はじめに
多くのコンサルタントは、ファームに新卒で就職、または中途として転職をしたとしても、ファームの経営的な立場を担うパートナーになる前にコンサルティング業界を去っていきます。そして、コンサルティングの仕事を続ける場合でも、ファームに所属し続けるのかフリーとして独立したコンサルタントになるのかは人それぞれです。
フリーとして独立するコンサルタントは、若手からマネージャー前後までの経験を積んだ方がほとんどです。
ファームでマネージャー以上の役職まで到達し、一定の成果を残す人がフリーになるケースは現実にはほぼいないと言っても過言ではありません。ほとんどすべてがファームに所属し続けるか、ファームを出る場合でも別業界で新しいチャレンジをするかに二分されます。
なぜなら、マネージャー以上の役職まで到達すると、独立することで発生するリスクや報酬とのバランスから、一定の不満をもったとしても所属し続ける方がベターと損得勘定で割り切れてしまうためです。
また、ハイレベルのコンサルタントの場合、コンサルティング業界以外の企業でもそれなりのポジションを得られるチャンスに巡り合うことが多くなります。そのため、独立してまでコンサルティングを続けるぐらいなら他業界で新しいチャレンジをしたいと考える人がほとんどになるため、マネージャー以上の役職まで到達してフリーになる人はほぼいないという構造になります。
それでは、この若手からマネージャー前後までの経験したコンサルタントの内、独立する方とファームに所属し続ける方の違い、すなわち向き不向きの違いはどこにあるのでしょうか。
ワークライフバランス
1つは働き方の重心をコンサルティングの仕事かプライベートのどちらに置くかの違いです。
以前より深夜労働が減り、休暇がとりやすくなっているため、プロジェクトの間は旅行に行くであったり、仕事帰りにジムに通ったりといったプライベートの時間は一定程度は確保できるようになってきています。
しかし、組織に所属して働く以上はプライベートよりも仕事を優先する義務があることから、どうしても気を休めるタイミングは少なくならざるを得ません。
そのため、プライベートを重視する方はフリーになる傾向が強くなります。
例えば私の知り合いでも、半年稼いで半年遊ぶと公言して実践をしているコンサルタントがいます。力のあるコンサルタントとして、もう10年以上も同じような生活を続けています。200~300万円/月での稼働を半年続けると1千万円後半ぐらいに収入を得ます。自身で会社も設立されているので可処分所得を考えるとサラリーマンよりも余裕のある生活をしているとのことでした。なお、DD(デューデリジェンス)といったタイプのプロジェクトの場合、200~300万円/週といった単価で仕事を引き受けることもあるそうです。
"オレ"流へのこだわり
もう1つ大きな違いは、作成する成果物やプロジェクトの進め方に、こだわりだけではなく一定レベルの寛容さを持てるか否かです。
この違いは若手時代には見えづらく、マネージャー前後に立場になってから徐々に生じる分岐です。
例えば、メンバーの作成した資料をレビューする場合、レビュー後に行動として隅々(オブジェクト、日本語表現、等々)まで自分のテイストに修正しないと気が済まないか、あるいは一定の違いを許容できるかの違いです。
もちろん違いを許容することがクライアントへの価値の品質を落とすこととイコールではありません。違いがあったとしても成果物を通じたメッセージやそれによって生じる行動変容が促せるレベルであれば許容するという意味合いです。
そして、自分流へのこだわりが強いタイプの方が行きつく先は、「メンバーに任せるよりも自分で手を動かした方が早い」「価値を出してないメンバーを養うためにクライアントに高いフィーを請求しているのは耐えられない」といった考えです。こうなると、フリーの立場でのコンサルタントを選択していくようになります。
最後に
今回説明した向き不向きの違いを分ける要素以外にも、「組織内でのしがらみが面倒」「クライアントへの付加価値を生まない余計な会議が嫌だ」といった理由で組織を飛び出していく方もいます。
ただし組織を飛び出したとしても実力が確かであれば仕事はできます。コンサル業界は、他業界と比較してもフリーの立場で仕事をしている方の割合が多いのではないでしょうか。このように組織で生きていく行き方、組織に縛られない生き方、どちらも選びやすい業界ではあるので、皆さんもそのようなキャリアとしての幅の持ち方を考えられるのであれば、ぜひ挑戦をしてみてはいかがでしょうか。