕事も、キャリアの選択肢として考えてみてはいかがでしょうか。