はじめに
コンサルティングファームのマネージャーというタイトルには、以前は特別な響きがありました。おもな戦略系ファームでマネージャーとして登用されるには、コンサルタントとしての経験と実績がほぼ必須だったからです。
例外的に、拡大ステージにある戦略系以外のファームでは未経験者がマネージャーとして採用されるケースが散見されました。しかし、メンバーとして下についたコンサルタントには「付加価値ありませんよね?」と言われ、クライアントや上からは「当初期待通りの価値を発揮してないよね?」と言われ、業界を去るかスタンプラリー(=監査法人系のコンサルファームを転々する隠語)を始めるかが、90%以上だったのではないでしょうか。
そのため、コンサルティングファームのマネージャーに就くというのは、一定の経験を積んだコンサルタントでなければなれない、しかも10人に1人の割合でしか上がれない、まさに「狭き門」だったと言えます。
しかし、時代は変わりました。
現在はコンサルティング業界のすそ野拡大に合わせて、役職が全体的に一つずつ低くなっているような状況です。現状に合わせると、シニアマネージャーやプリンシパルといった役職に上がる人の条件が、本日、皆さんにお伝えする内容として近いかもしれません。
言い換えると、各プロジェクトでしっかりとコンサルタントとして期待成果を出し続けている限りは、よっぽどの問題がなければマネージャーになれる、というのが現状と言えます。
しかし、その先のプロモーションを見据えるのであれば、マネージャーになる段階からも本日お伝えする内容を意識されると良いかと考えます。
3側面での期待役割
以前のマネージャー、現在だとシニアマネージャーやプリンシパルに共通する特徴は3つに大きく整理されます。
3つそれぞれにおいて実績を示す、または将来の伸びしろを感じさせる動き方や日々の振る舞いを見せることができると、プロモーション候補になっていきます。
(蛇足ですが、大きくなり過ぎたファームの場合、(きめ細かくもないのですが、)きめ細かい評価は出来ないという声も漏れ聞こえてきます。結局は社内で有名な案件にアサインされ、稼働率も良い人の評価が高くなる傾向とだと言われています。)
本題に戻ると、1つ目の特徴は
クライアント基盤を持っていること
です。これまでのコンサルタントとしての仕事の積み重ねの総合評価だと言えます。
クライアント基盤を築くには、ジュニア時代に一人のコンサルタントとしてデリバリーで成果を出し、クライアントに記憶される経験や、運良く相性の良いクライアントと出会えるだけの幅広いクライアントとの接点を持つ機会を多様なシニアから指名で貰う経験が不可欠です。
そういったことの総合評価として、クライアント基盤の有無が判断基準になっています。
2つ目の特徴は、
Thought Leader(ソートリーダー)になれていること
です。これは方法論や論考の纏め、寄稿・講演・書籍発刊といった対外的な発信を通じて、特定領域においてビジビリティを持つかということを意味します。つまり、自然とファームのレピュテーションを高め、そしてクライアント基盤が広がっていく欠かせない存在となれそうかという点が問われています。
そして3つ目の特徴は
ファームの成長に向けた運営への貢献をしていること
です。個別のプロジェクトでの成果や、一対一でのメンバーとのコミュニケーションだけではなく、仕組みや文化醸成まで含めたスケールで、基盤の底上げによる成長に貢献できる人材が求められています。
最後に
昔から「マネージャーにするかどうかは、その候補者が将来的にファームを引っ張っていくパートナーになれる素質を持つかどうかで判断する」とも言われて来ました。このことを具体的な要件に落とし込んでいったのが、今回ご紹介した3つの「マネージャー候補の特徴」と言えるでしょう。
どの特徴も重要ではありますが、特に重視したいのが3つ目の「ファームの成長に向けた貢献」という点です。これは単にコンサルタントとしてクライアントに価値提供をできるかどうかだけではなく、経営者として素質があるかどうかが問われているポイントです。
コンサルタントをしていると、現場の手触り感のある事業経営をしたいという理由で事業会社へ転職される方もいます。しかし、会社組織である以上、ファーム内にも経営の現場は存在しています。そのような多様なチャレンジの場があるコンサルティング業界に興味のある方はチャレンジしてもよいのではないでしょうか。