はじめに
コンサルティングのプロジェクトは1週間以下のものから何年以上続くものまでと、期間にばらつきがあります。いわゆる、コンサルティングのタイプは長期案件・短期案件の分類は基本はこの期間の長短により分けられます。
ただし、この期間の長短のみを指して長期案件・短期案件を分類しない場合もあります。たとえば、調査(フェイズ1)→戦略立案(フェイズ2)→実行(フェイズ3)というような一連の変革プログラムがプロジェクトとして実施されることがあります。
このような一連の変革プログラムのうち、一部を切り出して、あるいは派生として非常に短期でプロジェクトを実施しても長期案件として認識、呼称される場合もあります。
長期案件・短期案件の特徴
この長期案件・短期案件は期間の違いに起因する特徴が存在します。
実務上、大きく3点程度の違いが特徴的なものとして挙げられるのではないでしょうか。
1つ目はプロジェクト内での負荷波動です。プロジェクトは開始時と終了時の負荷が相対的に高い傾向にあります。開始時はスタートダッシュによりクライアントとの信頼関係をしっかりと構築する重要な期間です。
ここでボタンを掛け違えると、後工程でいかに良いアウトプットを出したとしてもマイナス評価されることが多いです。また、終了時は、神は細部に宿るではありませんが、全体の整合性や、コンセプトとやれる感を両立した抽象と具体のバランス、次の一手が分かる程よい粒度といったように、緻密な作り込みを必要とします。
この開始から終了までの期間が長い程、負荷の波動はゆったりとした波となり、短期だとずっと緊張を強いられる状態となります。
2つ目は、イシューを解いていく上での情報の変数と深さの違いです。
たとえば、BDD(ビジネス・デューデリジェンス)のプロジェクトは短期案件の代表格として大変なイメージを皆さん持たれているのではないでしょうか。しかし、企業価値を算出していく過程で作成するプロジェクションの変数は、長期案件で支援することの多い中期経営計画立案時よりも少なくてすみます。また検証のレベルも外部からの情報を主とすることから内部ケイパビリティの織り込みや実際に事業を担当をする現場の事情や感情には極力触れない状況のため、コミュニケーション戦略と言った実行を見据えた検討の深さにも限界があります。
このように、短期での緊張状態は低くなりがちであるものの、その検討の幅や深さは長期の方が、より要求水準が高いことが多くなります。
そして3つ目は、人付き合いの面での違いです。
あえて長々と説明することはありませんが、ポイントは長期案件になると成果の考え方が少し変わる点です。短期案件であると、成果として分かりやすい成果物のレポートを提出します。しかし、長期案件だと成果"物"を超えた経営層の意思決定の進展や職員層の行動変容といった結果にも目を向けられることが多くなります。
つまり、分かりやすく伝えるということ以上にコミュニケーションによる成果創出の貢献が大きくなるのが長期案件となります。
適したコンサルの特徴≠選択する案件タイプ?
長期案件・短期案件のそれぞれの特徴は整理を試みましたが、どちらかのタイプの案件では全く特徴として見られない訳ではありません。また、コンサルタントとしては、どちらのタイプの案件であっても対応が求められますが、この特徴を踏まえてどちらが自分に適している案件であるかを考えていくことになります。
適したコンサルタントの特徴と言う点では述べた通りになるのですが、実際にコンサルタントが長期案件・短期案件の特徴を踏まえて、適したタイプの案件を選んでいるかと言えば、そうでないのが実情ではないでしょうか。たとえば人付き合いのコミュニケーションが得意だから長期といった選び方をしている人はほぼいない感覚です。
自身を含めて周りのコンサルタントにも確認をしてみると、長期案件・短期案件の特徴を踏まえた得意・不得意ではなくコンサルタントとしてどう過ごしたいか?という志向性の観点で選んでいるとのことでした。
たとえば、様々な業界を経験したい、あるいは同テーマを何度も経験したいコンサルタントは回数を重ねることが出来る短期案件を好む傾向がありました。また、企業内の複数レイヤーを跨ぐダイナミクスを感じたい、結果まで伴走したいタイプは長期案件を好む傾向にありました。
最後に
クライアント・インタレスト・ファーストという言葉は有名ですが、この言葉も若干ニュアンスや解釈は人によって幅を感じることもあり、この点も志向性を形成する一要素になるとも考えています。たとえば、クライアント自身の成功を願うからインタレストに対して誠実に振舞うコンサルタント(故に、時にはクライアントの意思に対してもNoと言いつつ成果にこだわる)もいれば、純粋にイシューに対する最高の解にこだわるコンサルタントも存在します。お分かりの通り、前者の志向を強く持つ方が長期案件を選びがちであり、後者の志向を強く持つ方は短期案件を好む傾向にあります。
この一連の話での難しい点は適した適したコンサルの特徴と、コンサルタントが志向する案件タイプが必ずしもマッチしない点にあります。このようにコンサルタントになってからもキャリア形成に悩むことは多いかと思いますが、興味がわいた方はぜひチャレンジ頂ければと思います。