はじめに
コンサルティングファームでは通じるものの、事業会社ではあまり聞きなれない役職タイトルがいくつか存在します。
その中でも、代表的なタイトルが「プリンシパル」・「ディレクター」といった役職タイトルではないでしょうか。
正直なところ、役職タイトルの上下関係は、各ファーム毎にファームの創業地域・国におけるビジネス慣習に従って設定されることがほとんどです。
例えば上下関係だと、あるファームでは「ディレクター>プリンシパル」であり、またあるファームでは「プリンシパル>シニアマネージャー」、またあるファームでは「シニアマネージャー>ディレクター」と、様々です。また、役割もそれに従いファームごとに異なります。
このような理解を前提に本記事での"ディレクター"は何者かを最初に記載しておくと
● 特定領域における専門知見を深く持ち
● シニアであるもののパートナーが担うマネジメント業務やセールス業務の責任は薄く
● どちらかというとプロジェクトデリバリーの品質向上やマーケティング活動を通じたファームのビジビリティ向上に責任をもった立場の方
となります。こういった責任の方々をファームによっては名称は異なりますが"ディレクター"と位置付けています。
ディレクターの仕事内容
先の定義を見れば、なんとなく仕事内容も想像つくかもしれません。ディレクターの役割を改めて整理すると、当然、コンサルタントとしての基本的な素養は持った上で、
① ジェネラルな組織運営/マネジメントより専門的な知見やケイパビリティの提供と発揮
② 個別営業での売上よりもマーケティングを通じたファーム全体のビジビリティ向上
③ 1つのプロジェクトでしっかりとデリバリーよりも多くのプロジェクトでのアドバイザー
が期待されます。そのため、それぞれに紐づく形でディレクターの仕事内容が整理され、
① →オファリング作成、営業資料における専門領域パート作成、社内講師、等
② →執筆、講演、政府機関等の委員会への参画、等
③ →社内レビュー、クライアントミーティング参加での一部パートの説明、現場視察、等
といったところが主な仕事内容となります。
ディレクターが活躍するプロジェクトの例
コンサルタントはクライアントよりも多様な業界やビジネス、企業を知る機会が多くなります。
そのため、ベストプラクティスや学べる点のアナロジーを見出すことを通じて、クライアントへの価値を出していくアプローチもあります。一方、クライアントは位置する業界や研究開発する技術や販売製品といった特定領域においてはコンサルタントよりも多くを知っていることがほとんどです。
そのため、クライアントによっては「俺たちより知らない外部の人に何ができるんだ?」という考えを持たれる方に会うこともあります。
時にはストレートに言われることもありますが、重要なことは特にはじめてお付き合いを始めるクライアントは多かれ少なかれ、こういった考えを持たれています。
そのため「はじめてのお付き合いで、コンサルタントが値踏みされるプロジェクト」においては、ディレクターが非常に活躍します。派生として「工場・倉庫視察やインタビューが必要なプロジェクト」においても非常に重宝されます。
また、その他ディレクターが活躍することが多いプロジェクトは、ご想像の通りかもしれませんが、インサイトやオファリングベースでの価値提供というよりは、知見ベースでの価値提供が求められるプロジェクトです。無双状態と言えるでしょう。
例えば資料作成時に、インタビュー先、HP、雑誌といった、情報の出所を記載することが求められるのですが、ディレクターが「出所俺」といった冗談を言いながら資料作成することもあります。
最後に
パートナーとなるには、実力に加えて社内でのデリバリー基盤やクライアント基盤の構築といった運も必要になってきます。一方で、"ディレクター"はコンサルタントとしての専門性を追求していけばたどり着ける役職タイトルでもあります。
"ディレクター"はパートナーとは異なる一つのプロフェッショナルの姿です。
コンサルティングに興味を持たれる皆さんも、そういったキャリアパスがあるということを認識して採用試験に臨んでいただければと思います。