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株式会社カイバラボ 注目企業インタビュー

注目企業インタビュー

株式会社カイバラボ

ドン・キホーテ、ユニーなどを展開する大手小売グループ、パン・パシフィック・インターナショナルホールディングスグループ(以下、PPIHグループ)。その中で、買い場(※)を舞台に実験・研究を行いながら、“小売の未来”をつくる新たなデジタルソリューションを創出することをミッションとしているのがカイバラボだ。カイバラボの「カイバ」は「買い場」と脳の中枢である「海馬」のダブルミーニングである。PPIHグループは売上高1.8兆円規模の大企業だが、このような規模の企業で、グループ全体のデジタル・データ戦略と連動しながら、未来創造型のタスクを担うデジタル部隊の求人というのは稀だ。同社の事業内容や働く環境としての魅力について、データ事業推進部とデータコラボレーション部の部長を兼務し、同社のビジネスをリードする小林真美氏にお話を伺った。

買い場・・・一般的にいう売り場のこと。PPIHグループの企業原理『顧客最優先主義」に基づき、売り手が主語の「売る」ではなく、お客さまが主語の「買う」に言葉を置き換えている。

まず自己紹介として、小林様のこれまでのキャリアについて教えてください。

アメリカの大学で経営情報システムを専攻した後、2002年に新卒でパナソニックに入社し、情報システム部門に配属されました。当時は基幹システムをグローバルに一気通貫でERPに切り替えていくブームの時代で、私の最初の仕事も中国全土44社へのオラクルERP導入推進でした。このプロジェクトで上海と香港に2年ほど駐在しましたが、当時はまだ新入社員、かつ、女性の海外駐在が珍しい時代で、会社と一緒に新しい時代を切り開いていっているような感覚もありました(笑)。

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その後も、会社として今までやったことのない領域にチャレンジするプロジェクトを数多く担当させていただき、当時まだ黎明期であったSaaSシステムの導入でドバイに行ったり、大連への開発オフショア化を進めたり、パナソニック全社として新興国市場に進出しようとなった2009年には「何をしてもいいからITを駆使して新市場で売上を上げることをやってきて」と漠然としたミッションを与えられて1人旧ユーゴスラビアのバルカン地域に赴任したこともありました。

その後2012年ビッグデータという言葉が出始めた頃、社内にデータ分析の専門家を作ろうという動きの中で、当時はその領域で最先端であった北米に赴任させていただき、昼はシリコンバレーのベンチャーソリューションなど自分たちで見つけてきた分析ツールを社内でどう活用できるかを検証し、夜はビッグデータ分析に特化した大学院でさらなる専門性を身につける、という生活を送りました。

パナソニックには13年在籍し、その間に新しい事に挑戦する機会を多くいただきました。過去の蓄積もなく、正解も分からないプロジェクトに取り組み続けることで、新しい事を始める時の勘所や、周囲を巻き込みながら形にしていくスキルを身につけました。このスキルは今でも役に立っています。

2015年にファーストリテイリングに転職し、CRMとデータ分析の立ち上げを行ったあと、より経営に近い仕事をしたいと考え、ジュエラーのTASAKIと資生堂の2社で経営戦略部門を経験しました。資生堂ではそれまでの経歴からDXプロジェクトを任されましたが、そのプロジェクトを通じて今やほとんどの戦略アクションがデジタルと切り離せないことに気づきました。また、経営戦略部では提言に留まり、私自身は実装まで手掛けたいと考えていたので、再びデジタルの世界へと戻ることにしました。

そして2022年1月にカイバラボに入社しました。カイバラボに入社を決めたのは、自社のDX化に留まらず、"小売の未来"を創るというミッションがとても面白いと思ったためです。カイバラボの組織は社長の下に、データ分析を担うデータアナリティクス部、B2B向け新規事業の立ち上げを担うデータ事業推進部、社内DX化に向けたインキュベーション活動を担うデータコラボレーション部の3部門があり、私はデータ事業推進部とデータコラボレーション部で部長を務めています。

様々な視点を掛け合わせながら、"小売の未来"に必要なソリューションを創出する

カイバラボの事業内容について教えてください。

カイバラボは"小売の未来"を創ることをミッションとしています。「未来の小売はどうあるべきか?」「その未来を実現するために何をするべきか?」の高い視座に立ち、小売業界の未来に本質的に必要なデジタルソリューションを開発します。開発に際してはPPIHグループが保有するデータを活用し、PPIHグループの買い場を実証実験の場としますが、開発するソリューションはPPIHグループに留まらずに小売業界にとって本質的に必要なものを追求したいと考えています。

