はじめに
「コンサルの使い方が上手いな」と感じるクライアントを、あえて極端な表現で分類すると、
・コンサルタントの使い方を知っている同業界出身者
・クライアント内で事業を真剣に考えている方
が多い印象を持ちます。
前者はマネージャークラス以上の経験があることから、依頼する際の論点が明確な傾向があります。
加えて、あたかもコンサルタントを社内メンバーのようにマネジメントするすべに優れている印象を持つことも少なくありません。
後者のクライアント内で事業を真剣に考えている人は、何をクリアすれば社内で前に進むのか(=論点)を考え抜かれている方が多い印象です。また、そのような方は出世する方と一致することが多いため、ある意味、コンサルタント目線でクライアント内の出世競争に対する票読みの材料とも言えます。
ここで表現している「コンサルの使い方が上手いな」と感じる方の定義は、
①プロジェクト期間中に解きたい論点(=創出したい成果)が明確な方
②コンサルタントが得意なこと、できる限界の境界線がわかる方
③コンサルタントに対してリスペクトのある方
となります。突き詰めるとコンサルタントはクライアントが数多抱える課題を解決する武器の1つともとらえられます。そのため、どのイシューに対して、どのような解き方が良いのか?が分かっている方が、上手く使えているのかと思います。
良くある例え話として、「包丁で木を切らない」というのがあります。包丁で野菜や果物は上手く切れたから、木も切れるだろう、という判断をしてはダメです。
ある課題を解決する際に、本当はエクセルの関数を組めば十分な話が、「RPAを導入しよう」→「いや、コンサルタントを雇って考えないといけない」→「しかもそのコンサルタントはITコンサルタントよりは、過去に弊社の経営課題を解決した戦略コンサルタントの方が良い」となってしまうようなパターンが、コンサルタントの使い方が上手ではないクライアントだと言えます。
コンサルの使い方が上手いクライアントと仕事をするメリット・デメリット
コンサルタントの使い方の上手いクライアントと仕事をするのは、一見すればメリットだけに見えるかもしれません。しかし、そのようなクライアントとばかり仕事を続けていると、思わぬデメリットに直面します。
前提としてお伝えしておきたいのは、ファームはコンサルタントを、採用後に使用し続けると価値が減少をし続ける資産(アセット)とはとらえていません。プロジェクトを投資し続けると価値が向上していく資本(キャピタル)としてとらえています。そのため、長期的な投資回収の観点でデメリットが存在し得るのです。
コンサルの使い方が上手いクライアントと仕事をするメリットは、以下のようなものです。
これらは、先程の定義と対応関係にあります。
・成果物への"炎上"が少ない
コンサルの使い方が上手いクライアントは、何を解くかを明確にします。
ゴールがずれることが無いため、「こんなはずではなかった」という炎上のリスクは少なくなります。
・計画通りに進む(ファームにとってのQCDも良い)
コンサルの使い方が上手いクライアントは、コンサルが得意なこと、出来る限界を知った上で計画を立てるので、計画外の問題は少なくなるでしょう。
・120%の気持ちで気持ちよく働くことができる
当然ですが、コンサルも人間です。リスペクトがなければ、おのずと姿勢にも変化が出てきます。
といったところです。
デメリットの側面としては、これもまた先程の定義と対応関係にありますが、
・(何を解くかが明確であるが故に、)自ら解くべきイシューを見抜き、定義する力が養われない
・(得意なこと、出来る限界を知る故に、)コンフォートゾーンを抜けるチャレンジする機会が少ない
・(リスペクトがある故に、)若い内は勘違いをしがちであり、又逆境や修羅場への耐性が弱くなる
となります。
最後に
さきほど「クライアントが数多抱える課題を解決する武器の1つ」と表現しましたが、その武器となるコンサルタントは人間であり、志や気持ちをもって仕事に取り組んでいます。また、プロフェッショナルとして、お金稼ぎの為にやっているわけではなく、社会や企業の抱える課題を解決して、世の中の役に立ちたいという気持ちで取り組んでいます。
一方で、その武器となるコンサルタントは変化しないものではなく、変化・成長をし続ける武器でもあります。私の知るクライアントの中には、若い内にセンスを感じたコンサルタントを"ひいき"にして、良質なプロジェクトを集中的に発注し、ファームでの出世を後押しするような方もいます。
結果、そのコンサルタントは恩に感じ、契約とは関係のない支援であってもクライアントに提供している例を知っています。
そのような上手いコンサルタントの使い方もある中、コンサルタントの立場としては、お互いのために、上手くコンサルタントを使いこなしてくれるクライアントが増えると、より社会的な生産性が高まるのではないかと考えています。