PEファンド21年目、社名と資本構成を変更
ガバナンス強化し、「MCP」ブランドを育てる
佐藤様、MCPパートナーズの紹介をお願いします。
【佐藤】私どもの会社は今年21年目に入りました。2000年に第1号ファンドを立ち上げ、現在、第5号ファンドを運用中です。今まで34社の企業に投資実行させて頂き、その成長を支援してきました。この間、当然に良いことも、そして悪いこともありました。個別案件ベースでは想定通りのリターンとならなかった案件もありましたが、一つ一つの投資で得られたことを教訓として、会社を少しずつ良くしてきました。それが20年という長さにつながってきた、と思っています。
2月12日に社名と資本構成を変更されました。社名は「MCPパートナーズ株式会社」に。株主には、みずほ銀行以外に大手保険会社など金融機関などが加わりました。これらの変更の理由や目的を教えてください。
【佐藤】みずほ銀行傘下の投資会社としてスタートしたみずほキャピタルパートナーズですが、その社内外で、ガバナンス体制はこのままで良いのかという声がずっとありました。PEファームのガバナンスの重要な柱の1つはフィデューシャリー・デューティー、すなわち「専ら投資家のために働く」ということです。この観点から、ガバナンス改革を求める声を頂いておりました。外形的に、ファンドキーマンの意思決定が支配株主から影響を受けるリスクがあると見えていたためです。
そこで今回、みずほ銀行と協議し、フィデューシャリー・デューティー強化のためのPEファームとして株主の変更を決めました。これまでもビジネス関係のある会社様の中で、PE投資について理解がある方々にお願いして、新たに株主になっていただきました。そうしたガバナンス変革だけでなく、ソーシング先などを含め、これまで以上に様々な方々といろんな関係を築いていきたいと思っています。
社外からの新社名「MCPパートナーズ」の評判はいかがでしょうか。
【佐藤】みずほキャピタルパートナーズを略すとMCP、そこに「パートナーズ」が被っているという点は理解しています 笑。ただ我々として「MCP」のワードを社名にしたのは、これまでのファンド名で「MCP」を使ってきており、ブランド継続性の観点からより良い選択だろうと判断したためです。
目指すは、リターンと投資先企業の成長、の両立
ロールアップとIPOイグジットが多いことも特徴
MCPのバイアウトファンドとしての特徴は。そして、目指すものは。
【佐藤】MCPの特徴として、投資家との間でも、社内でも、よく話していることがあります。我々の力の源泉は何か。それは、投資リターンと投資先企業の成長を両立できる会社になりたい、という強い想いです。ファンドですから当然、数字としての結果であるリターンを上げていくことが必要です。ただ、それだけで満足かと自問すると、我々にとっては、投資した企業の成長も重要です。
まだまだMCPは発展途上ですが、目指すところは、10社に投資したら10社全部が成長していることです。投資先全社の成長を目指すことは、投資先企業のためだけでなく、我々自身のブランディングのためでもあります。これからもさらに20年PE投資を続けていこうと思えば、社会的に受け入れられるPEファンドでなければなりません。それは投資リターンだけではなし得ないと考えています。投資先企業を含めた外部から見て、MCPパートナーズなら、あの人たちなら、株を持ってもらって良いな、という存在である必要があります。
投資プロセスや仕事のやり方では、どんな特徴がありますか。
【佐藤】我々の投資のプロセスは、投資リターンと成長の両立という目標に沿った形になっています。投資先を探す段階では、じわじわと堅実に伸びる余地がある会社やキャッシュフローが固い会社を対象に考えます。こうした会社は、安定した事業基盤がありその会社が属する業界の競争変化が緩やかというメリットがあるのですが、一方でオーガニックな成長が限定的だというケースもあります。MCPが経営支援することで、単独ではなし得なかった成長の実現を目指します。その一つとして、ロールアップ(追加買収)があります。MCPはロールアップを戦略的に取り組んでいるのが特徴で、これまで30数件と投資先1社当たり平均で1社以上追加買収を実現しています。
