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株式会社アダストリア 注目企業インタビュー

注目企業インタビュー

株式会社アダストリア

株式会社アダストリアは「GLOBAL WORK」「niko and ...」「LOWRYS FARM」など30以上のブランドを展開するカジュアルファッション専門店チェーンで、今年70周年の節目を迎える企業だ。2023年2月期の連結売上高は過去最高の2,425億円を超え、国内アパレル企業ではファストリテイリング(ユニクロ)、しまむらに次ぐ規模となっている。中期経営計画では2026年2月期の売上高2,800億円を目標に掲げ、次の成長に向けた投資や人材採用を積極的に行っている。今回、執行役員兼マーケティング本部長の田中順一氏にインタビューを実施した。田中氏は同社の大きな成長源でもあるECサイト「.st」(ドットエスティ)の立ち上げをリードした経験を持つ。同社のビジネスから今後の展望、同社で活躍できる人材など幅広にお話を聞いた。

まずは、自己紹介として田中様ご自身について教えてください。

新卒で通販会社に入社し、マーチャンダイジング(MD)を経験しました。その後、WEB広告代理店を経て、2011年にアダストリアの前身である株式会社ポイントに入社しました。転職したのは、プロモーションだけではなくビジネス全体に影響を与える仕事をしたい、そのために事業者側に行きたいと考えていたところ、運良く声が掛かったのがきっかけで入社しました。当時ECはまだ立ち上げ間もなく、本格的に拡大しようというフェーズでした。それまでECに携わった経験はありませんでしたが、今後の発展可能性を感じ、チャレンジすることにしました。
2014年にローンチしたECサイト「.st」(ドットエスティ)の立ち上げをリードし、現在は 執行役員兼マーケティング本部長としてEC、広告宣伝、広報などの領域を統括しています。

連結売上高は過去最高を更新。進化し続けることがアダストリアの強さ

アダストリアのビジネスと他社との差別化を教えてください。

アダストリアは今年10月に創業70周年を迎えるアパレル企業です。もともと茨城県水戸市で紳士服の小売店としてスタートし、今では売上高2,400億円を超える企業に成長しました。

他社との差別化は、 ①マルチブランド展開 ②商材もライフスタイル全般の幅広さ ③事業規模です。ライフスタイル展開を行うのは、お客様の日常は服だけではないためです。アダストリアと接点を持つことで、お客様の日常が豊かになることを目指しています。アダストリアはマルチブランド展開を取り30以上のブランドを通じて、異なる感性を持ち多様なライフスタイルを送るお客様1人ひとりのニーズに応えています。事業規模は、リアル店舗約1,300店舗超、「.st」会員数1,550万人超と、国内アパレルでも大規模です。ECの成長が著しいと言われていますが、ブランドの世界観を五感で感じられるリアル店舗はブランドビジネスにおいて重要です。これは、コロナ禍を経て再認識しました。リアルとオンラインの双方があるからこそのシナジーを発揮しています。

アダストリアの強みは何ですか?

株式会社アダストリア:執行役員兼マーケティング本部長 田中順一氏

常に変革し、進化し続けられることです。これまで大きなビジネスモデルの転換点が4度ありました。1度目は1970年代、紳士服からメンズカジュアルへの転換です。もともとは水戸市で紳士服を扱う小売店でしたが、当時水戸で空白となっていたメンズカジュアルに転換したことで売上を大きく伸ばしました。2度目は1980年代のチェーンストア展開、3度目は1990年代のOEM/ODM生産への移行と「LOWRYS FARM」などストアブランドの展開です。そして、4度目の転換は2010年代の垂直統合型SPA体制への移行です。商品企画から生産機能までを内製化し、現在に至ります。時代の変化に合わせて、会社の仕組みごと変えるような大きな転換をドラスティックに行ってきました。

そして、現在推進しているのが「グッドコミュニティ共創カンパニー」への転換です。アパレルカンパニーに留まらず、他社や地域など社外のステークホルダーとの連携を深めることで新たな価値を創出し、グッドコミュニティを共創できる企業へと転換しようとしています。

「グッドコミュニティ共創カンパニー」の実現に向けて、既に動いているアクションはありますか?

一つは「.st」のオープン化です。「.st」はアダストリアのECサイトとして、自社ブランドのみを扱ってきましたが、2022年4月に他社ブランドの取り扱いを開始しました。家電や美容機器など、アダストリアでは扱っていない商品を提供する5社に参加いただいており、今後もさらに拡充予定です。私たちはお客様のライフスタイルを豊かにすることを目指しており、お客様もまた、アダストリアを通じてライフスタイルを買っています。「.st」によってライフスタイルのより広い領域をカバーできた方がお客様にとってもハッピーです。オープン化を始めて以来パートナー企業との深い対話も増えました。共に刺激し合っている感覚もあり、グッドコミュニティ実現に向けて大きく前進していると感じています。

これまで培ったアセットを活用し、新たなフェーズへと移行する大事な時期。これからのアダストリアを共創する人材を採用したい

2023年2月期の売上高が過去最高を記録しましたが、この成長には何が貢献していると考えますか?

一つは、リアル店舗とECとの総合力の高まりが、コロナ禍が落ち着いた後も大きく跳ねたと考えています。もう一つは、これまで積極的に行ってきたM&Aです。アパレル企業は勿論、ライフスタイル展開の一環として、ハワイアンレストランの「アロハテーブル」を手掛ける飲食企業のゼットンや子供服のオープンアンドナチュラルなどの異業種もグループ化してきました。今後もM&Aも含め更なるシナジーが発揮されることを期待しています。

田中氏立ち上げた、「.st」の会員数が1,550万人に達したという報道も見ました。なぜここまで増加を続けることができたのでしょうか?

