垂直統合型のSPA体制を強化する中で高まる、ロジスティクス部門の重要性
最初に、お二人のご経歴をお聞かせください。
【中嶋】私はアパレル企業に入社し、販売員からスタートして営業を経験した後、ロジスティクス部門に異動し、トータルで20年ほど在籍しました。ビジネスのことは全て、アパレル業界に一から教えてもらったと思っています。
2017年にアダストリアに入社し、以来、一貫して物流を担当しています。2019年にロジスティクス本部の部長および子会社であるアダストリア・ロジスティクスの代表取締役に就任し、国内の店舗、ECサイト「アンドエスティ(and ST)」、海外物流を含めた物流全般が管掌範囲です。
【大塚】私は新卒で書店に入社し、販売員としてキャリアをスタートしました。オーストラリアの店舗に4年間出向したことを機に、初めて物流に関わるようになり、その経験をもとに日本に帰国後、外資系のメーカーで物流業務を経験しました。2015年にアマゾンに入社して7年ほど在籍する中で、さまざまなサプライチェーン・ロジスティクスのプロジェクトに従事した後、2022年6月にアダストリアに参画しています。
アダストリアでは物流拠点やその機械化中長期計画や、各物流拠点への商品の配置計画、1カ月単位での入荷・出荷に関する対応といった短期計画など、スコープの長さによって設定している業務目標があり、それぞれの目標において安全、生産性、コスト、品質と、大きく4つの指標をもってマネジメントしています。
転職先としてアダストリアを選んだきっかけや、理由は何でしたか。
【中嶋】大げさな表現になるかもしれませんが、自分を育ててくれたアパレル業界への恩返しとして、マーケットを大きくしていきたいという思いがありました。物流というと、コスト重視のイメージがあり、「お金をどう削るか」という一面で語られがちです。しかし、その考えだけではマーケットは縮小の一途をたどってしまうと感じています。物流を通じてマーケットを大きくするためには、マーケットの中のリーダー的な企業にいて、業界を牽引していかなければならないと考えていて、アダストリアはそれが実現できる企業の一つでした。
また、ロジスティクスは、製造部門と販売部門をつなぐ役割を担えると考えていたことも理由の一つです。
アダストリアは4度、大きなビジネスモデルの変革を行っており、垂直統合型のSPA体制づくりを強化してきました。すなわちブランドの開発から商品企画、生産、物流、販売までをグループ内で一貫して行っています。
私が入社した当時はまだ製造と販売の間に少し距離があるように感じることも少なからずあり 、「両者をつなぐロジスティクスのチームが活躍できる場がある」と感じました。ロジスティクスチームの活躍が広がるにつれて、会社としても大きく成長していけるはずだと、期待が持てました。
【大塚】私の場合、物流視点で転職先を探しており、選択の一つの基準としていたのは「規模感」でした。複数社での勤務を通して、限られた商材を扱う小規模のメーカーも、アマゾンのような巨大組織も経験してきましたが、やはり物流に関わる以上、ある程度の取り扱い物量があるほうが、新しい取り組みの効果が目に見えて現れるので面白さを感じます。
その一方で、会社全体を見渡すことができ、自分の考えや意見をチームメンバーや社内の他の部署のメンバーにしっかりと伝えられる規模であることも重要でした。アダストリアはこの感覚に合致したんです。
ロジスティクス本部の役割や特徴について教えてください。
【中嶋】ロジスティクス本部には現在約20名が在籍しており、大塚がリーダーを務めるロジスティクス企画と、海外の流通を担当する貿易チームの二つに分かれています。45を超えるブランドで展開する、国内外の約1500店舗で取り扱う商品や、ECサイトで販売されるもの、海外に流通させるものなど、ほとんど全ての商品の物流を担っています。
自社で物流子会社(アダストリア・ロジスティクス)を持っていることはアダストリアの大きな特徴です。そのことで、他の物流会社に外注するより、最終的に商品をお届けするお客様の存在をとらえやすくなると思います。また、母体となるアダストリアの方針と足並みを揃えることもしやすいですし、改善点があればスピーディーに対応することができるのもメリットです。
EC物流センターのオートメーション化を機に、物流が投資の対象へと変化
これまで手掛けられたお仕事の中で、代表的なプロジェクトを教えてください。
【中嶋】2022年7月に、茨城県にあるEC物流センターが機械化されたのは大きな変化点でした。大型マテハン機器、AGV(棚搬送ロボット)を導入しての大規模なオートメーション化は初めての試みでしたが、当時はECサイトの成長に物流業務が追いつかないこともあり、機械を入れて生産性を上げるという選択肢しかなかったという事情もありました。
