書店のビジネスコーナーなどを見ていると、コンサルティングファームにおいても「最年少役員による○○」などというタイトルの本を目にすることがございます。
一方で、外資系のコンサルティングファームの役職として「パートナー」という名称も目にすることがあると思います。
今回は、外部からはなかなか分かりにくい、コンサルティングファーム内の役員制度について、ご紹介してみたいと思います。
コンサルファームの役員とは?
そもそも、外資系のコンサルティングファームは、パートナーシップという組織形態をベースに作られております。
パートナーシップとは、英米法によって定められた正式な組織形態であり、複数のメンバー(=パートナー)が金銭・役務などを出資して、事業を営む組織形態です。
主に、法律事務所や会計事務所や医者や建築士といったプロフェッショナルな職業(=人的資本が中心であり、外部の資金をそれほど必要としない職業)につく方々が利用する組織形態とも言えます。
外資系のコンサルティングファームにおいては、グローバル展開にあたり、各国の支社においては株式会社として登記している場合がありますが、基本は、このパートナーシップという組織体系に基づいているのです。
そのため、一般的に「役員」と呼ばれる方々はコンサルティングファームにおいては、「パートナー」を指していると思ってください。
通常の株式会社の役員とパートナーの意味合いは違う
但し、この「パートナー」という役職は一般の「役員」とは異なる部分もあります。
パートナーシップ制度においては、株主というものは存在しません。
そのため、コンサルティングファームから上がった全ての利益は「パートナー」同士で分け合うこととなります。
逆に、コンサルティングファームがかりに大きな損失を蒙った場合には、そのコストについても「パートナー」同士で分け合うことになります。
一方で、通常の株式会社の役員は、このような権利・責任はありません。
業績連動報酬の導入が徐々に進みつつあるといえますが、国内のCEOの報酬の6割近く(※)は固定報酬といわれています。また、企業の損失に対する責任も勿論存在しません。
「パートナー」のことを日本語では「共同経営者」「共同出資者」というような言い方でよびますが、まさに全ての責任を負って運営する一員になるというのが外資系コンサルティングファームの「パートナー」の特徴です。
コンサルファームのパートナー(役員)の役割とは
コンサルファームのパートナーの役員の一番大きな役割は「新規クライアントを獲得する」ということに尽きます。コンサルティングファームはビジネスモデルの特徴から、売上をいかに伸ばすかが、利益創出に直結します。(人件費が大半を占めるため、コスト削減の影響は一般的な事業会社と比べると限定的、かつ難しいからです)
そのため、利益責任を負うパートナーの主な役割は「プロジェクトの運営」というよりは、営業マンとして「プロジェクトを売ってくる」ということに重きが置かれるのです。
パートナーへの昇進が難しいという理由の一つは「プロジェクトの運営」に求められる能力と「プロジェクトを販売」することに求められる能力は全く異なる部分にもあるといえます。
但し、このようなパートナーの役割にも徐々に変化しているのも確かです。
というのも、コンサルティングファームは各社順調に成長しており、パートナーの数もグローバルで見ると数百人を超えるファームも複数存在しています。
このようにパートナーの数が拡大してくることで、これまでは全員が「営業マン」としての役割を強く求められてきておりましたが、全社の利益最適化の観点から、例えば「社員の教育」に特化したパートナー「特定のテーマ・知見」に特化したパートナーなどという風に役割分担が進んでいくという考え方もあるからです。
市場の変化がめまぐるしい今の時代において、世の中の流れを先読みして付加価値を提供するコンサルティングファームだからこそ、自らの組織体系も常に進化し続ける必要があるのです。
最後に
今回は、コンサルティングファームの役員について説明いたしました。
コンサルティングファームのパートナーは非常に狭き門ではありますが、遣り甲斐や対価も一際大きいです。これからコンサルティングファームへの転職を考えていらっしゃる皆様も、是非入社をゴールにするのではなく、パートナーとして活躍することをゴールに設定されるくらいの意気込みを持って挑戦いただければと思います。
さて、これまで数十回にわたり執筆させて頂いた私のコラムは今回で終了することになりました。
次回からは現役戦略コンサルタントのA氏にバトンを渡すことになります。
A氏は大学卒業後、人事系スタートアップからキャリアをスタートし、現在は外資系のトップ戦略コンサルティングファームにおいてコンサルタントとして活動すると共に、ファームの経営にも携わっている方です。引き続き「戦略コンサルティングの最前線」を皆さまにお伝えしていきますのでよろしくお願い致します。
私がコンサルティング業界に転職した際に「知りたかったけれども、なかなか見つけられなかった情報」を少しでもお届けし、皆さんの転職活動にお役に立てればという思いで毎回記事を書かせて頂きました。
自分自身の経験でもそうですが、コンサルティング業界への転職には、様々な不安が付きまとうと思います。
・コンサルタントとして本当に活躍できるのか?
・今までのキャリアを捨ててまで挑戦する価値があるのだろうか?
・コンサルティングファームの激務に耐えることができるのか?
ただ、そうした悩みを持たれたのであれば、まずは人材紹介会社に相談することをお勧めします。自分1人で悩むのではなく、実際に話をしてみた上で、最終的に判断をしてみることが、あなたのキャリアにとって、より良い選択になることだと思います。
これまでご愛読いただき、ありがとうございました。