カイバラボではどのようなアプローチでソリューションを開発するのでしょうか。

新たなソリューションのアイデアを発想する上で、カイバラボでは「X」(クロス)をキーワードとしています。「掛け算」を意味していて、様々な専門性を持つ人財(※)の視点を掛け合わせて新たな価値を創出することを目指しています。その実現に向けて、社内では採用を強化して様々な専門領域の視点を取り込もうとしていますし、社外では国内外問わず様々な専門家と積極的にコラボレーションしています。

現在は大学の研究組織やIT企業とのコラボレーションが進行していますし、今後も小売とは一見関係ない業界とのコラボレーションも含めて積極的に推進していきたいと考えています。また現在、PPIHグループが持つ小売のデータやチャネルを活用した新たな事業の立ち上げも推進しています。これにより自分たちで収益を得る手段を確保しながら、またそれを新たなことにチャレンジをしていく投資に回す、というサイクルをつくることができます。

このように、PPIHグループから一歩ひいて、小売というものを広い視座でみて、未来の小売はどうあるべきか?という視点でやるべきことを定め、実証実験から進める。一方できちんと小売業という中核事業にも貢献し、また自分たちも事業できちんとマネタイズしていくポリシーも持っている。そのようなところが、他社の小売のDX化の取り組みや小売のデジタル子会社と違うと思います。
PPIHグループでは人は財産という考え方から「人財」という言葉を利用しています。

「個店主義 X デジタル」という、新たなモデルの創出に挑戦

小売業界の中でもPPIHグループならではの魅力、他社との差別化要因はありますか。

大きく2つあります。
1つは、PPIHグループが売上高1.8兆円(※2022年6月期)の大企業であり、スケールした時のインパクトが非常に大きいことです。この売上規模の企業を舞台に、全社にスケールできる事業をゼロから創ることができる組織はなかなかないと思います。

もう1つは、PPIHグループの大きな特徴である「個店主義」です。企業原理である「顧客最優先主義」のもと、各店舗に裁量権を委譲しています。例えば商品の仕入もその土地のニーズを知る各店舗に任せているため店舗ごとで商品構成が全く異なりますし、一店舗でしか扱われていない商品もあります。

一般的にスケールメリットを享受しやすい小売業界では、大手企業ほど本部主導型の運営になりがちで、店舗は本社が仕入れた商品の陳列で平準化され、さらにそこにデジタルで横串を通そうすることでより一層、店舗の平準化が進んでしまいます。
これに対して我々は「個店主義 x デジタル」を目指しています。現場力を維持しつつ、そこに対してデジタルの力で後押しするモデルを創ることができれば、小売業界に対して大きな提言となります。

PPIHグループは現場の力で成長してきた会社なので、もともとのDXのレベルは他社と比較して高くありません。しかし、それはカイバラボにはとってはプラスです。新たなデジタル施策の導入を検討した時に、過去に導入したシステムに縛られる・そのシステムが優れていない場合"負の遺産"となるケースが多々ありますが、PPIHグループにはそうした"負の遺産"がないので、本質的に必要な事をゼロベースで柔軟に考えることができます。

革新的な小売企業と言えば、世界的にはウォルマートやアマゾンなどが想起されますが、「個店主義 x デジタル」で成功することができれば、PPIHグループもそこに並ぶ存在になることができると思っています。

PPIHグループ内で、デジタルへの抵抗感はありますか。

「デジタル」に限った話ではありませんが、客観的かつ冷静な視点で「PPIHグループにとって取り入れた方が良い」と判断したことに対しては、積極的に挑戦したいと考える社員が多いので、新しい事への抵抗感は少ないと感じます。「いいじゃん、やろうよ!」となれば、皆協力的で一気に進めてくれます。

また、ケースバイケースですが失敗した場合の撤退判断が早いことも、前向きな挑戦が可能な要因だと思っています。
失敗という傷口を最小限に抑え、次の挑戦に生かしていく社風もPPIHグループの魅力ですね。

現場とのコミュニケーションを何よりも大切にされているとの事ですが、どのようにとっているのですか。

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3〜5店舗を管轄するエリアマネージャーとコミュニケーションをとることが多いのですがPPIHグループの役員は現場出身者が多く、現場を大切にしていますし、現場をよく理解しているので、役員のサポートも借りつつ現場の声を聞いています。

