はじめに
コンサルティング業界への転職意向を周りの人へ伝えると「コンサル業界なんて虚業だから、行くのはやめとけ」といったように、親切心(?)からのコメントを受けるケースを見かけます。
最近では、当業界の社会的な立ち位置や役割に対する認知が進み、そのような反応は減ってきているとは聞いてはいますが、コンサルティング業界以外への転職を伝えた時の反応と比較すると、まだまだ多い印象です。
私自身も自社の中途採用において責任ある立場で関わる中、志のある若者たちが周りからのコメントを受けて、内定辞退を意思決定される場面に何度か立ち会ってきました。
それらのコメントは的確な場合もあれば、そうとも言い切れない事もあり、転職される方自身の周りからのコメントに対する「良し悪しの見極めスキル」の有無が、人生を左右するとも言えるでしょう。
「コンサルなんてやめとけ」といったニュアンスでのコメントを受けた際に、その背景にある意図を、しっかりと見極める事が出来るのかは、コンサルティング業界を目指される場合の重要なスキルの1つとなります。
なぜなら、コンサルティングの実務においても、ミーティングやヒアリング時も相手のコメントの良し悪しを的確に見極める事が求められるからです。
その見極め精度が甘い場合、無駄な作業を行う、無駄に振り回されて精神的に疲れるといったクライアントへの価値提供の機会を減ずる事になります。
本日は、前述の様な考えの下で「コンサルなんてやめとけ」と言われた場面における、良いコメント、一考に値するコメントの見極め方を通じて、コンサルティングで求められる"現実"のスキルや思考方法の一端を伝えられればと思います。
コメントをする人の立ち位置の見極め
1つ目は、その人がコメントをどのような立ち位置で発言しているかの見極めが重要です。
言い換えると「なぜ、どのような目的で、どこへ誘導したいと考えて、その人はコメントをしているのか?」を常に考え、相手の発言に解釈を加える思考を行う事とも言えます。
私達は誰もが、社会や会社、そして所属する部や課の中での関係に基づき生きています。
「本心ではなくても、立場上は言わないといけなかったんだ」
といったセリフは小説やドラマでも聞く事があるかと思いますが、現実の場面でも同様です。
見極めの観点としては、
「相手の組織(社会、会社、部、課、等)での立ち位置」
「自分との利害の有無(上司、同僚、友人、等)」
「発言の目的/おとしどころ(自分のため、相手自身のため、組織のため、等)」
といった点が主なポイントとして挙げられます。
ただし、まれに、本当に無邪気に意図なく思いついたまま発言する人がいます。
周りの方であれば、ある程度、その方のキャラクターはわかっていると思いますので、大丈夫だとは思いますが、注意が必要です。
たとえば、「相手の組織での立ち位置」を見極める上では、「発言に対するストレートな表現の度合い」から、その人の社内での立場を推測しています。何かコメントをする際、多くの前提条件やエクスキューズを入れてから発言される方は、その組織内での力の弱さを示していると推測されます。
裏を返すと、立場が上の人ほど、言いたい事をスパッと表現する事が多い印象を持っています。また、発言の最後に「ということで、良いですよねAさん」という形で、気にしている相手を巻き込む語尾をつける方もおり、そのような様子から自然と相手の立場が透けて見えてくると感じています。
コメント内容の良し悪しの見極め
2つ目は、その人のコメントの内容自体への見極めが重要となります。見極めの観点としては、
「根拠のあるコメントか否か」
「根拠が汎用性を持つか」
「未来の可能性に対するコメントか否か」
といった点が主なポイントとして挙げられます。
ここで気を付けないといけないのが、その多くのコメントのほとんどは、その人自身の過去の経験に基づく帰納的なコメントであるという点です。
そして、その人自身は帰納的なコメントをしているという点に無自覚な場合がほとんどです。「私は過去にこのような経験をした」「過去にこのような話を聞いた事がある(基本、1つか2つの事例)」だから、「これはこう言えるだろう」「君もこうなるだろう」といった、1つの出来事が世の中のすべてを言い表せるかのような帰納的なコメントには要注意です。
最後に
今回は、コンサルティング業界への転職を考えた際の周りからのコメントに対する対応というテーマを通じて、コンサルタントが"現実"の仕事の中で、どのような思考方法を経て、相手のコメントを頭の中で処理をしているかのイメージが湧いてきたのではないでしょうか。
皆さんも、そのようなコンサルティング業界に興味を持たれたのであれば、是非挑戦をしてみてください。