キャリアインキュベーションの村木です。
昨今、食品や日用品、化粧品といった消費財メーカーが、これまでのBtoB(卸)中心の事業から新たに、D2C(Direct to Consumer)事業の立ち上げや、コンシューマー(BtoC)マーケティング強化を進めています。背景にあるのは、競争環境の激化、利益率改善ニーズ、そしてなにより消費者との接点を直接持ちたいという強い意志を感じます。
この変革フェーズは、企業にとって新たな成長のきっかけとなると同時に、CxOポジションへのキャリアの幅を広げる絶好のチャンスになっています。
■ なぜ今、D2C立ち上げが注目されているのか?
D2Cとは、ECや自社店舗を通じて、メーカーが直接消費者と接点を持ち、販売・マーケティング・CRMまでを一貫して担うビジネスモデルです。
特に従来BtoB一辺倒だった企業にとっては、新たな収益源であると同時に、ブランド価値を自らコントロールできる重要な手段となります。
昨今では、実店舗の出店とECのハイブリッド戦略、さらに卸売先としての百貨店、セレクトショップ・ドラッグストア・バラエティショップへの販路拡大も含めて、いわば"オムニチャネル型D2C"といえる形態も珍しくありません。
加えて、BtoB(BtoBtoC)企業によるD2C展開の成功事例も徐々に増えてきています。たとえば、調味料などの製造販売で知られるミツカン社が展開する「ZENB(ゼンブ)」は、自社ECを主軸に、植物由来の素材を活かした食品ブランドとして、新たな根強いファン層を獲得。従来の企業イメージから新たなブランド構築と、フードテックを絡めた挑戦が注目を集めています。
さらに、アパレル業界からの事例として「NANGA(ナンガ)」が挙げられます。滋賀県を拠点とするナンガ社は、もともと寝袋などのOEM製造を主業としていましたが、その確かな製造技術と品質管理の強みを活かして、自社ブランドを立ち上げました。特に高品質なダウンジャケットを中心に、アウトドアファンや都市生活者からの支持を集め、国内外でのブランド認知を急速に拡大。ブランディングと製品企画力を強化しながら、販路も自社ECに加えてセレクトショップ・百貨店などへと多様化しています。BtoBのOEM事業からD2C事業強化を象徴する成功例です。
参考:
ZENB | ミツカンについて | MIZKAN GLOBAL
新主食 ZENB(ゼンブ)公式通販
会社概要 - NANGA | ナンガ
ナンガ オンラインショップ | NANGA ONLINE SHOP
■ D2C立ち上げ期に求められるマネジメント人材や求人の特徴
このフェーズで求められるのは、単なる営業でもマーケターでもありません。事業を"つくる"マネジメント人材です。
● 経営層直下でマーケティング組織を立ち上げた経験を持つ人材(CMO新設やポジション強化など)
● 0→1、1→10の事業開発人材
● コーポレートイメージの変革、リブランディング
● 需要予測と在庫管理を高度に設計できる人材(SCMの視点)
● オンラインとオフラインをまたいだ販促設計ができる人材(OMOマーケの視点)
● デジタルチャネルを活用したファンベースマーケティングを構築できる人材(CRM)
「モノを売るだけでなく、売れる仕組みを構築できる人材」が、次代のD2C事業において中心的な存在となります。
■ 成功体験は、CxOキャリアへの布石となる
事業をゼロから立ち上げ、グロースさせる経験は、間違いなく次のキャリアに効いてきます。特に、ブランド責任者・事業部長・COOといった経営幹部のポジションに就くには、「マーケットに向き合って成果を出した経験」が極めて重要視されます。
D2C事業の立ち上げは、事業創造と組織マネジメントの両輪が問われるチャレンジです。まさに、将来CEOを目指す人材にとっての"実践型経営トレーニング"といえるのではないでしょうか。
これまで製造や営業、ブランド企画といった職種で経験を積んできた方にとって、D2C立ち上げフェーズへの参画は、大きなキャリアジャンプのチャンスです。
企業の変革期には、大きなチャレンジ、キャリアアップの機会があります。