はじめに
今回は「フレームワーク」について、お話を出来ればと考えております。コンサルティング業界では、フレームワークを整理の枠組みや構造といったニュアンスで捉えて使用しています。
例えば、有名なフレームワークとして、
「3C(市場:Customer、競合:Competitor、自社:Company)」
「4P(商品:Product、価格:Price、販路:Place、販促:Promotion)」
といったように、皆さんも一度は聞いたことや使用されたことがあるのではないでしょうか。
「なぜ戦略コンサルタントはフレームワークを好んで使用しているのか?」という、その行動原理を理解することで、また一歩コンサルティングの"現実"をイメージしやすくなるのではないでしょうか。
時間当たりの価値を高めるコミュニケーションツール
戦略コンサルタントがフレームワークを好んで使用する理由として最もはじめに挙げられるのが「コミュニケーション上のスタート地点、土台としての共通認識を持つため」です。
クライアントとのコミュニケーション場面では「なぜ、今これを討議する必要があるのか」「今は何の討議をしているのか」と思われるのは極力回避したいシチュエーションです。
普段の業務でも、「何を伝えたいのだろう?」「なんで今、その話題を出すのだろう?」といったことを感じる瞬間があるかと思いますが、高い報酬を貰う戦略コンサルタントにとって、クライアントとの接点でそのような疑問を持たれるのは致命的です。
そのような疑問を持たれたままプロジェクトを進める場合、プロジェクトが失敗する傾向が強くなります。
もう少し丁寧に解きほぐすと、クライアント自身が付加価値を創出する時間を最大化するための貢献は戦略コンサルタントの重要な価値の一つです。
クライアントとの接点での無為な時間が減少すればする程、クライアント自身はプロジェクトの付加価値向上の為に投資可能な時間が増加し、プロジェクトの成功価値は高まります。また、クライアント自身は、並行して抱える他業務へ使用する時間を増加させることが可能になり、クライアント企業内でのクライアント自身の評価は高まることが多いです。
そして、将来、新たなプロジェクトを依頼してくることもあります。たかがフレームワーク、されどフレームワークですね。
ユニバースを担保するチェックツール
2つ目は「レビュー品質の担保」という目的です。
コンサルティング社内での打ち合わせ場面で「なぜ、この項目を検討対象から外したのか」「この観点での検証が足りないのではないか」といった様にレビュー品質の担保を目的にフレームワークを好んで使用します。
例えば、新規事業を検討するケースで、上述の3C(市場:Customer、競合:Competitor、自社:Company)を念頭に、「市場に一定のニーズがあり、自社に提供能力があるのは分かったが、競合は同じようなことを始めていないのか?、仮に競合がいた場合、どのように勝つのか?」といった使い方をしています。
実際、クライアントは意思決定に際して、戦略コンサルタントのアウトプットを判断材料の1つとして利用することが多いです。もし、アウトプットで重要な論点を見落としていた場合、クライアントはその大事な意思決定を間違えてしまうこともあります。
インサイトを導出する付加価値創出ツール
3つ目は「新たな考えや着想、ブレイクスルーの創出」という目的です。
上述の2つの目的では、ほぼ既存フレームワークを使用していますが、本目的では新たなフレームワークの創出から始めることが多いです。
新たなフレームワークを創出する際には、クライアントの取り巻く状況に対して、新たな全体像(世界観)を定義し、定義した全体像(世界観)をどう見ると、クライアント企業の成長に繋がるのかを目的に考えます。
例えば、ガム事業の売上高向上を検討するケースを考えてみましょう。
競合をお菓子メーカーと捉えて「競合商品からどうシェアを奪うのか」を考える世界観から、「使用者の口の使用時間のシェアをどのように増加させていくか」という世界観に捉え直すことができます。
すると、競合はお菓子メーカーにとどまらず、口を使うすべての消費者の行動になります。
結果、他飲食、たばこ、等々に拡大して幅広い視点で戦略や新商品開発が進められます。
実際に、新たなフレームワークを創出した結果、未着手の領域の発見や新たなインサイトの導出へ繋がる事が多いです。
最後に
今回は、「フレームワーク」というテーマを通じて、戦略コンサルタントが"現実"の仕事の中で、どのような考えや想いを持ちながら活用しているのかのイメージが湧いてきたのではないでしょうか。
コンサルティング会社や戦略コンサルタントによって、クライアントへの価値提供の出し方(="流派")には違いがあります。
例えば、紹介した3つ目は、"世界観再定義派" と"観点分割派"が得意とする戦略コンサルタントが良く使用しています。このような価値提供の様々なパターンを身につけることを目的に、同業内で転職をする戦略コンサルタントもいます。皆さんも、そのようなコンサルティング業界に興味を持たれたのであれば、是非挑戦してみる価値はあるかと思います。