ただ、必要に迫られて実行したプロジェクトだったとはいえ、会社全体がマインドチェンジしていくために大切な経験だったと感じています。それをきっかけに、ロジスティクス本部をもっと骨太の組織にしていかなければならないという意識が生まれました。
【大塚】私が入社したのは、ちょうどそのEC物流センターの機械化がローンチした頃でした。当時の私の主な役割は、それまではあまり先々の計画を立てるということができていなかったところに、長期、中期、短期での計画を立てて実行し、さらにそれを修正して、また実践していくというサイクルをつくることでした。
そこから2年半ほどかけて、計画を元に運営し、実績をみながら軌道修正をしていくサイクルの実行はずいぶん定着してきたと感じています。毎年、1年先の計画を追加して更新をしていくというサイクルは実現できていますし、現在は3年先の拠点の機械化の話を具体的に進めています。現場の意見を取り入れながら、何にどれくらい投資すべきを議論できるようになってきたと言えると思います。
そうしたプロジェクトの成果によって、会社のカルチャーに変化を感じることはありますか。
【中嶋】弊社では「コミュニケーション」や「議論」という言葉がさまざまなところで頻繁に登場するのですが、その質と量が、圧倒的に上がったと感じています。なにより、コミュニケーションを重ねたことにより、「信頼されているな」と感じることがとても多くなったのは大きな変化です。
店舗運営を監督しているスーパーバイザー職のスタッフや、MD職のスタッフから、秋冬の繁忙期に忙しくしていると「何かできることがあったら言ってください」と声をかけてもらったり、「ロジスティクス本部のおかげで、いつも助かっています」と、感謝の言葉をもらったりすることも増えました。
【大塚】EC物流センターのオートメーション化は投資金額も大きかったですし、社内の他の部署のスタッフに、ロジスティクス本部のやっていることが広く認知されるきっかけになったと思います。
また、会社としても、物流に「投資する」という意識を持つようになりました。ただ商品を動かす作業を行っている受け身なイメージだった物流が、物流をよくしていくことが事業を成長させるためのドライバーになるんだというイメージに変わり、社内に浸透してきていることを感じます。
リーダーシップを持って計画を立案し、実行と修正を繰り返していける人が活躍する
アダストリアおよびロジスティクス本部が描く、今後の展望について教えてください。
【中嶋】会社として目指す姿は、現会長の福田が口にする『昔はアパレル会社でしたよね』と言われたい」という言葉に表れていると思います。アダストリアは福田屋洋服店という紳士服小売業でスタートし、複数回のチェンジを経て、現在のようなマルチブランドを抱えるカジュアルファッションチェーンへと成長してきました。
我々がミッションに掲げている「Play fashion!」にも、単に衣料を楽しむという意味だけでなく、マルチブランド・マルチカテゴリーをベースに、「住」や「食」などを含むさまざまな要素で毎日をワクワクさせる企業でありたいという思いが込められています。
人・企業・地域とともに"グッドコミュニティ"を共創するカンパニーを目指し、お客様、取引先、従業員を含めて良いつながりを持ったコミュニティを作っていこうという思いが、会社の成長戦略にもつながっています。
ロジスティクス本部は、そのコミュニティにおけるさまざまなステークホルダーを「つなぐ」役割を担っていることもあり、その重要度は今後も高まっていくだろうと予想しています。商品の流通の効率化といったことだけでなく、そこに「どんなサービス、体験が付随してくるか」といったところまで考えることが必要になってくるでしょう。
【大塚】アダストリアは、アパレルを主体としながらも、マルチブランド、マルチカテゴリーで、ライフスタイル全般に事業領域を広げています。その拡大に伴い、ロジスティクスにおいては、これまでに取り扱ったことのないような商品が今後どんどん増えていくことが予想されます。
たとえば、2024年にグループに加わった「TODAY'S SPECIAL」では、グリーン事業として観葉植物を扱っていますが、アダストリアとしてはこれまでにないジャンルです。ロジスティクス倉庫のオペレーションと一言で言っても、商品のカテゴリによって取り扱い方法は異なります。新しいジャンルの商品を扱うことで、オペレーションにも新たな知見が溜まっていくはずです。
ロジスティクス本部で求められる人材像について教えてください。
