はじめに
コンサルティングにおけるエクセルの使い方は、実務上は大別して以下3パターンのどれかに分類されていくのかと思います。
①調査シート系(インタビュー時のQAシート、デスクトップ調査のまとめ、等)
②シミュレーション系(DD時のプロジェクション、新規事業計画時のシナリオ分岐、等)
③管理系(WBS、ステークホルダー管理、等)
この使い方を見ると、コンサルティング業界以外におけるエクセルの使い方と、違いは少ないように思われるのではないでしょうか。確かに使用目的としての違いはほぼないと私自身も思います。
しかし、使用時の基本的なルールや作業上の禁じ手、高速作業のためのテクニックに、一線を画す違いが明確に存在していると、クライアントの資料と見比べていると感じてはいます。
なぜ一線を画す違いを感じるかと言うと、エクセル作業でのポイントは、
・拡張性(方針変更時に、如何に最小限の工数で再設計・編集が可能か?)
・説明責任(初見でも、シート構成と目的・関数とセル連携、編集可否の判断が可能か?)
を満たしたエクセルの成果物を作成できるかに尽きると言えます。
そしてその違いを生み出すのが前述のルールや禁じ手、テクニックです。
つまり、検討経過により進化を続けていく戦略という業務を定量数値に反映していく場合、拡張性の少ないエクセルでは実用に耐えきれません。ゼロベースで作成する工数も無駄ですし、そのような作業に時間を使うためにクライアントはコンサルタントへフィーを払っている訳ではありません。
また、レビューや説明時に手間取る、又はどこをどのように見ればエクセル内容が正しいか/正しくないかの判断に工数を費やすことも無駄です。そして、何よりプロの仕事とは言えません。
本日は、そのような拡張性・説明責任が担保されたエクセルを作成する上で、コンサルタントが良く使用するショートカットやテクニックを紹介できればと思います。
シート構成編
まず「構成図」シートを用意し、ブック全体の構成を設計する
それなりの内容のエクセルを作成し納品する際は、エクセルのシート構成の設計から始めます。
一番左のシートに構成図としてオブジェクトと線、テキストを使用して書いていく形式が一般的ではないでしょうか。
例えば、元データが記載されるシートを「受領済_元データ_日付」というように命名し、そのシートからコスト項目のみを引用した先を「Sim_コスト項目」というように命名したとします。その場合、構成図には「受領済_元データ_日付」→(コスト項目引用)→「Sim_コスト項目」という具合に記載されるようになります。
このようにコンサルタントは構成図に基づき構成の上で、各シートに名付ルールに基づく命名を行う手順を進めていくのですが、その際に1つ目の良く使うショートカットが登場します。
「ALT + H O R(アルト エイチ オー アール)」です。
シート名の場所へポインターを移動させてダブルクリックしなくても、当該ショートカットキーにより編集が可能になります。
便利なショートカットですが、あまりコンサルタント以外で使用している人は見たことがありません。
ディバイダー用のデータの無いシートを挿入する
なお、コンサルタントは、整理のためにディバイダ―用のシートも良く使用します。
たとえば、「元データ集→」と命名をして、このシートから右側に各種元データのシート群を置いておきます。また、この「元データ集→」というタブに「シート見出し色の選択」で色付けすることも非常に一般的です。
作業編
基本的にエクセルを使用する際は、各シートにおいては表形式で纏めて、編集作業を行うのではないでしょうか。コンサルタントも同様で、基本は(コンサルタントが口癖のように言う)縦軸と横軸を設定し、その軸に基づいた表を作成・編集します。
その際に2つ目の良く使うショートカットが登場します。
「ALT + D F F(アルト ディー エフ エフ)」と
「ALT + D F S(アルト ディー エフ エス)」です。
「ALT + D F F(アルト ディー エフ エフ)」は表の中での選択範囲をリスト化します。
絞り込んだ上で、その対象のみに対して関数を組んだり、チェックをつけて識別したりといった下処理作業を行います。
「ALT + D F S(アルト ディー エフ エス)」はリストで絞り込んだ後に絞り込みのみを解除する際に使用します。
解除の仕方として、再度「ALT + D F F(アルト ディー エフ エフ)」をショートカットとして入力し、リスト化を解除した上で、再度「ALT + D F F(アルト ディー エフ エフ)」によりリスト化する方法もありますが、工数が増えるので、後者を使用することが一般的ではないでしょうか。
最後に
紹介した3つのショートカットは皆さんも普段使いの需要がありそうでしたので取り上げてみました。
なお、更にしっかりとした分析の場面では、INDEX関数とCHOOSE関数等をよく使います。複雑なシミュレーションや分析を行う際に非常に便利です。特にINDEX関数は、VLOOKUP関数よりも列指定の柔軟性が高く、心なしか関数が軽く、計算スピードが早い気がしています。(これは都市伝説かもしれませんが)
コンサルタントの仕事は、時には"手貸"や"高級人材派遣"と揶揄されることがあります。
しかし、一方、世の中には、これほど資料作成のために訓練された職業はないかとは思います。また、コンサルタントが作業スピードや生産性を追求する背景には、付加価値を創出するための時間を創出するという本来の目的が存在します。そこで培った作業能力が、社会装置として世の中に求められているのであれば、それもまた1つの価値ではないかとも思います。
コンサルティングへの興味の有無に関わらず、自身の成長と基本的な仕事の仕方を改めて再点検し、一段レベルアップをしたい場合は、コンサルティングもキャリアのステップとして踏むのも、良いのかもしれません。