個店主義を維持しつつデジタルによって未来を創るためには、現場と二人三脚でカルチャーや仕組みを作る必要があります。「導入してもらうために頭を下げる必要があるアイデア」「一部の店舗だけが納得するようなアイデア」は望ましくありません。

現場の声を聞き、個店主義を大事にしながらも、デジタルで横串を通すべき領域を探っていく。そしてその意図を現場に適切に伝えて、すべての店舗が納得して導入することを目指しています。PPIHグループのチャレンジに貪欲なカルチャーをうまく活かし、我々のテクノロジーで創出できる新たな価値を浸透させて、導入するためにカルチャーや仕組みを変えていく、真の"トランスフォーメーション"を担っています。

アイデアを形にするスキルを持った方にとって、最高の環境

お話を聞いていて、大企業とベンチャー両方の雰囲気を感じますが、実際はいかがですか。

そうですね。カイバラボは大企業のグループ会社でありながらも、ベンチャーのように自由で風通しが良く、コミュニケーションがフラット&オープンです。中途採用のメンバーも多く、またコンサルティング会社や広告代理店の出身者など、幅広いバックグラウンドを持つメンバーが集まっています。若手社員が多いこともありますが、それぞれの専門性を活かして、チームで仕事を進めていくスタイルなので、個人の裁量が大きく、皆助け合いの精神があります。

個人の裁量が大きいとなると、求める人物像としては「専門性が高い方」なのでしょうか。

カイバラボでは新たなソリューションのアイデアを発想するだけではなく、それを形にするところまでをミッションとしています。そのため、専門性を持っているだけでなく、アイデア発案や提言に留まらず実際に手を動かしながら実装へと形にしていけるスキルを持った方が望ましいです。マインドセットとしては、ポジティブシンキング、オープンマインドの方が良いですね。新しい事にチャレンジする際、すぐにはうまくいかないことも多いです。そんな時に、どうすれば成功に近づけるのか、失敗から学びを得て何を改善すればよいのかを前向きに考えながら、周囲の人を上手く巻き込みながら物事を前に進めていただきたいです。

小売業界の経験は必ずしも必須ではありませんが、商売そのものも含めてスピードが速い業界です。スピード感を持って仕事ができる方が良いですね。

今後、カイバラボの取り組みをどのように展開してきたいですか。

私が入社してから半年間、マネタイズできる新たな事業づくりを模索し続け、ようやくカイバラボにとって1つ目の事業を生み出せる目途が立ちました。今後も組織を拡大して体制を整え、多くの事業やソリューションを生み出していきたいと思います。具体的な目標数値は定めていませんが、例えば実証実験段階に進んだアイデアが100件あっても、そこから本格的に実現に至るのはわずか2〜3件だと思っているので、当面は実証実験段階に進めるアイデアの数を増やしていきたいと思います。

最後に、カイバラボを志望する方へのメッセージをお願いします。

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社会人になってもう20年以上経ちますが、この規模の会社で「自由に0から新しいことを生み出すことができる」環境は本当に貴重だな、と思います。私自身もそういう意味では「事業を創る」ということをリードするのは初めてで、お金をいただける価値を創り出す難しさを感じます。ただ、同時にとてもチャレンジングであり、やりがいを感じています。

社内外で様々な専門性を「X」(クロス)することで新たな事業を創出し、それが店舗の賑わいを生み出し、マネタイズとして収益を生み、そして"小売の未来"を創っていく。そんなカイバラボのあり方はとてもユニークだと思います。PPIHグループは店舗からしてエンターテインメント性に溢れていますし、「ここで面白くなければどこなら面白いの?」と言えるだけの面白さがあります。

これまで新しい事を創ってきた方、新しい事を創る上での勘所がある方、形にするために多くの人を巻き込むのが得意な方、いつまでも新しい事にチャレンジしていきたい方にとっては本当に良い環境です。是非一緒に"小売の未来"を創るゲームチェンジャーになりましょう。

プロフィール

写真:小林 真美 氏

小林 真美 氏
データ事業推進部 部長 兼 データコラボレーション部 部長

2002年パナソニック入社。情報システム部門で、中国、欧州、北米などへの海外赴任を含め数多くのグローバルプロジェクトに携わる。2015年ファーストリテイリングに入社し、CRM・データ分析部の立ち上げに携わった後、TASAKIで経営戦略部部長、資生堂の経営戦略部でDXプロジェクトをリードする。2022年1月カイバラボに入社、データ事業推進部 部長 兼 データコラボレーション部 部長として、新たな事業創出をリードしている。スティーブンス工科大学大学院ビジネスインテリジェンス&アナリティクス修了。

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