はじめに
2019年に読んだ本を、改めてAmazonの発注記録に基づいて数えてみると78冊でした(定期購読している業界の専門誌を除く)。
1週間に1~2冊程度を読んでいる計算になりますが、例年に比べると少ない印象を持ちます。以前と比較して、大抵の著名な本は読み切ったという点と、各プロジェクトにおける関わり方の変化があったという点が、少なくなった原因かもしれません。
蛇足となりますが、コンサルタントの現実を知るという意味では、各プロジェクトにおける関わり方の変化という点を少し補足してお伝えできればと思います。コンサルタントは、年齢を重ねていく、又は役職が上がるにつれ、クライアントから買ってもらう為に、好むと好まざるとに関わらず分かり易い専門性を身につけていくことが求められます。
本来的にはイシューを解くことが仕事であることから、解く技法自体が専門性と言えます。
しかし、業界知見(自動車、製薬、等)、ファンクション知見(財務、SCM、等)、オファリング(コスト削減、事業再生、等)といった、クライアントへ説明のし易いものを"専門性"と称した方が、クライアントから受け入れられ易くなります。
現在、多くのコンサルタントが世の中にあふれています。その中でクライアントは、なぜそのコンサルタントを選んだのか?を、社内で起用の説明する為の通りの良い理由を求めています。
その結果が、"専門性"を持ったコンサルタントが増えてきている理由でもあります。
一方で産業としても成熟し始めたコンサルティング業界もその動きにテイクチャンスしているとも言えます。各ファームでは成熟産業に適した組織体制を目指す為、ワークライフバランスを通じた昇格スピードのコントロールや、専門性に基づく組織の細分化による役職創りを進めています。
後者の役職創りとクライアントが社内で求められる説明責任という意図がマッチして、"専門性"を持ったコンサルタントが生まれている気がしてなりません。(対比概念は、特定分野でしか戦えない"専門バカ"ではない、"解く"ことを専門とするコンサルタント。経営者が求めるタイプのコンサルタント)
個人的な意見ではありますが、"専門性"を持ったコンサルタントの戦い方は、どうしても知見ベースと気の利いたフレームワークに基づく整理屋さんとしての戦い方へと収束していきます。
純粋にイシューを解く能力に根差した戦い方とはなりません。その戦い方にクライアントへ請求するフィーに見合う価値が存在するかは疑問であります。
また、知見は陳腐化し、整理屋さんとしての能力は体力のある若手の方が優れている場面も多いことから、その行為は1人のコンサルタントとしての寿命を縮めています。
印象に残った本:5選
さて、だいぶ脱線をしてしまいましたが、2019年に読んだ本の中からのおすすめ本を紹介していきたいと思います。
コンサルタント初心者が読むべき基本的な本という切り口での紹介ではないので、その点はご理解を頂ければと思います。
50(フィフティ)いまの経済をつくったモノ(著:ティム・ハーフォード)
・・・少しの変化が、どう世界へ影響を与えるのかを考えさせてくれます。つまり、事業戦略や新規事業を考える上で、物事を考える観点を色々と気付かせてくれます。1つ1つの発明に対するTipsを知ることも面白いのですが、影響を与える観点という視点で読むと、更に示唆深いと思います。
[出版社]日本経済新聞出版社
[発売日]2018年 9月20日
[詳細]https://www.nikkeibook.com/item-detail/17644
FACTFULNESS(ファクトフルネス) 10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣(著:ハンス・ロスリング)
・・・思い込みや色眼鏡を外して、ファクトベースで物事を考える大切さを考えさせてくれます。仮説思考も強くなりすぎると、ただの妄想になります。現実感を持った仮説思考を続ける上での、ある意味、戒めとしても非常に役に立つ1冊となります。
[出版社]日経BP
[発売日]2019年 1月11日
[詳細]https://shop.nikkeibp.co.jp/front/commodity/0000/P89600/
Think CIVILITY(シンク シビリティ)「礼儀正しさ」こそ最強の生存戦略である(著:クリスティーン・ポラス)
・・・礼儀正しくしていて悪いことはありません。クライアントはコンサルタントを選ぶ際も、そのコンサルタントの振る舞いをよく見ています。コンサルタントとして成功するには何度も読んだ方が良い1冊ではないでしょうか。また、転職する人にも、非常にお勧めです。
[出版社]東洋経済新報社
[発売日]2019年 6月28日
[詳細]https://str.toyokeizai.net/books/9784492046494/
組織の未来はエンゲージメントで決まる(著:新居佳英)
・・・マネジメントや組織作りの上で、"ドキッ"とする問いが多く、ある意味、心臓に悪い本でもあります。1つ1つの質問は非常に実務的で、例えば転職先を見極める際にも役に立つのではないでしょうか。尚、内容は粗削りな為、エッセンスのみを理解すると良い1冊かと思います。
[出版社]英治出版
[発売日]2018年 11月7日
[詳細]http://eijipress.ocnk.net/product/600
ニューカルマ(著:新庄 耕)
・・・これは趣味で読んでいる本です。コンサルティングの上で、論理のみならず情緒面も想像していく必要があるのですが、その情緒に対するダイナミズムや人の心のうつろいを、改めて学べる1冊ではないでしょうか。尚、同著者の「狭小邸宅」も、"名言"が多く、お勧めです。
[出版社]集英社
[発売日]2019年 1月18日
[詳細]https://books.shueisha.co.jp/items/contents.html?isbn=978-4-08-745831-2
最後に
冒頭、少し脱線をしましたが今回は5冊を取り上げて紹介しました。
本はライフステージやその時の問題意識により面白く感じる点も異なるかと思います。
皆さんも、今後、色々なチャレンジがあるかと思いますが、もし転職を考えているのであれば今回の5冊は全部お勧めです。きっと、より良いキャリアを掴むヒントがあるかと思います。