戦略コンサルティングファームの中途採用面接の場面で、他の候補先を伺った際に、よく出てくる先としてPEファンド(プライベート・エクイティ・ファンド)がございます。理由を伺うと、口をそろえて「いずれも企業の経営に関わる仕事だから」という回答がほとんどです。
たしかに、コンサルティングファームも、PEファンドも経営に関わるという点では同じなのですが、仕事の中身や求められるスキルに関しては異なる部分も多くあります。
そこで今回は、この2つの業種について、どのような違いがあり、どのような方にとってお勧めなのかを紹介していきたいと思います。
コンサルファームとPEファンドの仕事の違いは何か?
コンサルファームとPEファンドの最も大きな違いはそのビジネスモデルにあります。
● コンサルファーム:クライアントが抱える特定の課題に対して、プロジェクト単位で解決策を提示、実行の支援を実施する。その対価として、クライアントから一定のフィーを獲得する。
● PEファンド:自らソーシング(対象企業の選定)を行った上で、自社資本を投入した後、企業全体の価値向上の支援とモニタリングを実施する。投資した企業を他社に売却、もしくは株式公開などを通じて投資資金を回収することで利益を獲得する。
このビジネスモデルの違いにより、仕事の内容や、求められるスキルには以下のような違いが存在します。
● コンサルファーム
・プロジェクトごとにさまざまな業界、企業を経験できる
(短い場合は数週間のプロジェクトも存在)
・キャリアを積む中で、特定のテーマについて深い専門性を磨きやすい
(例:コスト削減プロジェクトのプロ、ブロックチェーンの専門家 など)
・短期的な成果だけでなく、中長期的な成長を目指す戦略の策定も実施できる
・PLの改善(売上拡大、コスト削減)を中心としたスキルが求められる
(戦略コンサルティングファームに求められるプロジェクトの多くはPFに関するテーマであるため)
● PEファンド
・特定の企業の経営支援を数年単位で深く経験できる
・フィナンシャルモデリングに加えて、税務、法務、人事など幅広いスキルを、外部の人材をフル活用しながら身につけられる
(コンサルティングファームも外部人材として活用する機会も存在)
・決められた期間での企業の株価向上に向けて、EBITDAの向上と企業マルチプルの引き上げを徹底する
・PLの改善に加えて、BS、CFにおける改善施策のスキルが求められる
こんな方はコンサルファームがお勧め
● 様々な業界、企業で働く中で、自分が本当にやりたい業界・仕事を見つけたい方
● 特定のビジネス分野のトピックを極るエキスパートを目指したい方
● 世の中の最先端のテーマに対して興味があり、自らがリードして立ち向かいたいと思う方
● 社会全体に対して大きなインパクトを創出したい方
こんな方はPEファンドがお勧め
● 特定の企業に深くコミットすることで、徹底的に成果創出に拘りたい方
● 法務や税務などの幅広いビジネススキルを、専門家をレバレッジしながら学びたい方
● 投資先のマネジメント~現場までの様々なポジションの方と深いリレーションを構築したい方
● ビジネス実行を通したリアルなインパクトにやりがいを感じる方
最後に
今回は、コンサルティングファームとPEファームの違いを元に、どちらが転職先として向いているのかというテーマについて記載いたしました。
今回紹介したように、いずれの職業も、「論理的な思考力」や、「高いコミュニケーション力」「優れたビジネスセンス」など共通的に求められる能力があるものの、仕事の中身や適正は異なります。
一方で、昨今は、コンサルティングファームにおいても「成果報酬型」のプロジェクトを導入することにより、PEファームに近い戦い方を目指すケースや、PEファンドにおいても、ポストコンサルティングファームの人材を増やす中で、ハンズオンをより強化する動きも進んでいます。
そのため、コンサルティングファームと、PEファンドの違いを理解した上で、それでも、いずれにも興味がある場合や判断が難しい場合は、両方の業界の「人」を面接を通じてみる中で、より自分とフィットする方々が働いている環境を選ぶことが良いかと思います。