はじめに
ウェビナー(Web経由でのセミナー)の浸透に伴い、以前よりコンサルタント向けキャリアセミナーが開催される機会は増えています。開催される目的はほぼ自社を志望する採用母集団の形成にあります。
但し、コンサルティング業界自体の拡大に伴い、ここ数年の傾向としては、そもそもコンサルティング業界に興味を持ってもらうセミナーといった、自社を志望する採用母集団の前段階となる母集団の裾野を広げるセミナーが増えてきました。例えば、よく持たれているネガティブなイメージの払しょくを目的とした「コンサルティング業界のワークライフバランス」「女性コンサルタントの活躍」といったセミナーです。
また、自社の会社紹介のためのキャリアセミナーというと、そのファームに興味を持っていない場合はセミナーへの参加は見込めません。そのため、「ケース面接対策」「ロジカルシンキングとは」といった、コンサルティングファームへの転職を狙う人が必要とするスキルや考え方を学べるといった立て付けで集客するセミナーが存在します。キャリアセミナーの一部に会社紹介を入れ込むことで、あるいはインタラクティブに受講生とコミュニケーションをとることを通じて、「このファームは今まで候補に考えていなかったけど、受けてみてもいいかも」という気にさせるものです。
このように、コンサルティング業界で主催されるキャリアセミナーはバリエーションに富みますが、その中で業界を知っているコンサルタントに向けてわざわざ実施するキャリアセミナーも存在します。つまり、ラテラルでの転職を狙ったキャリアセミナーとなります。
コンサルタント向けキャリアセミナー
業界経験者向けのキャリアセミナーとして、今更何を経験者へ説明する必要があるのかと思われるのではないでしょうか。実際のところコンサルティング業務という名称は同じであるにせよ、ファームごとに特異なオファリング、クライアント、アサインメントの運用方法、各ランクの役割といった様々な観点で実際のところは異なります。
また、同じプロジェクトのテーマであったとしてもスコープや進め方は異なります。例えば「新規事業策定」といったプロジェクトは、どのファームにも存在するプロジェクトかと思います。しかし、実際のプロジェクトの内容を見てみると、クライアントが考えていることを上手く引き出して纏める(言い方を悪くすると、言われたままに絵に落とすだけ)ことを新規事業プロジェクトと言っているファームもあれば、提案段階で一定の新規事業仮説を提示し、その仮説が確からしいかの検証を進め、PLの営業利益までを試算することを新規事業プロジェクトと言うファームも存在します。
実際に、私自身もコンサルタント向けキャリアセミナーを開催していますが、その中での質疑として多く受けるのは「どんなプロジェクトタイプが多く、実際にどんな進め方をするのか?特にシニアクラスの関与の仕方はどうか?(成長に貪欲な若手はパートナークラスとの接点を多く求めていることが多いため)」、「アサインメントはどのように決まっていくのか?同じようなシニアメンバーに囲われてしまい、アサインされる案件幅が少ない」といった点です。質問は正に各コンサルタントが入社後に悩みとして抱える点であり、他ファームでは実際はどうなのかといったファームごとの違いを明らかにしたい質問が多くなります。
最後に
以前のコンサルティング業界では、若手コンサルタントの転職は知り合い伝手が一般的でした。しかし、近年ではコンサルティング業界でも転職エージェントの利用が一般化し、多くの優秀な若手コンサルタントが転職を考えた際に「まずエージェントに登録する」という流れができてきています。
そのような中で、未経験者の立ち上がりに対して問題意識を持つファームも増えてきており、コンサルティング業界において一定の経験を持つ方へのニーズは高まってきていると感じています。そのため、今後もコンサルタント向けのキャリアセミナーは増えていくのではないかと思っています。
なお、キャリアセミナーに参加して質問を多くしているからといって選考水準が緩くなり、通りやすくなることはありません。しかし、最終面接に近い段階では「そういえば、彼はよく質問していた人だよね」といった情報はよく入ってきます。そのような情報があると、最終面接に近い段階では好印象で始まることが多く、追い風になることは間違いありません。そのため、現在コンサルタントの皆さんにおいて、ラテラルでの転職を考えている方は参加してみてもよいのではないでしょうか。