はじめに
時代錯誤と言われそうですが、コンサルティング業界において「疲れない」日はありません。
労働時間の総量が多いことに加えて、プロジェクトベースでの働き方となる点も疲れやすさを促進する要素でもあります。
新たなプロジェクトが開始されるたびに人間関係を構築し、同時に未経験の産業やテーマへのキャッチアップ、そしてクライアントも社内では対応しきれないから外部に依頼をしている難しいイシューをいかに解いていくかを考えていきます。そして、慣れたと思ったころには別テーマのプロジェクトが始まります。
また、同じようなコンサルティング働き方を生き抜いてきた上司たちから厳しく、また、ぐうの音も出ないフィードバックを日々浴び続けます。
そういったストレッチした環境の中で、今でも筆者自身は布団に入ると10秒たたずに寝ることができます。また、若手コンサルタントの中には翌日起きられるのかが不安だからわざわざ固い床で寝ているという方もいます。なお、蛇足ですが、このコンサルタントは、それでも起きるのが大変になり、目覚ましを1個2個と増やしていったそうです。
しかし、それでも「辞めたい」といった決断をしないのは、疲れ方が心地の良い疲れ方と心地の悪い疲れに分けられる内、コンサルティング業界での疲れの大半は心地の良い疲れ方だからではないでしょうか。いわゆる、「コンフォートゾーン」から抜けてチャレンジをし続ける状態での疲れと言えます。クライアントへの価値提供に向けて必要な疲れであるという認識を持つ限りは、部活で強くなるためにトレーニングをしている感覚と一緒で、日々のハードワークは心地の良い疲れと言えます。
心地の悪い疲れ方
一方、心地の悪い疲れ方も存在します。
主に広義の意味で人間関係に起因する疲れ方が多いとは思いますが、例えば
「イシューを捉えて上司からクライアントにとって価値のない作業を指示されて、無駄な作業で忙しくなっている」
「優先順位が低いタスクと上司に指摘したら、論理的な説明もないまま感情のままに否定され、心理的な虚無感を持つ」
「イシューを捉えてないのが軌道修正されないまま、そして自身でも納得しないまま作業をしてクライアントへ提示して、やり直しとなる(そして、リカバリーの時間が追加で必要となり、さらに働く必要がでてくる)」
といった時に、心地の悪い疲れ方をします。
これまでの経験から、傾向として、最終的にクライアントの行動変容に繋がる形でイシューを解いていくという軸に対して、違った論理(社内事情、立場、自己顕示、等)に基づくコミュニケーションを他者からとられた時に、コンサルタントは心地の悪い疲れ方をすることが多い印象は持ちます。
対処法
もちろん、心地の良い疲れ方をしていても辞めたいといった心理状態になることがあります。その場合、一定期間を休んでリフレッシュをすれば、たいていの場合は前向きな気持ちになれます。
一方,心地の悪い疲れ方の場合は、一定期間を休んでだとしてもなかなかリフレッシュすることはありません。
色々なファームを見ていますが、心地の悪い疲れ方を引き起こすコミュニケーションが起きている場合、残念ながらプロジェクトが変わったとしても同じことが続く場合が多いです。それは、心地の悪い疲れ方を引き起こすコミュニケーションが生じていても問題がないといったファームの体質、カルチャーに起因する構造的な要因が存在している可能性があるからです。
そのため、対処法としては転職活動を始めることをお勧めします。ただ、転職活動に際しては業界を辞めたいか、ファームを辞めたいかを見極める必要があります。そして、早めに業界内の知り合いやエージェントから情報収集をしていくことをお勧めします。それは当然ですが、どの企業にも良い点/悪い点があるので、その中で自分にフィットする場所に出会えるかが重要になります。
そのため、その良い点/悪い点を相対的に比較ができる状況にもっていくことが、悶々と心地の悪い疲れ方をひきずるよりは合理的であると考えるためです。
また、その過程で、結局、色々と考えると今の状況も悪くない方かもしれないと思いなおし、心地の悪いと思っていた部分も一定受け入れることができるようになることもあります。
最後に
私自身も疲れた、辞めたいと思う場面は多々ありますし、最近も思いました。ただ、その際に嫌になった原因から離れてリフレッシュしたり、また定期的にコンタクトをしているエージェントと会話をしたりすると、「色々とあるけど、よくあることだから、まぁ、いっか。」という心理状態に変わります。
また、以前より書いているかもしれませんが、「終わらないプロジェクトはない」というのが、この業界でよく言われる言葉でもあります。そのため、疲れることは日常茶飯事ですがプロジェクトベースで動くコンサルティング業界だからこそ、一過性の疲れにより軽々な判断を下さずに、腰を据えてコンサルティングと向き合うことを、今いる方も、これから目指されることもお勧めします。