イグジット(出口)の手段としてIPOが多いのも、MCPの特徴です。投資先の約半数が上場しています。我々ともに、成長性を意識した行動、ロールアップ、人材の補強、といったことを経験しますと、投資先企業には自信ができ、独立したい、上場したい、という想いが強くなります。それを我々としても応援したいという気持ちがIPOの多さに表れているのだと思います。
目先の投資リターンだけならトレードセールも有効な手段ですし、我々も総合的な観点からその手段を採ることもあります。が、その企業が長く続いていく、我々のファンドも長く続いていく、という関係の中では、IPO支援に力を入れることには大きな意味があります。産業界内でMCPなら任せて良いという評価が広がることが、入口のオリジネーションを含め、PEファンドとしての差別化にもつながるからです。
投資先企業に長く続く成長を促す考えに親和性ある人
組織・ルールの変更にも貢献する人材に参画してほしい
これからMCPパートナーズに参画してもらいたい人材はどんな人でしょうか。
【佐藤】我々の考え方――投資リターンと投資先企業の成長を両立する――に共感いただける方に来ていただきたいですね。企業に投資後、短期成長よりも、長く続けられる成長を促していく。実際、我々のファンドの投資期間は1社当たり平均5年を超えています。7年間というのもありました。業界平均が3年いかないくらいですから、1社にかける時間が長いというのはMCPのもう一つの特徴です。
投資先企業と長くつきあって成長を促していく。そういうことが好きな方に、MCPは親和性が高いかなと思います。また、業務に対するスタンスとして、自分の考えをしっかり持ち、外に対しても自分の意見を発信できる方が私の好みです。
投資先企業との長いプロセスを楽しめる人が良い、というところよくわかりました。そのほか、社風や社内ルールなどに関する適性はありますか。
【佐藤】ルールを見直しています。この会社の20年間には、いろんな変化がありました。かつてのみずほ銀行からの出向者が多かった時代から、今ではフロントには銀行からの出向者がいない状態になりました。その時々の環境変化に合わせて、組織や人材について常に考え直しても来ました。
現在の状態は終わりではなく、まだまだ変えていく必要があります。変革の基本的な判断基準はフィデューシャリー・デューティーです。クライアントである投資家にもっと良いサービスを提供できるためには、ということです。この変化を一緒に遂行していきたいという人材に集まってほしい。現在あるものを受け取る姿勢ではなく、どういう風にするのが良いか、そのプロセスを一緒に考えて、楽しんでほしい。我々は発展途上の会社です。今後もいろんな改善をしていく必要があります。継続した改善を一緒にやっていただける方に来ていただけたらうれしいですね。
プロフィール
佐藤 正秀 氏
バイアウト代表 マネージング・ディレクター
マサチューセッツ工科大学スローン経営大学院卒業。
みずほ銀行(旧第一勧業銀行)入行。約10年間グループ国内外拠点や米国CIT Group, Inc.等にて財務アドバイザリー、コーポレートファイナンス、アセットファイナンス等を経験したのち、2005年MCPパートナーズ(旧みずほキャピタルパートナーズ)に参画、現在同社バイアウト代表を務める。
永藤 貴弘 氏
ディレクター
上智大学経済学部卒業 。
監査法人トーマツに入社。法定監査業務の他、IPO支援や各種財務アドバイザリー業務に従事。その後プライスウォーターハウスクーパースに入社し、ハンズオンでのコスト削減・業務改善・事業再生等のアドバイザリー業務に従事。 2015年10月、MCPパートナーズ(旧:みずほキャピタルパートナーズ)に参画。製造業・建設業等の投資業務に携わる。
阿部 徹 氏
バイスプレジデント
早稲田大学先進理工学部卒業/東京大学大学院工学系研究科修士課程修了。
三井住友銀行に入行。支店および法人営業を経て、PE投資に関する企画業務に携わった後、三井物産、三井住友銀行および日本政策投資銀行の合弁ファンドであるMSD企業投資に出向し、バイアウト投資業務に従事。在籍中にユナイテッド計画の投資を担当。帰任後は、プロダクツ部門の中計策定等の企画業務に携わった。 2019年10月、MCPパートナーズ(旧:みずほキャピタルパートナーズ)に参画。現在は日精ホールディングスへの投資案件に携わっている。
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