はじめに
戦略コンサルタントの日常に、あえて表と裏を設定するとしたら、裏は日々の議論・調査、分析、纏めといった地味ですが、エキサイティングで胃の痛むインターナルワークとなり、表の代名詞はクライアントへの華々しいプレゼンテーションと言えるのではないでしょうか。
クライアントのオフィスへ到着すると、普段と異なる階へ案内され(企業により、その階にも受付が存在)、役員会議室へ通されます。あらかじめ準備されているプロジェクターへパソコンを繋ぎ、ずらりと並ぶ役員の方々の前で、体にフィットしたスーツを着こなした戦略コンサルタントがプレゼンを開始。「本日お伝えしたい点は3つありまして・・・」と、非常に上手なプレゼンが続いていく・・・、という皆さんもお持ちの典型的なイメージです。
実際、プロジェクター投影でのプレゼン機会は少なく、印刷資料を用いて「では、お手元の配布資料から確認をさせて下さい・・・」と、進める場の方が多い感覚ではありますが。そのような中、皆さんの期待を裏切りますが、私はプレゼンが苦手な方です。気質としては人前で話をするよりも、新しいことを知り、つなぎ合わせて、概念として何か創造していく、この一連のサイクルが好きなタイプのコンサルタントです。
しかし、苦手だからといってプレゼンを避けるわけにはいきません。そして、意外とクライアントからのプレゼンへの評判は悪くありません。それは、苦手なりにコンサルティング業界に存在する本当にプレゼンが上手い人に教えてもらった、或いは盗んできた上手くなる方法の実践結果と言えるでしょう。
本日は、プレゼンの苦手な自分でもそれなりのレベルに到達できる、プレゼンの上手くなる方法の一端をお伝えできればと思います。
プレゼンは準備に始まり準備に終わる
プレゼン準備の段階でのポイントは「メッセージのクリスタライズ」と「ロールプレイ(練習)」に尽きるかと思います。要は、相手に理解してもらいたいことを、どのような順番・用語で伝えていけば、受け入れてもらえるのかを徹底的に突き詰める、ということになります。
メッセージのクリスタライズは、プレゼン目的と相手の現時点での理解度、そして興味度を勘案して、キーメッセージを含む資料を作り込む作業を指します。作り込む上で、皆さんも耳にされたこともあるかと思いますが、why×5回をいった思考法は有効ではあります。しかし、それだけでは十分ではありません。
加えて、重要なポイントは、正しいことを伝えるのみならず、それが相手に受け入れてもらえるかを見極めたメッセージ設定の有無となります。その為、正しさを突き詰めると共に、プレゼンの場では、どのレベルまでの正しさなら受け入れられるか、も考えておくことが重要です。相手の理解度によっては、プレゼンの場を2回に設定することも行います。
また、ロールプレイ(練習)となりますが、これは一人で壁に向かい実施するよりは、同僚または上長の時間をもらい、実施することが多いです。実際、プレゼン練習のために時間を確保してもらう事は難しいです。そのため、資料レビューや相談という名目で時間を確保し、こちらとしては本番を意識した説明をしていくこととなります。ロールプレイを通じて、メッセージとしてのつながりの悪さやロジックの飛躍、分かりにくい表現といった部分が抽出することができます。
圧倒的な場数と振り返り
そして、プレゼン練習の段階を経ての本番となります。本番では、思いもよらない指摘や質問、アクシデントが起きますが、そのような状況での場数を重ね、毎回、プレゼン後に振り返ることが重要なポイントとなります。
蛇足ですが、例えば、プレゼン途中で、引退したはずの創業社長がアポイントもなくふらっと会議室に入り「わしは、こうすべきだと思う」と、急に話の流れも関係なく発言しだす、あるいはこれはコンサルあるあるなのですが、上長やメンバーがクライアントとケンカをしだす、といった経験があります。皆さんならどのように対処をされるでしょうか。
最後に
今回はプレゼンの上手くなる方法の一端を伝えさせて頂きました。これまで、私も多くのプレゼン研修を受けてきましたが、本当に上手くなったと感じるタイミングは研修ではありませんでした。自身が責任を持ちプレゼンに対して何度も同僚と練習し、メッセージをクリスタライズする。そして、本番の想定外のアクシデントを含めて対応し、次につなげる振り返りを行う、といった一連のサイクルが終わった時に上手くなったな、と感じてきました。
言い換えると、若いうちからそのような機会を獲得し、成長を一緒に楽しむ同僚に囲まれて仕事をすることが、もしかして最も重要なポイントなのかもしれません。皆さんも、そのようなコンサルティング業界に興味を持たれたのであれば、是非挑戦してみる価値はあるかと思います。