分業化・専門化はあらゆる業界で見られるトレンドの一つですが、コンサルティング業界もその例に漏れません。そのため、従来のゼネラルなコンサルタントに加えて、意外なスキルをもった方々の採用も一部のコンサルティングファームでは進みつつあります。
そこで今回は、具体的にいくつかのファームで採用が始まっている専門職種について、その背景と共にご紹介してみたいと思います。
近年専門的なスキルを持った人材を積極採用する背景
具体的な職種の紹介の前に、なぜコンサルティングファームで特定のスキルを持つ人材の採用を拡大しているのかという点に触れておきたいと思います。
理由①:取り扱うテーマの広がり
日本でもコンサルティングファームを活用することはかなり一般的になってきたことに伴い、ファームが取り扱うテーマもかなり多岐にわたるようになりました。一昔前であれば、中期戦略策定や、コスト削減、M&A戦略などのゼネラルなテーマが中心でしたが、近年では、特定アセットを活用した新規プラットフォーム事業の立上げ支援や全社的なデジタライゼーション支援、グループ会社横断の人事評価スキーム設計など、よりスペシフィックなテーマにおいても戦略コンサルティングファームを活用する機会が増えてきています。
理由②:目に見える成果への拘り
コンサルティングファーム業界の拡大は、同時にファーム間での競争も激化させています。その結果、各ファームはより目に見える成果に対して拘りを持つようになってきています。そのため、例えば新規事業の立ち上げにおいて、売上拡大のためにサービスのUI・UXなど含めてコンサルティングファームからもアドバイスを出しながら一緒に運用していくというプロジェクトも見えつつあります。
他にも、17年3月に発表があったKDDIとアクセンチュアによるアナリティクスサービスの開発、提供を目的とした合弁会社の設立など、これまでとは違った形で成果へのコミットを見せる動きも今後ますます増えてくると思われます。
ここからは、具体的な職種についていくつか例を紹介していきたいと思います。
UI/UXデザイナー
最初はUI/UXデザイナーです。コンサルティングファームでUI/UXデザイナーが活躍する機会としては、大きく2つ存在します。
1つ目は、プロジェクトの中でプロトタイプのプロダクトを制作する際の支援です。短期間で成果を出していくために、プロジェクト期間中にプロトタイプを制作するプロジェクトは近年増えつつあります。しっかりと分析をして説得することも大切ですが、実際にユーザーに使ってもらう中で、面白いと感じた声を届けるほうが説得しやすい場合があることも事実です。そのため、ターゲットやコンセプト、必要な機能に基づきながら、UI/UXデザイナーがそれを形に落としていくという取り組みが増えつつあるのです。
2つ目は、クライアントへのプレゼンテーション資料の策定支援です。コンサルティングといえば、パワーポイントスライドの束を持ってくるというイメージをお持ちかも知れませんが、最近では、よりインパクトがあり、伝わりやすいプレゼンテーションを実施するため、動画配信やシミュレーションをその場で実演することも増えつつあります。UI/UXデザイナーの方は、それらの資料作成についても従来のコンサルティングスタッフと協力しながら作成するという取り組みも今後増えていくと思われます。
ビックデータアナリスト
次にビックデータアナリストです。コンサルタントといえば分析は必須スキルの一つですが、テクノロジーの進化に伴い求められる分析はかなり高度になりつつあります。取扱うデータ量が爆発的に増えたということは勿論ですが、そうした中で単純な集計業務を行うのではなく、自らプログラムを書きデータを分析する機会も増えつつあります。そのため、それらを専門で行える人材についても増えつつあるのが実態です。外資系ファームの場合は、インドなどに専門のスタッフをおいているケースもある様ですが、需要が増える中で、国内にも専門スタッフを置くという流れは今後増えていくと思われます。
RPA(Robotic Process Automation)
最後に、RPAコンサルタントです。オペレーションの効率化、品質の向上、顧客満足度の向上を目的としたRPAコンサルティングはIT系コンサルティングファームを中心に、ここ数年でホットなトピックとなっています。Roboticというと、工場のロボットをイメージされる方もいらっしゃるかとおもいますが、正しくはソフトウェアロボットのことを指しています。構造化されたルールベースのタスクをソフトウェアで実行することにより、ビジネスプロセスをより効率的に行おうという取り組みのことです。そのため、ロボティックスや人口知能(AI)に関わるソリューションの開発、営業、提案、導入プロジェクトを経験されたことがある人材のニーズは高まっています。
最後に
今回は、コンサルティングファームで採用が広がりつつある意外な専門職種についてご紹介しました。コンサルティングファームは時代と共に、提供サービスの内容も進化しつつあります。今回紹介した例にとどまらず、今後さらに専門スキルをもった人材は求められていく傾向になっていくと思います。ご転職を検討されていらっしゃる場合は、ご自身がこれまで経験された職務についても、コンサルティングファームにおいてニーズがありそうかどうか、一度転職エージェントの方などとご相談してみるのも良いかもしれません。