これは、リアル店舗と店舗スタッフのおかげです。お客様とアダストリアの最大のタッチポイントは1,300を超えるリアル店舗です。リアル店舗ではブランドの世界観を五感で体感でき、「.st」に登録するモチベーションに繋がります。また、店舗スタッフがお客様と直接会話して「.st」への誘導することもできます。

「.st」を立ち上げた際に、ECとしての最適を追求するのではなく、ブランドの魅力を表現するリアル店舗とどのように融合すべきかを考えました。全社のインフラとしてどのような立ち位置であるべきか、ブランドとの関係性、リアル店舗との関係性はどうあるべきか、アダストリアのパワーを最大限発揮できるにはどうすべきかなど模索しました。そのプロセスの中で、店舗スタッフを始め多くの同僚たちとコミュニケーションを取りました。そこで私が感じたのは、彼らが自分のブランドが大好きであるということ。ブランドを成長させるための協力を惜しまず、様々なアドバイスや提案をしてくれました。彼らの提案の中には、普段本社で数字を見ていては気づけない、目から鱗なアイデアも数多くありました。そうした協力があってこそ「.st」は成長できたと思います。

今後、この会員数というアセットをどのように活用していこうと考えていますか?

これまではブランドの成長のため会員数増加に注力してきましたが、ひと段落したと思います。これからは、こうして培ってきたアセットを活かし、社内外のステークホルダーと連携しながら、新しいアダストリアを創造するフェーズです。アダストリアには顧客基盤、ブランド、チャネル、データなど、業界最大級のアセットがあります。これらのアセットを活用して新たな事業や仕組みを立ち上げる、次の種を蒔く時期がまさに今です。

これが、現在私達が全社で採用を強化している理由です。アダストリアは自由度が高いフィールドです。意思を持ち、社内を納得させることができる方であれば、やりたいことを実現できる会社です。この環境でこれからのアダストリアを共創してくれる仲間を採用したいと思います。

今、次のフェーズに向けて何か具体的に構想していることはありますか?

私はECを単に商品を売る "E-Commerce"で終わらせずに、アダストリアというフィールドを使って体験を提供する"Entertainment Community"に育てていきたいと考えています。お客様同士が繋がったり、スタッフとお客様が繋がったり。リアル店舗があるからこそできることもありますし、オンラインという1対nのタッチポイントだからこそできることもあります。まだここで具体的な話はできませんが、現在いくつものプロジェクトが動いているので、今後の発表をご期待ください。

マルチブランド展開だからこそ、全方位のコミュニケーションが重要。グローバル人材、DX人材も積極的に採用

これからのアダストリアを創っていく仲間を採用しているとおっしゃいました。どのような方に来てほしいと考えていますか?

まずは全方位的なコミュニケーションが取れる方です。何かを推進する際には、30以上ものブランド、そして様々な部署との連携が欠かせません。本社で数字だけ見ていても分からないことは多々あり、彼らとのコミュニケーションはとても大切です。私も部門を統括する立場になった今も、様々なブランドや部署のスタッフと会話することを大切にしていて、日々キャッチアップしています。全方位的なコミュニケーションを取れる方であれば、活躍できる可能性は高くなると思います。

そして、お客様のことを見ようとする方です。アダストリアは、スマートに仕事をするというより、お客様のことを考えながら地道に改善を重ねる店舗起点のカルチャーを持つ会社です。アセットを活用して、大切なお客様のことを想像し、成果に繋げることが求められます。

様々な部門で採用を行っていますが、特に海外展開やDXを強化しているので、グローバル人材やそしてDX人材の方も積極的に採用しています。

海外事業はどのように展開していますか?

台湾、香港、タイなどアジアを中心に事業拡大しており、海外市場向けにリアル店舗を約80店舗、EC店舗を約20店舗出店しています。市場環境は国や地域で異なるため、基本的には現地のチームが主導しますが、グローバル本社として日本側で関与することも多々あるので、グローバルな視点を持った人材の方に是非ジョインしていただきたいです。

DX人材の採用についても教えて下さい。

アダストリアはDXへの投資が非常に大きい会社です。「.st」の進化にはDXは欠かせませんし、店舗間を繋ぐDXや、働き方改革を推進するDXなど多岐に亘るプロジェクトがあります。事業を深く理解し、要件定義から、これからのDXを創っていけるDX人材を積極的に採用しています。

アパレルの知見・経験は必須でしょうか?

多種多様な業界のパートナーと協力しながら、新しい価値を創造するフェーズなので、私達自身も社内に色々な視点を取り入れたいと考えています。アパレルのバックグラウンドは必須ではなく、むしろ多様なバックグラウンドの方にきていただきたいです。

最後に、貴社を目指す方へメッセージをお願いします。

アダストリアは業界でも大規模の会社です。これまで培ってきたアセットがあるので、ゼロベースのベンチャーとは異なります。アダストリアのアセットとご自身がやりたいことがマッチすれば、大きなことを成し遂げられます。既存のアセットをいかに活用して自分が見たい景色を見に行くか、というマインドセットの方であれば非常に良い環境です。そして成果をあげれば登用機会も多い会社です。マーケティングやDXなど本社社員は7~8割が中途です。私自身も中途で入社して10年、EC未経験からのスタートでしたが、色々と任せて頂く事が多いです。

今後推進する「グッドコミュニティ共創」を実現するには、能動的な社員同士がコミュニケーションを取ることでシナジーを生むことが重要です。熱意を持って仕事をしてくださる方に是非来ていただきたいです。

プロフィール

写真:田中 順一 氏

田中 順一 氏
執行役員兼マーケティング本部長

カタログ通販、インターネット広告代理店を経て、2011年にアダストリアに入社。2021年3月より現職。EC、データ、デジタル戦略などを統括する。

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