コンサルティング業界への転職を考えられていらっしゃる方とお話をすると、「シンクタンクにも興味があるのですが、どのような違いがあるのでしょうか?」という質問を受けることがございます。
そこで今回は、一般的な定義を踏まえつつ、具体的にどのように働き方やキャリア形成が異なってくるのかについてお話していきたいと思います。
そもそも、シンクタンクとは?
シンクタンクの起源は、19世紀後半に「社会改良運動」を目指してイギリスで創設されたフェビアン協会、20世紀初期に「米国型リベラル思想」に基づいて創設されたブルッキングス研究所と言われており、社会、経済問題に対して、調査、研究を通じた政策提言を行っていくことを目的とした職業です。
国内でも、母体となる業界ごとに幅広いシンクタンクが存在しています。
たとえば、
- ●金融機関を母体とし、金融や経済の観点からの提言を強みとする、野村総合研究所、みずほ総合研究所、三菱UFJリサーチ&コンサルティング など
- ●広告代理店を母体とし、ユーザーの消費動向などの観点からの提言を強みとする、電通総研、博報堂生活総合研究所 など
- ●総合電機メーカーを母体とし、技術の観点からの提言を強みとする、富士通総研、日立総合計画研究所 など
- ●その他にも、母体となる企業を支える目的として、たとえば、JAを母体とし、農村・漁村地域に住む人々の生活と福祉向上を目的とした調査を実施するJA共済総合研究所 など
コンサルティングとシンクタンクの大きな違い
一般的にシンクタンクは、「分析結果をレポートにまとめて、政策提言を実施する」のに対して、コンサルティングは、「クライアントに対して実行支援までを含めた価値提供を実施する」という風な違いがあるといわれています。
しかしながら、近年では、シンクタンクにおいても、コンサルティングをサービスの一環として謳っている企業も複数存在しており、業務内容での差は徐々に薄れてきているように感じます。
但し、そうした中でも、あえて外資系のコンサルティングファームと比較すると以下のような差異が依然として存在しています。
①クライアントの担当部門
●シンクタンクのクライアントパートナー先は、部門長レベルとなることが比較的多い傾向にあります。これは、ある程度テーマが定まった内容についてリサーチを引き受けることが多いため、具体的な仕事としても部門に落ちた後に、依頼をすることが一般的なためです。
●一方で、外資系コンサルティングファームの場合は、CXO直轄のプロジェクトを引き受けることが相対的に多いです。定期的にクライアントのトップ層と経営課題について議論をする中から派生するトピックについて、コンサルティングサービスを提供するため、このような違いは生まれてきています。
②コンサルティングのテーマ
●上記とも関係しますが、シンクタンクの場合は、ある程度テーマが明確に定義されていることが多いです。具体的に、経産省が公表している入札結果を見てみると以下のようなテーマをシンクタンクとして扱っていることがわかります。
●一方で、外資系コンサルティングファームの場合は、「全社横断での構造改革」「新規事業の立ち上げ」「買収戦略とPMO支援」「新規海外展開支援」などのより抽象度の高いテーマの中で、具体的にどのような戦略、戦術を推進していくべきかについてクライアントとの議論の中で方向性を見出していくことが多く存在しています。また価格水準としても、上記のシンクタンクの取り扱うテーマとして紹介したものと比べると数倍近くの水準となっていることが一般的です。
③求められるスキル
●シンクタンクの場合は、当然ですが、特定の分野に対する深い知見やノウハウが求められます。加えて、定性的、定量的な分析力やレポーティング力は必須のスキルです。
●一方で、外資系コンサルティングファームの場合は、上記に加えて、クライアントの現場を動かすための人間力や、交渉力などのソフトなスキルが求められます。更に、近年は実行フェーズの支援の一環として、ベンダーマネジメント力やデジタル領域に関する知見も求められる傾向が強くなってきています。
最後に
今回は、コンサルティングとシンクタンクの違いについてご紹介致しました。ともに知的好奇心が強い方にとっては非常に魅力的な職業である一方で、扱うテーマや必要なスキルには違いもあります。重なる部分も多いですが、語弊を恐れずにいうと、物事の真理を追究することに徹底的に拘りたい方は、シンクタンクを、世の中に対してインパクトを出すことに徹底的に拘りたい方は、コンサルティング業界を選んでみるのはいかがでしょうか。