はじめに
採用面接の最後に必ず時間として設けているQ&Aにおいて「コンサルティング業界で働いていると、どんなスキルが身につくのか?」と聞かれることが結構なケースであります。内心では、
「なぜその質問をするのだろう」
「事前に調べればわかる質問をすることで、どのような印象を持たれると思っているのだろう」
「けど、想定を超えるような質問意図があるのかな」
というような思考を経て「良い質問だね」と枕詞をおきつつ丁寧に回答をしています。
実際「どのようなスキルが身につくのか」は、戦略コンサルティング業界を志望される成長志向の高い皆さんにとっても気になるのではないでしょうか。
その中で今回は、ロジカルシンキング、資料作成(ドキュメンテーション)、プレゼンテーション等々、色々と戦略コンサルタントが身につけているスキルのうち「質問するスキル」を取り上げて、お伝えしたいと思います。
成果物作成の際には、市場規模や自社収益規模といった定量情報に加え、商品・サービスの概観や業界の人のみが知る"本当のところ"といった定性情報が必要です。ここで上手く定性情報を収集出来るか否かが成果物の良し悪しに影響します。
また、プロジェクトの当初にクライアントの抱えるイシューを理解していく場面でも「質問するスキル」は欠かせないものです。地味ですが「質問するスキル」は基本にして重要なスキルに位置付けられるということも出来るのではないでしょうか。
コンサルティングプロジェクトにおける「質問するスキル」の意味合い
「質問するスキル」を理解していく上の前提として、"現実"のコンサルティングプロジェクトの中で、質問をどのように位置付けて、どのような使い方をしているのかをお伝えします。
コンサルティングプロジェクトは、クライアントにイシュー(プロジェクトを通じて何を解くのか?)と、スコープ/ワークプラン(イシューを解く上で検討する範囲と進め方)を買ってもらうのがスタートです。
スタート後はイシューを解く上で必要な検討を行い、コミュニケーションを通じてクライアントへ価値を提供していきます。
ワークプランは、イシューを縦軸に設定し、横軸に各イシューを解く上で必要とする時間軸とクライアントとの会議をマイルストーンとして設定します。
そして、各クライアントとの会議に"間に合わせる"ように、デスクトップ調査やインタビューを通じた情報収集、分析、資料作成、社内での討議の場といったタスクを設定します。
蛇足ですが、この"間に合わせる"という行動様式がハードワークの源泉であるものの、短期間での成果物を約束する戦略コンサルタントの価値かもしれません。
その後、各クライアントとの会議で達成すべきゴールに基づいた会議のアジェンダを設定します。
原則、このアジェンダはワークプランの縦軸に設定したイシューに紐付き
・「合意取得」
・「情報共有」
・「不明点確認」
・「アイデア発散」
のどれかに位置付けていきます。
いよいよ本題に近くなりましたが、これら4つの位置付けの達成に向けて、討議や資料説明、質問を実施することになります。
つまり「質問するスキル」も前述の4つの位置付けの内、いずれかを達成するスキルと実務上は整理をしています。
この構造を理解すると、「質問する」=「わからないところや疑わしい点について問いただすこと」のみではなく、
「合意取得を目的とした質問」(例:XXXは、XXXとして進めて宜しいですね?)
「情報共有を目的とした質問」(例:XXXは、XXXという考えもありますが、どう思いますか?)
「不明点の確認を目的とした質問」(例:XXXは、XXXという理解で宜しいでしょうか?)
「アイデア発散を目的とした質問」(例:XXXは、XXXという意味とも捉えられないでしょうか?)
と、辞書にある載る定義と異なるものの、"現実"場面でのコミュニケーション目的や社内育成、限られた時間を有効に使うといった諸々の観点で、あえて4つの位置付けへ捉え直して使用をしています。
その根底には、合目的的に"意図を持って"質問の意味合いを使い分け、1分1秒を無駄にせずに、高い価値をクライアントへ提供していくという、プロフェッショナルとしての姿勢が存在しているのではないかと、理解をしています。
最後に
「質問する」=「わからないところや疑わしい点について問いただすこと」といった捉え方のみでいると、冒頭の事例でも、触れましたが「事前に調べればわかる質問をすることで、どのような印象を持たれると思っているのだろう」といったような印象を持たれ、戦略コンサルタントからの良い印象を得にくくなる可能性もあります。
例えば、「私は貴社が採用すべき優秀な人材だと思いますが、そうですよね?」といった合意取得を企図し、印象付ける質問をしてくると、面接官も実施する私の立場としては、とても好ましく思うことがあります。
つまり、皆さんもお分かりのように、状況を見極めた"意図を持った"質問を通じて、戦略コンサルタントから良い印象を得ることも逆言えば可能になります。皆さんも、コンサルティング業界に挑戦をされる際には、意識をしてみてはいかがでしょうか。