コンサルタントの特徴の1つとして、資料作成スキルの高さがあります。
コンサルティングファームを雇ったことがある方はご存知だと思いますが、数10枚、時には数100枚のレポートを短期間で提出することは一般的です。そして、それらを実現するために、コンサルティングファームに入社すると、効率的にレポーティングを行うための共通ルールを教わっています。
今回は、世の中に公表されている実際のコンサルティングファームの資料を参考にしながら、代表的なテクニックについてご紹介していきます。
尚、参考にするコンサルティングファームの資料は経済産業省が掲示している以下の3つとなります。
これらの資料にざっと目を通した上で、以下で紹介する各テクニックをどのように活用しているのかを振り返ってみて頂くと、より理解が進むと思います。
資料作成のテクニック集
① 1スライド1メッセージ
● 資料においてもっとも大切なことは、伝えたいメッセージをいかに正しく相手に伝えることができるかにつきると思います。それを実現する上で特に大切になってくるのが、この「1スライド1メッセージ」です。
まずは伝えたいメッセージが何なのかを考え抜いた上で、各メッセージが1つのスライドになるように全体のパッケージを作ることは資料作成において、基本中の基本です。
● 但し、このとき、注意してほしいのですが、「メッセージ」と「項目」の違いです。例えば、「各国の製油所の処理能力」というのは、項目であって、メッセージではありません。メッセージは、「日本の製油所は世界的に見れば中規模」というものです。スライドを記載する際には、「項目」ではなく、「メッセージ」をまず記載するということを忘れないでください。
② メッセージをシンプルに伝えるボディ
● メッセージを書いたら次は、それを支えるボディを書きます。このとき大切なことは、正しく、かつ、分かりやすくメッセージをサポートできる内容になっているかという視点です。たくさん書く、細かく書くことよりも、メッセージとして伝えたい部分をしっかり強調できているかという点に注意します。
● 例えば、「メッセージと関係のある箇所は色を分けて記載する」「分解の切り口は、メッセージと関連するもの以上に細かく分けない」などの方法を使うことで、メッセージを読んだ後に、確かにそうだなと思えるボディを作るようにしましょう。
③ 全体像を最初に提示
● コンサルタントが作る資料は数十ページに渡ることがよくあります。一方で、読み手の視点から見ると数十ページの資料に全て目を通すことは、たとえ読む必要がある資料であったとしても大変です。そのため、パッケージの最初に全体像を示す必要性があります。これは、「内容」や「目次」というような項目で羅列して記載する方法もあれば、「本プロジェクトの全体像」というような形で模式的に示す方法もあります。
● 加えて、これらの全体像に沿った形で以降のスライドも作成することを意識してください。今書いているスライドが全体像のどこに位置するのかということを常に示しながら書くことで読み手にとってわかりやすい資料になります。
④ 誰が見てもわかるよう定義を記載
● コンサルタントが作成する資料は、プロジェクトで直接接する担当者を越えて、他の部門の方や、場合によっては社外の方にも行き渡ることがあります。そのため、資料作成においては、言葉の意味を、誰が読んでもわかるように、しっかりと定義を示しておくケースがあります。
● また、同じ意味を示す言葉については、必ず同一の表現をするようにも注意します。同じ人を示しているのに、「ユーザー」、「顧客」、「利用者」など言葉がスライドごとに異なっている場合は、何か違いがあるのかと読み手に余計な推測をさせてしまう恐れがあるからです。
⑤ 事実と推計の違いを明確化
● 事実と推計の違いは、非常に大切です。というのも、推計は、場合によっては異なることもあり、その推計方法も意味を持つからです。例えば、グラフを見る場合において、どこまでが「実績」で、どこからが「予想」なのかはしっかりと把握した上で、その予測はどの程度正しいのかという視点で物事を見る必要があります。逆に、資料の書き手としては、そのことを明確に記載することで、読み手に正しい判断を促す必要があります。間違うことや深くつっこまれることを恐れて、あえて曖昧に記載してうやむやにしようとされる方もいらっしゃりますが、正しいことを伝えることと動揺に、客観的に考え方を伝えた上で議論することも大切だということを覚えておいてください。
最後に
今回は、コンサルティングファームの資料の特徴とテクニックについて、いくつかご紹介いたしました。勿論ここで紹介したものは、一部でしかなく、実際のコンサルタントはより多くの技術を日々磨きこんでいます。またこれらのスキルは、単に知識として学ぶだけではなかなか習得できず、実際に日々の数十枚のスライドを書いていく中で身についていくものでもあります。そういう実践の場が数多くあるということも、コンサルティングファームで働く魅力の一つといえると思います。