コンサルティングファームも広く世の中に知られて久しくなりましたが、最近は小規模のコンサルティングファームの転職情報もよく目にすることがあるかと思います。実際、国内のコンサルティング経営の企業数は、売上3億未満のベンチャーのコンサルファームの拡大により、2008年以降5年間で2倍近くに増えているという調査結果もあります。
そこで、今回は、ベンチャーのコンサルティングファームについて、どのような違いや特徴があるのかを中心にお話したいと思います。
コンサルタントとして働く場合の、ベンチャーと大手の違い
ベンチャー系のコンサルティングファームは、元大手コンサルティングファームにおいてパートナーやプリンシパルなどとしてご活躍された方が独立して設立されるケースが比較的多いように感じます。そのため、設立者がそれまでの経験を積み重ねてきた業界やトピックに特化するブティックファームとなっていることが一般的です。特に最近では、AIに特化したベンチャーコンサルティングや、中小企業のM&Aに特化したファームなど、これまで以上にフォーカスすることで強みを発揮する会社が多くなったと思います。
また、会社の規模も数10人と小さいため、シニアメンバーが少なく、入社2~3年でもプロジェクトに全面的に参加できることが特徴の1つです。大手コンサルティングファームの場合は、自分がオーナーシップを持ってプロジェクトを運営できるようにまでには5~6年ほどかかることが一般的ですので、そのような観点からもベンチャーコンサルティングファームを魅力的に感じる方もいらっしゃると思います。
更に、会社が大きくなっていく、成長していくということを自分ごととして実感できる充実感もございます。もともと10人だった会社が、20人、30人、50人と大きくなっていくことを一緒に経験できることは、大手のファームでは得難いものだと思います。
ベンチャーコンサルティングファームの注意点
一方で、ベンチャーコンサルティングファームに参画する上で注意すべきポイントもいくつか存在します。
ベンチャーコンサルティングファームは、特定の領域に特化することでファームとしての競争力を高めています。そのため、同じようなテーマのプロジェクトを繰り返し実施することがどうしても多くなってしまう傾向があるともいえます。一方で、大手コンサルティングファームである、マッキンゼーやボストンコンサルティングなどでは常に幅広い業界やテーマ、クライアントのプロジェクトが走っているため、特に若いうちは幅広い経験を行うことが容易です。社会人としてのキャリアが短く、自分が何のテーマをしたいのか、向いているのかが不明瞭な方にとっては、大手ファームで複数のプロジェクトを経験する中で方向性を決めるという選択肢がよいこともあります。
ベンチャーコンサルティングファームの場合は、プロジェクトのテーマやクライアントも国内が多くなることが一般的です。一方で、外資系の大手ファームの場合は、海外のクライアントのプロジェクトなどに加えて、グローバルの知見を共有するための仕組みや研修制度、実際に海外のコンサルタントと働く経験などが多くなります。今後国内市場が縮小していく中で、グローバルの視点はますます大切にはなってきますので、このあたりはキャリア選択上考えておくのが宜しいと思います。
また、日本はここ数年間、好景気に恵まれていることもあり、コンサルティング市場自体も順調に成長しておりますが、未来永劫このように成長するとは限りません。特に国内市場は、人口の減少に伴い間違いなく縮小していくことが確実ですので、国内の案件を中心に実施しているベンチャーコンサルティングファームの場合は、得意とするテーマによっては案件が縮小していくというリスクも存在しているといえます。勿論大手のコンサルティングファームも同様の課題は存在するのですが、それでも、グローバルでの人員の融通や、大手ファームが受注しやすい、企業再生系のプロジェクトの拡大など、ベンチャーファームに比べるとリスクを抑えることが可能です。
最後に
今回は、ベンチャーコンサルティングファームの特徴を大手ファームとの比較の中で見てみました。一概にどちらが良いという話ではなく、ご自身がキャリア形成上今のタイミングで何を大切にしたいかをという観点で、考えてもらうことが大切です。加えて、ベンチャーコンサルティングファームといっても、上記で申し上げた特徴のため、企業ごとに、業務テーマや社内の雰囲気は大きく異なるのが実態です。ベンチャーコンサルティングファームを選ぶ際には、大手コンサルティングファーム以上に、一社ごとの特徴を面接での社員への質問や、転職エージェントのアドバイザーへのヒアリングを通じて、理解しておくことを十分にしておくことをお勧めします。