マッキンゼーによるデザイン・コンサルティング会社LUNAR買収や、アクセンチュアによるデザイン会社フィヨルド社やオーストラリアの独立系デジタルエージェンシーReactive Mediaの買収等コンサルティングファームがデザイン・デジタル領域に拡大する動きがここ数年数多く見受けられます。
国内においても、16年4月のアクセンチュアによるIMJへの過半出資は記憶に新しいことだと思います。今回はこれらの動きについてお話していきます。
デジタルエージェンシーを買収する理由とは?
デジタルエージェンシーとは、主にデジタルマーケティングの戦略策定やWEB、スマホ、VR端末等を活用したコンテンツ制作、メディアプランニング、効果測定、データ解析などを行う企業のことです。
コンサルティングファームがこれらのデジタルエージェンシーを買収する背景として、まずは企業の投資分野が移りつつあることがあります。2000年代は主にCIOによるERPやサプライチェーンマネジメント、データウェアハウスやCRMシステム等のIT分野へのシステム投資が大きな規模を占めておりました。
一方で、多くの企業においてそれらの領域への投資が一巡してきた中、今度はそれらのデータを活用したマーケティング強化や広告サービスへの投資を各社が拡大するようになってきました。調査会社ガートナーによれば、CMOが使うIT予算がCIOを超えるとの予測も出ています。
そうした流れを受けて、特にIT系のコンサルティングファームであるアクセンチュアやIBMなどはマーケティング領域の専門性を深めるため、各企業とのCMOとのリレーションを強化するためにデジタルエージェンシーの買収を進めています。
別の理由としては、クライアント企業への付加価値を付けていく上で、デジタルマーケティング領域での実行力の必要性が高まりつつあるということも挙げられます。業界に関わらず、エンドユーザーにサービスを提供する上で、デジタルメディアの活用方法は避けては通れないテーマです。
商品開発から、情報収集、購買、アフターサポートまでの全てのフェーズにおいて、どのようにデジタルメディアを活用するのかについて適切な施策を打てなければ、どのような戦略も十分な成果は得ることは困難なのです。
デザインファームを買収する理由とは?
デザインファームとは、その名の通り、あらゆるプロダクトのデザインについて提案、作成を実施する企業のことです。代表的な企業として、「デザイン思考」でも知られるシリコンバレーのデザインコンサルティングファームIDEOなどがあります。(ちなみにIDEOも16年に博報堂DYホールディングス傘下の戦略事業組織kyuが30%の株式取得をしています)
コンサルティングファームがこれらの企業を買収する理由として大きいのは、やはりクライアント企業への付加価値を付けていく上での必要性の拡大です。AIやIoTなどのテクノロジーの進化が進む中、それらをユーザーに対して分かり易く実感して貰うためには、ユーザーインターフェイスの重要性が非常に大きいです。
単なる戦略策定から、実行支援へとサービスの範囲を広げるコンサルティング業界において、自らプロトタイプを制作し、テストマーケティングを実行するというような案件も増えつつある中、毎回外部のデザインファームに依頼するのではなく、その領域も自社に取組み、場合によっては、差別化の要素としていくことを選択するファームが増えつつあるのです。
他にも、デザインファームの買収が進んだことで、コンサルティングファームによるクライアントへのプレゼンテーション方法も変わりつつあります。コンサルティングファームの提案と言えば、100枚以上の膨大な資料の束のイメージがありましたが、最近では、映像や試作品のデモなどを使ったプレゼンテーションを実施するプロジェクトも増えつつあります。
コンサルティングファームの今後の方向性
コンサルティングファームは、時代とともに、戦略提案から実行支援へとサービスの比重が移りつつあります。また、企業の競争においても、テクノロジーやユーザビリティなどの要素の重要性が高まりつつあります。そうした環境の変化の中でクライアントに対して高い付加価値を出し続けていくためには、コンサルティングファーム自身が変わっていくことは至極当然のことだと言えます。
固定観念にとらわれることなく、新たな挑戦を続けることは、大変ではあるが、極めてチャレンジングかつ、遣り甲斐のある仕事だと思います。また、若い世代のみなさんが活躍できるチャンスも非常に大きいと思います。是非興味を持たれた方は挑戦してみることをお勧めします。