【中嶋】長期的な視点を持って、戦略的に計画を立て、実行してくれる方にぜひ仲間になっていただきたいです。目下、ロジスティクス本部では、オートメーション化を推進しているところです。リーダーシップを発揮しながら、丁寧に計画を引っ張ってくれる人を求めています。
その上で、常にお客様のことを考えられる人材であるか、という点はとても重視しています。
また、海外物流に対する着手はまだまだこれからという段階でもあり、今後販売国も増える予定ですし、長期的な視座を持ちながら計画的に進めていける人を必要としています。ゼロから1を作るような仕事ですから、チャレンジ精神を持った方が活躍できると思います。
【大塚】変化が大きく、予測しづらい環境の中でも、徹底的に考え抜いて、きちんとリスクを取って意思決定ができる人が向いています。アダストリアはスピード感をもってどんどん変化しているので、「3年後には必ずこうなる」「来年はこのくらいの商品数を出荷する」といったような絶対的な情報はありません。
常に変わる可能性のある情報しかない中で、その時点で考えられる要素を徹底的に集めていって「こういう風に進んでいこう」と決断していくことが必要になると思います。「データがないからわからない」、「まだわからないから計画は立てられない」ではなく、その都度きちんと判断していける人を求めています。
また、自分で作った計画を自分で修正していかなければならない局面も多々あります。思考停止することなく、臨機応変に修正しながら、力強く実践できる人に来てほしいです。
最後に、この仕事に興味を持った方へのメッセージをお願いします。
【中嶋】私は、大塚を採用したことが「自分の中で最も大きな仕事だった」と言えるほど、人材の採用は重視しています。
現時点ではロジスティクス本部が組織として大きく変わる予定はありませんが、会社自体も成長を続ける中で、何が起こるかわかりません。たとえ変化があったとしても、良い人材に対しては常にウェルカムな状態を作っておきたいと考えています。一緒に成長していける方に、ぜひジョインしていただきたいです。
【大塚】現在のロジスティクス本部は、アダストリアの店舗で販売を経験した後で異動してきたプロパーの人材と、私と同じようにロジスティクスのプロだと自負して入社している人材がちょうどよくミックスされている状態になっています。
アダストリアのことが大好きで、会社や商品のことを熟知しているプロパーの人材も、ロジスティクスの理論と実践を熟知している人材も両方大事で、両者の考えやスキルを組み合わせて、「アダストリアにとってベストなロジスティクス」を一緒につくっていけているのが、まさに今なんです。
新しく入社する人材が活躍できる機会がこれからたくさんあると思いますので、ぜひいろんな方にチャレンジしていただきたいです。
プロフィール
中嶋 俊介 氏
ロジスティクス本部 部長 兼 株式会社アダストリア・ロジスティクス 代表取締役 社長
アパレル業界で販売員からスタートし、2017年にアダストリアに入社。
2019年よりロジスティクス本部の部長および子会社である
アダストリア・ロジスティクスの代表取締役に就任。
国内の店舗、ECサイト「アンドエスティ(and ST)」、海外物流を含めた物流全般を統括する。
大塚 健志 氏
ロジスティクス本部 ゼネラルマネジャー
新卒で書店での販売員を経て、海外経験をした後、物流業務に携わり
2015年アマゾンにて様々なサプライチェーン・ロジスティクスのプロジェクトに従事。
2022年6月よりダストリアに入社し、ロジスティクス企画部門における
物流拠点や機械化中長期計画などをリーダーとして統括する。
この企業へのインタビュー一覧
- [注目企業インタビュー]
株式会社アダストリア 執行役員兼マーケティング本部長 田中 順一 氏(2023.7)
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- 株式会社アダストリア | ロジスティクス本部 部長 兼 株式会社アダストリア・ロジスティクス 代表取締役 社長 中嶋 俊介 氏 / ロジスティクス本部 ゼネラルマネジャー 大塚 健志 氏(2025.1)
- ユニ・チャーム株式会社 | 理事 共同CDXO(Chief DX Officer) 今川 高博 氏 / MDX本部 岩下 恵 氏 / 松薗 美帆 氏 / 下村 香菜子 氏(2024.12)
- 株式会社アダストリア | 執行役員兼マーケティング本部長 田中 順一 氏 (2023.7)
- 株式会社Quest | 代表取締役社長 南 健太 氏 / COO 小梶 隆介 氏 (2023.3)
- 株式会社JDSC | 代表取締役CEO 加藤 エルテス 聡志 氏(2022.9)